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定位置になりつつある和成の横を陣取った私は左側に驚いていた。だってさ、だってよ?最初同様桜井だと思うじゃん?違うんだよ。桃井が隣にいるんだよ。いつの間に?
いや別に悪いとか嫌じゃないし、どうも思ってはいないんだけど…さっき爆弾発言してくれたこの子が隣来ちゃいます?変に緊張するー…。落ち着け私。
全員が座り、いつでも来いと言う時に毎度お馴染み赤司が口を開いた。分かった、彼は先輩さんがいようといつだってリーダー格なんだね。了解でーす。

「探索中トラブルがあったにも関わらず、無事戻ってきてくれてよかった。早速だが報告を頼む。まずは陽泉」

「ワシらか。ワシらは3階を調べようと上がって行ったんじゃが、なんとまだ上にづく階段があってな。先にそっちの方に行ってみたんじゃが、第1音楽室と書かれた教室しかなかった」

「それだけアル。音楽室と書かれていたから鍵を差し込んでみたが外れだったアル」

「仕方なく引き返して3階に戻って教室全部回ってみたけど、どこも何年の教室か分からなくてな。第2音楽室を見つけて鍵は持ってたから開けてそこを調べてきた」

「探索で見つけたのはピアノの隙間にあったこの一枚の紙と、金の鍵だよ。形は高尾さんが持ってるものと少し似ているかな?」

「…あ、本当だ」

向けられた視線から逃れるように自分が持ってる鍵を取り出すと、氷室さんが持ってる鍵と形が少し似ている。改めて見て思ったけど、この形どう見ても教室の鍵じゃないよね。だってここの教室の鍵、全部細長いし。

職員室で行われたどの教室があるか当てよう選手権。…今付けた。結局どこも外れで、唯一音楽室しか当たりがなかったっていうのにも驚いてるし、4階があったという事実にも驚きだよ。初めて体育館に入る前見上げた時、4階なんてありそうになかった。死角だったってこと?でもなんで同じ教室が二つもあるんだ?一つで十分じゃないの?

「ここ大きいから必要だったんだろ」

「あそっか。…今小学校っていうことを忘れてたよ。6学年あるんだもんね」

「大抵の小学校ならそうなるな」

「…ところで和成さん」

「なんですか鈴さん」

「私口に出てました?」

何も言ってないはずなのに、和成は分かってるかのように横で口出しするもんだから何の疑問も感じず喋ってたじゃないか。おかしいね、この短時間の間にデジャヴを感じる。
和成は軽く笑って「鈴の考えてる事なんて分かる」ってそこらの女の子ならキュンと来る一言。こんな時兄妹でよかったと心底思う。だって、ゲラ男を彼氏にしたくない。毎日賑やかで楽しそうではあるけど、その内うるさいって思いそう。ああこれ他人だったら前提の話。いやいや本当兄妹でよかった。

「…お前さり気なく酷いこと考えてね?」

「お兄様は分かってらっしゃるーってことを考えてた」

「おお。……ってどっちの意味か分からねえよ」

話を戻そう。ここで行われた会話はひそひそに近い小さな会話なので報告中の彼らに邪魔になることはない。よって!和成と喋ってる間にも報告会は進んでいたのである…。

「道中に化け物には?」

「そういえば遭っとらんのう」

「その方がいーじゃん。めんどうだし」

「ふむ。3階は安全なのか」

流れ的に3階は化け物が出なかったと言う話でもしてたんだろうか。まともに話を聞いたのは「3階は安全」辺りからです。最後じゃねーか!突っ込みありがとうございました。3階が安全とか羨ましすぎる。こちとら2回も化け物に追われたっていうのに。…いやごめん私らなんて海常さんに比べたら可愛いもんだよね。海常さんは…一度襲われてるっていう、のに。

「紙にはなんと?」

「読むね。

“まさか、それがあんなことになるなんて思わなかった。本当なんだ”

ここで終わってる。それと裏には…「K」と書いてあるよ」

淡々と読み上げた氷室さんは赤司に紙を渡している。あの紙全部赤司が回収でもしてるの?だったら後で赤司に紙を見せてもらってメモしておこうかな。
それにしても紙の内容文。何があったかは知らないけど、まるで事件みたいなことがあったような文だ。それにまた日記みたいな口調。
口調と言えば、これを書いた主は男の子なのか女の子なのか。筆跡を見れば多分分かることだろうけどなんとなく男の子っぽい。遊びに誘われたって何だろう。……考えたって何も分からないんだけどね!ただの“遊び”ということでもないだろうし。あーここが家でこれがゲームの話なら、和成と妹ちゃんとあれこれ考えを言ってるんだろうな。

「これで「K」は二枚目」

「同じ奴が書いてんの?」

「恐らくそうだろうな。筆跡がほぼ一緒だ」

「ふーん」

向こうで大きな目が特徴の葉山さんが赤司と喋ってるのを横目に、こっそり和成にあの紙を持ってるか聞いてみた。けど持っていなく、読み通り全部赤司が回収しているらしい。後で赤司のもとに行ってメモさせてもらうことが決まり…。次に誠凛さんが説明する番となった。もちろん海常の事も軽く入れて。
報告が大方終わったと同時に黒子が控えめに手を上げる。全員の視線が黒子に集まる。そのうちの一人に私も入っているわけだが、見たと同時に黒子と目が合った。えっなんでこっち見てんの。

「図書室を出る時見つけたものです。…高尾さん」

「ああっ、そうだった。これと黒子の持つ紙を図書室で拾ったんです」

言いながら取り出した茶色い本(仮)をよく見ると本(仮)ではなく手帳のようだった。そうだよね本に留め具なんてついてるわけがない。ぶっちゃけ、黒子に言われるまでこれの存在をすっかり忘れていました。それにしても触り心地は良い。
今なら中を開けたって怒られないと言うことで、留め具のボタン部分に手を掛けてみたがそれが動く気配はなく、何故かものすごく硬い。見かねた和成が貸してと言うから渡してみたが、和成でも無理そうだった。外すための糸が見つからないことと無理矢理開けようにもぴったりくっ付いていて微塵も動かないこと。

「っかってー…」

「手帳じゃないのかな…」

「ところで黒子。見つけたってどの辺りで?」

「入口真ん前の方です。出ようとしたら落ちてきたみたいです」

「落ちてきた?」

一同がどういうことだと考えを張り巡らせている間も、こっちは手帳を開けようと必死だった。が、すぐに諦めました。
これが一アイテムならすごく重要なんじゃないだろうか。あの紙と一緒に落ちてきたものだし、意味なく落ちるわけが…意味と言えばただ単に怖がらせるためだけかもしれないし。だったら成功かもしれない。だって私ちょっと怖かった!
話を変えるため、黒子が持ってきた紙の話になった。読みます、と黒子が紙に視線を落とす。

“最近、  くんと  くんがよくひそひそばなししています。
  ちゃんを見てたけど、ぼくはあまりよくないことが起こりそうな気がします”

「裏は…「T」ですね」

黒子に読んでもらって分かったのはその「T」って子は「ぼく」って使ってるから男の子だということ。それしか分からなかったです、はい。時々口籠るけど一体何が書かれているんだろう。とか思って黒子を見ていたら「名前らしき部分が塗り潰されているようで読みにくい」と言っていた。口籠っていたところはそれか。じゃあ今までのも誰かの名前だったのか。

人知れず内に溜まったものを吐き出すかのように息を吐いた。まだここにいて時間は浅いけど、先が見えなくて辛い。
ねぇこれってハッピーエンドに辿り着きますか?

20150125


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