18 図書室に来たのはいいものの、何を調べるか、どこを探すか困る。小学校という事もおり、思ってた程広くないことが救いか。広すぎると探したり調べたりするの大変じゃない?人数が人数だからそこまで大変ではないかも知れないが。 適当に入り口付近を調べることにした。この辺りは他の違って棚の高さが膝辺りまでしかない。よって必然的にしゃがまないといけないんだけど…。 「ちょっと辛いな…」 壁沿いにずらーっと並べられた低めの棚。目安はここだけでも調べることかな!ていうか何をどう調べたらいいんだろうか。そこが一番の難問ですね。 「あ、高尾さん」 棚一つ分調べ終わった頃。ふ、降旗?からお呼ばれした。しゃがんだまま、顔を上げたので自然と上を向かないといけないのだが……しまったこれ首が痛い奴だ。やっぱ立とう。 持っていた本を戻し、立とうとしたのだが先に降旗が隣にしゃがんで目線を合わせてくれた。やだこのイケメン…! 「どうしたの?」 「いや特にこれという用事はないんだけど…ここ、調べてるの?」 「ん、まあ…向こうは皆さんがやってるからね。降旗…は調べなくていいの?」 「オレは大体調べ終わったんだ。この辺手伝っていい?」 「構わないけど」 隣でまだ見てない本棚を漁る降旗。この人本当にイケメンだな…! 女の子ならキュンとするんじゃないだろうか。…そういえば私女だったわ忘れてたてへぺろ。 うん、だいぶテンションが昼間みたいに戻ってきた。和成とおふざけがしたいです先生。 「ところで降旗はどの辺調べてたの?」 「オレは向こうで河原と福田たちと一緒に図鑑を見てたんだ。見終わって二人は先輩たちの手伝いに行ったからオレは高尾さんのとこに…ってなんかごめん!」 「?うん、ありがとう」 今私が調べてる棚の奥が降旗たちが調べてた棚があったらしい。図鑑か。 今探しているところのほぼ無意味に等しいけど、他の人の同じところを調べた方がいいかな。 「この辺やめて、先輩さんたちの方に行こっか」 「あれ、いいの?」 「何も出ないと思うんだよね」 てことでその場を離れ、ここから正反対の位置に来た。言い方変えれば(入り口から)右から左へ。端から端へ。あまり距離もないし、広くもないように見えるけど案外奥行きがあった。 それとは正反対に入り口とは違う別の扉を見つけた。何の部屋かなって扉近くに行ってみるとコンピューター室と書かれていた。コンピューター室だと…。 もしかして図書室の手前にあった何の部屋か分からない教室ってコンピューター室だったりするのかな。位置的にもぴったりだ九割当たってる気がする。残りの一割は…あれだ、コンピューター室と見せかけて実は違うーみたいな。なにそれどこのドッキリ? 「高尾さん、何か見つけましたか?」 「黒子?いや特にないけど個人的に気になるところなら…」 「えっ!黒子!?驚かすなよ…」 「すみません。そんなつもりはありませんでした」 なんで隣にいるのに気付かないんだ降旗。そして何で気付かれないの黒子。なんなの?存在感薄いの?それとも新手のいじめかなんかですか?でも黒子っていじめとかそう言うのしなさそう。むしろ裏で止めそうで怖い。そう今のようにそっと…。 「コンピューター室、ですか」 「すごーく入りたい」 「…分かりました。主将に伝えてきます」 「お、おう」 ごめん主将って誰。降旗に聞いたら日向先輩だよと教えてくれた。ふむ、なるほど。確かに威厳あるわ。如何にも主将!って感じだよね。かっこいー。 と言ったら降旗が照れた。なんでお前が照れる。 「言ったら着いてきました」 「何その着いてきちゃダメみたいな言い方」 「そうは言ってません」 「後輩を危ない目に遭わすわけにいかねーからな」 「やだこの人超かっけぇ」 思わず出てしまった言葉に慌てて謝ろうとしたら先に小突かれました。いた…くはないけど何するのって感じで見上げたらそっぽ向かれた。ついでに「ダァホ」って言われた。…もうよく分からないことだらけだからリコさんにチクることにした。 コンピューター室の前に日向さんが行き、何故か慎重にゆっくりとドアノブに手を掛けた。わくわく、わくわく。 しかし一向に扉は開かない。なぜ? 「開かねぇな…」 「鍵がありませんからね」 「次来る時鍵を持って来るよう言わないとだな」 なんだ、残念。私が行ってた小学校には、コンピューター室なんてなかったからすごく見たかった。運が良ければ勝手に開いてたりしたら良かったのにな、なんて。 日向さんが回れ右をして元いた場所に戻ろうとした時、奥で何かが落ちる凄い音がした。ガシャン、だかダンっ、だかよく分からないけどすごく重たくて大きなものが落ちたような音だった。 僅かにあった室内での話し声も途絶える程、今の音は大きかったらしい。誰も喋らない動かないでシンとした室内。唯一聞こえるのは自分の呼吸音と心臓の音。 一早く我に返ったのは黒子だった。 「大丈夫です。きっと時計か鳥の鳴き声でしょう」 「いやいや鳥はあんな鳴き声しないから」 咄嗟に突っ込んだ私だったが、それを機に皆我に返っていく。しかしというか、やはり先程の音が気になるらしく皆こちらに集まってきた。 「すげー音だったな。驚かしちゃ駄目だぞ、日向」 「俺じゃねーからな!?」 「大きな音だったなー!水戸部も吃驚したってよ!」 「…(コクコク」 木吉さん、小…金井さん、水戸部さんはあんな音など聞いていなかったかのように通常の明るさで日向さんと話してた。なんともない人がいると自然とこちらも落ち着くよね。 水戸部さんに関しては見てるだけで癒しだよね。何で喋らないのか分かんないけど。 しかしその空気を壊す大きな悲鳴が聞こえた途端、再び固まった。けれど二度目の驚き(?)ということもあり皆すぐに戻ってきたが。やはり空気は悪いままだった。 それもそのはず黒子の焦りを含む声が聞こえたからだ。 「黄瀬くん…!?」 「海常は1階だ。切り上げて行くか!?」 「行くしかねえだろダァホ!」 決まるのは早かった。 もう調べ残しはないか確認した後、先輩さんたちが先導し、一年の殆どが怖々としながらも着いていく。なんとなく中に混じるのもあれだったので最後尾にいる私。一気には出られないかはほぼ順番に並んでいる感じ。隣に黒子もいるが、取り残された、というわけではないだろう。 私も黒子も図書室を出ようとしたその時。後ろで本のような物が落ちる音がした。ここ、図書室だからきっと本だろうけど。反射的か何かで音のした方に振り向いた。 …よく考えてよ、誰もいないはずなのに本が落ちるとか、ありえないでしょ? 空耳だと思った。だけど黒子も一緒に同じ動きで同じ方を見るから空耳じゃないんだと確信した。 振り向いた先にあったのは一冊の茶色い本。無意識ではあったけど、気付けばその本の前にいた。その事に気付いたのは黒子の声だった。 「またこの紙、ですね。さっきはなかったはずですけど」 「なかった、の?」 ひやりと背筋が冷えていく。なんだよそれ、まるで本当にホラゲーじゃん。ホラゲー?いや違う、似たような映画とかあったじゃん。いくつか挙げてもジャンルは…怖いものばかり。つまり、ホラー。 「はい。…ここで話しては日向先輩に怒られてしまいます。行きましょう」 「うん」 黒子が紙を持ち、私は落ちたらしい茶色の本を持ち図書室を出た。 本、とは言ったけど手帳にも見えるのはどうしてかな。留め具がボタンじゃなくて昔よく封筒なんかに使われていたボタンに糸をを引っかけて止めるやつ…なんていったっけな。 図書室前にいた先輩さんたちのところに行ったら、急いでいるからというのもあり軽く怒られてしまった。勝手に行くな、動くな。心配するし吃驚するだろ、と。 大半は黒子に向けられているものだと思い、殆ど無視してた。けどそれに気付いた日向さんから叩かれて、聞いてんのか!って、怒られて…そこで漸く私にも言ってたんだと知った。 勝手に行動したのは悪かったとは、その、思ってるんだけど、まさか私まで怒られるとは思ってなかった。 だって私、他の人より怪しいんじゃないの? お叱りを終え、1階に行く途中、ぼそりと口から出た言葉を拾ったらしい黒子が驚いた顔でこちらを見ていた。 なに、と言ったらいえ、と言われ何か悩む表情をしたかと思えば。 「鈴さんはとても優しい人ですよ」 黒子は優しい表情をしていた。 20141019 |