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「すっげ。パソコンしかない」

「コンピューター室ですからwwていうか鈴言葉遣い気をつけろって何度言わせんの?」

「まだ1回目だよ」

さてやって来ましたコンピューター室。司会はやっと入れた事に喜びを感じ、ちょっとテンションの高いわたくし、高尾鈴がお送りします。アシスタントは私の兄の高尾和成でお送りしまーす。アシスタントはさすがに冗談だけど。

あの後化け物に一切会うことなく最初の教室に入ってきたわけだが、来ましたよコンピューター室!もうパソコンしかありません。しかもちょっと古そうで、なんか全体的に大きい。部屋の奥にはコピー機が三台。…もしかしてこれだけあるパソコンから送られたデータをコピーにあの三台が活躍するんでしょうか。いや少ないでしょ無理だって!
しかしまあ…よくもこんなに集めたもんだ。

「一台、落ちているのだよ…」

ばらばらと部屋の中を調べているとそんな声が聞こえた。他の人が集まっていくから私もそちらへ向かう。見えたのは一台だけ落ちているパソコン。一部壊れて中の小さな部品、もしくは外装部分が割れ、辺りに散らばっていた。
これが置いてあっただろう机を見るととても不自然な感じがした。これがあったであろうスペースには何もない。ギリギリだったとか、隣が押していただとか、そういうのはなかった。ただ落ちた。それだけ。
落ち、た…。

何十分前の記憶を遡っていく。ガシャン、だか、ダンっ、だかよく分からないあと音。もしかしてあの時の音の正体って…。
しかしそうだという確証がない。確かに落としたらそんな音もしそうな大きさであり硬さだけど、下手にそれを言って何言われるか。何も言わなくても後で何か言われそうだけど。
あの時は黒子がふざけて皆誰一人として怯えてるような顔しなかった。だからあの後の事も、海常を真っ直ぐに助けに行けたようなもんだしね。どうしようもう懐かしい感じがする。あれまだそんなに時間経ってないよね…?

「最初から落ちてたんすかね」

「にしては他の物と見比べると何か不自然さがある」

「他のは薄いような…けどこれだけ濃い気がするんだが」

「あー…ゲームでいう調べポイントっすね。鈴!」

「っ、え、なに」

急に大きな声出すな考え込んでた私はすごくビビったわ。心臓止まるかと思った…。一度深呼吸して改めてパソコンを見る。なんで私呼ばれたんだろ。会話全く聞いてなかったし。

「これだけなんか色おかしいと思わね?」

「色?……あ、ホントだ。浮き出てる感じがする」

何このポイント今までにないぞ。ちょっとおもしろい。浮き出てる、に納得していく先輩さんたち。ゲームによくあるこれだけ立体感があるっていうか、これは何かあるぞっていう…何かあるんだな、これ。調べたくないけど調べなきゃストーリーは進まない…。

落ちているパソコンを動かそうとする和成と緑間。手伝ってと和成が言ったらどこか仕方ないといった感じで手伝いだす緑間。…仲良いのかね、あれ。
ゆっくりではあるが浮いていくパソコン。横になっていたパソコンだが、和成と緑間のおかげで無事立つことが出来ました。よく見ると落ちた衝撃でか一部へこんでる部分がある。
そして問題はこれね…。

「また紙があったな」

パソコンの下にまた例の紙を見つけた。でもなんとなく今までのと違う気がする。紙の色ってあんなに白かったっけ?赤司が紙全部持ってるからな…帰ったら比較は出来ない事もないけど。
和成も気付いてたらしくごく自然に「紙の色なんか違うっすねー」とか言ってた。どう違うって、例えるならノートが古びたような色。あれは結構な年月が…でもそこまで濃くないんだよね。例えるの難しいわ。

まあこれについては他の方に任せよう。正直に言うとこれ調べるのに飽きたんです私。それにずっとこれについて見ていくわけにもいかないし。調べポイントって分かりやすくあるなら他にもあるよね、多分。
そっと輪から離れて他を見て行こう。でも明らかなポイント探すより密かにあるポイントを探してみるのもおもしろそう。なんか少し賑わってきた気もするけど無視。案外机の下になんかあったりなかったりー…。とある鬼のゲームでは机の下あたりにあったよね。いや椅子の下?どっちも下だからいっか。

「なぁアンタ」

「…はい?」

割と近くで斜め上から呼ばれ探す作業を一時中断。まさか私が呼ばれてると思わないでしょう。でもよく考えたら私しかアンタ呼びってしないと思うんだ。高尾だし。ていうが返事が遅れた言い訳です。
顔だけ上げるとすっごく首が痛い。しゃがんで見上げてるってのが主な原因だけど。このままでは首が死んでしまいます。立とうと腰を上げ相手の要件を待つ。あ、もしかして何勝手に他見てんだしばくぞ!みたいなこと言われるんですかね。…確か宮地さんしばくぞとか言ってなかった?

こうして見てみると男のくせに綺麗な顔してやがる。なにそれずるい。染めてるみたいな、でも染めではでないであろう蜂蜜みたいな髪の色に先輩というには少し幼く見える顔。この顔から暴言を吐くのか…すごいギャップだ。と考えていくとバスケ部ってイケメンの集いだよね、本当に。あー和成も…多分イケメンの部類に入るんだろう。中学の時は女子がキャーキャー騒いでたし。
それでこの先輩さんは私に何の用でしょうか。なんて思っていた私に彼は爆弾を投下してきた。

「高尾よりすごい眼があるって聞いたんだけど本当か?」

「は、い?」

あ、私「はい?」しか言ってない。日本語喋らなきゃ。
いやいや待ってね、この人何言ってるんでしょうね。改めて確認だ。確かに眼を持ってる事は2人しか教えてないしそれを盗み聞きしその話を広げるのには些か時間がない。はずなのよ。宮地さんの場合何か聞いたような素振りもなかったわけだし。恐らく2人は口外していない。多分。希望込み。
あと眼の事を知ってるのは身内である彼一人だ。ここにはいない両親や妹にですら教えていない。つまりそういうことだろ。

ちょっと待ってね他にも突っ込みたいところあるんだけど。何話し盛ってんでしょうねあの人ったらやだわー。ちょっとごめんなさいね宮地さん、急用ができたわ。
ここまでコンマ一秒である。

「和成お前何変な事言ってんの殴るよ?」

「鈴それ宮地さん入ってるからちょっとタンマ右手ぎゃー!」

後になって気付いた。これ肯定してるようなもんじゃない、と。
苦虫を潰したような思いだったが、一先ずスッキリしたのでそれで良いとしよう。じんじんと傷む右手に新たな痛みがジワリと広がっていく。
今すぐ逃げたい思いだった。

20150331


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