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「はあ…」

こんにちは皆様。高尾和成の妹高尾鈴ちゃんです。現在今は陽泉さんと一緒に職員室に向かってる最中です。何故陽泉と探索に出ているか、それは数分前に言われた赤司の一言が原因さね。

遡ること数分前――。

「…また私も?」

「君はよく周りを見るとテツヤから聞いたよ、だから他が見てないようなところを見て来てくれたらいいんだ」

「意味が分からない」

「ただ一緒に見て回ってくれたらいい。頼んだよ」

「……」


なんでまた私がとか、休ませろって文句とか、よく考えりゃ一言じゃなかったこととか、てかなんで陽泉なんだとか、頼んだなんて軽々しく言うなだとか、…よく見てるに少しドキッとした事とか(きゅん的な意味ではなく)…。
まだ言いたいことあったけど何も言わせない圧力を浴びせられて、結局泣く泣く了承したわけですよ。赤司って時々横暴じゃないかと思うんです。見て回るだけに私まで行かなきゃならんとか…和成や伊月さんの方が絶対いいと思うんだけど。だってほら、素晴らしいお目々をお持ちじゃないですか。…ね?

ていうか陽泉、身長的な意味ですごく怖いんですけど!上から見下される視線だったり、わずかに含まれた疑心の目だったり、見下される視線だったり、見下される視線だったり…あ、大事なことなので3回言いました。でも僅かながらの良心がほらここに。

「なんだよ」

「あ、いえ、特に」

初めに職員室に向かう時は彼らとは離れてたし、身長とかよく見てなかったけどこうして集団で、しかも周りにいると皆さん馬鹿でかい。顔見る時はビルを見るみたいに見上げなくちゃいけないし、でかいことよって物理的な威圧感もあってこの集団怖い。まだあんまり話してないけど。怖い。化け物より怖い。

そこまで来てふとあの足音を思い出す。あのというのは黒子も火神も聞いたあの足音の事。3人で聞いちゃってるしもう気のせいでもなんでもない。一度止めて言うべきか?いやでも今いるとは限らないし。かと言って言わなくて何かいたとしたら。完全に私の責任じゃねえか!仮に言ったとして逆に怪しまれたり…でも言わなくたって結局今より怪しまれるんじゃないの!?どうする?言うべきか、言わないべきか?

俯いて云々考えているとちょんちょんと肩を優しく突かれる。完全に思考の方に意識をやってい私は驚いて勢いよく振り向く。すると横にはニコ、というぐらいに優しく微笑んでいる氷室さんが。…………嘘くさい。

「どうしたんだ?高尾さん。何か考え込んでいるみたいだったけど」

「…え、いやー…」

実はですね、さっきここの前通った時足音がしたんですよ。とかうっかりぽろっと言っちゃったりしないんですね私。今うっかりぽろっと言えたら楽だったのに!言うなら今がチャンスな気がする。この人がそれをどう取るかは分からないけど…言わないよりはまだマシじゃないか…?
…そういえばさっきの報告会でこの事言ってなくないか?うわやっちまったー!黒子と火神の馬鹿ー!忘れてた私も馬鹿ー!
ああどうする私。どうすんのよ!でもこのままだんまりって逆に怪しまれる。別に怪しみたきゃすればいいけど、私の視界に映らないところでやってくれよ。こっちは迷惑なんだよ!
こうなったらヤケだ。もう知らない。

「海常さん見つける前、職員室前通った時足音がしたんです。…こう、ぺちゃ?と」

「足音?」

「はい。黒子と火神も聞いてたみたいなので、気のせいではなかったと思います、よ」

段々小さくなっていく自分の声にもう一度馬鹿と言いたくなった。なんで小さくなっていくんだろう。…怖いんだろうか?何が?分からない。
嫌にうるさい心臓を無視して氷室さんを視界から外した。…外した先に紫原がこちらをじっと見下ろしていた。あろうことかその気怠げな目と視線がかち合う。

「いーじゃん。いたって」

「え?」

「化け物。捻り潰せばいいだけっしょー」

おま…そんな簡単に言ってくれるな…。言うだけ言って紫原はさもどうでもいいとばかりに視線が外される。近くにいたってのもあるけど、聞いてたんだ…。いや聞こえてた?まあこの際どっちでもいいわ、化け物捻り潰す発言に私どうしたらいいか分からないよ助けて和成助けろ。無理だろと突っ込むべきか、頼りにしてると言うべきか、それとも苦笑いで済ませるか。

「アツシはいつもああだから気にしないで」

「あ、はぁ…」

気にするなって言われると気にしちゃうんですが。
捻り潰すとか、できるもんならやっていただきたいわ。あれが平気ならな!…うん、彼なら大丈夫そうな気がしてきたわ。
一度喋っちゃったし、この事は他の人にも言った方がいいなと考え、前を歩く先輩さんたちに掛け足で近寄った。

(あれが彼なりのせめてもの気遣いなのだと私は気付かない)

「なるほど。用心に越したことはないと言う事じゃな」

「でもよ、なんでさっき言わなかったんだ?」

ご尤もです、金髪のにーちゃ…福井さん。今まですっかり忘れてたんです、と言うと苦笑いで返してくれました。福井さん身長も良心的なら笑顔も素敵ですね。顔はちょっと怖いけど。

「お前失礼なこと考えてね?」

「いえまさか」

人ってさ、なんで悪いこと考えてる時に限ってこうも鋭いんだろう。和成といい、福井さんといい。別に身長以下略が悪いことじゃないと思うんだよね。私的には、本当にこのくらいがちょうどいいっていうか。…あー、和成で慣れたか、そういうことか。ふむ…ということは福井さんも気にしてるタイプかな。ならばもうこのことについては触れないでおこう。いじりたいが、いじった瞬間即見捨てられるだろう未来が見えた。この考えはやめておこう。

「それじゃ開けるぞ」

実は着いてました職員室前。鍵は陽泉さんが持ってたのでそのままに。言い出しっぺの法則に従ってちゃんと岡村さんが持っていたみたいです。偉いぞ!
なんで鍵、と言いますと今回は職員室の後ろ側から入るみたいで、鍵が取り出されたのである。開けた時に化け物がいたらどうしよう、とかそんな不安も実はあったりして…。

「…何もいない、な」

「大丈夫だって、高尾さん」

いつの間にか視線は下を向いていて、前を見たときは岡村さんたちが職員室の中を覗いていたようで職員室に一歩入ってる。隣にいる氷室さんを見ると私を見ながら優しくも微笑んでいた。その笑みに先程見た嘘くささは見当たらない。

「よかったです…」

ほっと息を吐くと手がじんわりと痛み出した。あれ、と手を見ると爪が掌に食い込んだ跡があった。どうやら無意識に手に力を入れていた様だった。身構えてる、とも言う。いつから握ってたんだろうとか、爪そんな長かったっけって爪を確認したりいろいろ思うところはあるけど。

(…自分で思ってたより結構キテいるみたいだ)

20140205


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