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悲鳴を頼りに1階へ来たみたものの、悲鳴があったと思えないほど静かな廊下。ホラー映画あるあるならこの後誰かが脅かしに来たり…なんてふざけたこと誰もしませんよね。
階段付近には誰もいないし、誰かがいるような気配もしない。先程の声なんてなかったかのように静かで少し恐ろしく感じる。
逃げた時に、体育館に行っていればいいんだけど…。

「一年、お前たちは体育館に戻って海常が戻ってるか確認してきてくれ。俺らはこっちで探してみっから」

日向さんは廊下を見ながら言い、一年たちは言われた通り体育館に戻っていった。体育館に行ったのは降旗、河原、福田の3人だけで、私と黒子と…、火神は戻らなかった。
私と黒子はまあ置いといて。火神めっちゃビビってるんですけど。ビビってるの丸分かりなんですけど。顔はなんてことない顔してる(つもり)けどちょっと引き吊ってる。足なんて震えてるからね。相当…ビビってますねww
…ごほん。

「?黒子、火神、高尾。お前たちも戻れ」

「嫌です。それに黄瀬くんが、…いえ、海常の皆さんが心配です」

「お、おお俺もだ!…です!」

言いたいこと言われちゃったので私もです、と目で訴えた。この際火神の敬語と言っていいのか分からない敬語について後回しにしといて。
無言でいると、日向さんがついに折れ、好きにしろと半場投げやりに言った。やったね。

日向さんからのお許しも出たので好きにさせてもらおう。
階段から顔を覗かせ、右見て左見てもう一回右見てを繰り返したが、やはり誰もいない。隠れてるのかな?
すると木吉さんが何かに気付いたらしく、皆に声を掛けそちらを指差した。
見ると扉が少し開いている。…あそこは、放送室?

「行ってみるか」

「くれぐれも気をつけてくれ。俺も一応視てるから」

日向さんを先頭に伊月さんを除く二年生が前に、後ろの方に残った一年を。もう一つ後ろに伊月さんがいるが、なんで伊月さんは一番後ろにいるんだろう?割と目が動いていらっしゃるようですが、視力でもいいんでしょうか。それとも内心怖がりで最後尾?…すいません、冗談です。
にしては、動きが和成と似てる…。……まさか。

「ねえ、黒子。伊月さんて“目”持ってる?」

「…よく分かりましたね。持っていますよ。それがどうかしました?」

そういうことだったのかって納得しただけだよ。ふう、すっきり。
和成と同じものを持っている人がいるなんて初めて見たんだよ、これでも。何人も持ってたらある意味ヤバいけど。

「いや。よく見てる人だなって思ってたか…ら…」

職員室前を通った時、中からペタリ、って音がした気が…する。職員室側を歩いていた私だが、反対を歩いていた黒子と火神も聞こえたのか一瞬足が止まる。前にいる先輩さんたちは聞こえなかったのか、変わらず歩いている。私たちの後ろにいる伊月さんは、急に止まった私たちに釣られて止まった。

「どうしたんだ?」

「……いえ、なんでもありません」

伊月さんは前の先輩さんたちと違って近場にいたのに聞こえなかったのだろうか。何も聞いていないようにしても火神が…すごく怯えてるんですが。流石に今はやらないけど、後ろから声を掛けたら驚くんじゃないだろうか。…でもこの場合その気がなくとも声を掛けただけで驚きそうだ…暫く黙っていよう。

「…入るぞ」

放送室前に着いて、伊月さんが目で確認して何も異常がない…というか何も言わないし顔を顰めてるしで、大丈夫だと自己判断したらしい日向さんが、扉の取っ手には触れず、平たい面をを押す。
部屋から少し離れているのに、変な匂いがする…なにこれ?

「なん、だよ…これ…」

日向さんが扉を全開にし、中が露わになる。確かにこれは…と言えるものだった。
まず人一人くらい通れるであろう細い通路だが、壁一面殆どが血に似た赤黒いものだった。なにこれ新しい壁色か何かですか?だとしたらとても趣味が悪いんですね…。
見えるのはこの通路だけで、恐らくこの奥に放送室のがあるんだろう。暗くて中はよく見えない。

奥に進み、比較的広い部屋に出た。でもまだ狭い。なるほど、ここが放送室。机とマイク、他よく分からない装置?が置かれている以外何もおかしくない。強いておかしいかなって思う部分は何故電気が付いていないのかという事くらいで…付かなかったのか?

「海常…!」

放送室を一辺を見ていると木吉さんが海常を見つけたらしい、一目散にそちらに駆け寄ったのが見えた。木吉さんの他に数名海常さんの元に行く。ここに危険はないだろう、と私の中の女の勘を信じることにし、控えめに様子を見に行った。
そこで私は驚くべきものを目にする。

ここにいた海常さんは3人しかいなかった。(確か)小堀さん、早川さん、森山さんの3人。大きかったはずなのに何かに怯えるように小さく蹲っていたが、来たのが誠凛だと分かると安心したように顔を上げた。彼らの様子からして、あまりよくないことでも起こったのだろう。正直聞くのも心苦しいが、残りのいない海常のメンバーを含めた、海常さんたちの状況を知るため聞き出すことに。
…あ、話をしてるのは木吉さんや日向さん、伊月さんだよ?他にも小金井さんとか土田さん、とか。

私はひとまず黒子の傍にいた。ここにいない、彼の友人の安否が気になるであろう彼の心が少しでも落ち着くようにと。火神も傍にいる。その顔に先程怯えてた表情はない。まだちょーっと怖そうにしてるけど。
この場にいないのは、黄瀬、笠松さん、中村さんの3人。黄瀬は黒子の中学からの友人だとさっき知った。だからすごく心配なんじゃないかなって思って、だな…。あー階段で黒子に言われたこと思い出しちゃった。やっぱ離れる。

「放送室にも化け物が隠れていやがったのか…」

どうやらここで調べものしていたら、ちょうどこの辺りの机から化け物が飛び出てきたらしい。化け物から逃げるため、出口に皆走ったのだがこの3人は化け物に踏まれ、出損ねたらしい。残り3人がいないのはここから逃げれたため…。そして化け物も出て行ったらしい。
小堀さんたちがここにいたのは、踏まれた時の痛みがすごくて動けなかったかららしい。今はもう大分引いて、歩けるとのこと。よかったです。

「でもアイツ黄瀬を狙(ら)っていたようにも見えたっすよ…」

早川さんが説明する小堀さんの隣でぼそりと呟いた。…多分本人はぼそりと呟いただけだろうがほぼ丸聞こえである。それを聞いた森山さんも「確かにな、」と言った。
黄瀬を狙っていた、っていうのがすごく気になるがなんでまた。黄瀬のことよく知らないから、考えたってしょうがないんだけど。

踏まれたこと以外、特に何かされたようではないのでこの場は一度戻ろうということになった。戻る理由として、このまま連れて黄瀬たちを探すにも、足手まといになってしまうと。言い出したのは森山さんですからね!私じゃないよ!
小堀さんたちを体育館に連れていくのに木吉さん、小金井さん、水戸部さん、土田さん、火神が選ばれた。体格のいい3人と周りを見る為の2人。
私と黒子は…黒子は黄瀬の無事を確認するまで戻らないと意地を張り、私も黄瀬たちを探すと言えば了承してもらえた。正直これで通ると思ってなかったわ。いや嬉しいけど。

放送室前で彼らと別れ、この階にいるであろう黄瀬と笠松さんと中村さんを探しに、日向さん伊月さん黒子、それと私が参りますよっと。

現れた化け物は四つ這いで蛙みたいな動きをするらしい。四つ這いの化け物と言えば最初に追ってきた奴と似てる。けど聞けば飛び跳ねて動くらしいから違うものだろう。いやいやあれが飛び跳ねてくるとか嫌だよ気持ち悪い。見なくても分かる。今腕は鳥肌が立ってるであろう。
注意してくれ、と戻っていったメンバーの言葉もあり、なるべく慎重に黄瀬たちを探そう。

(さて、彼らがどこにいるかが問題ね)

20141108


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