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今吉先輩の言う少年の声に少なからず驚いた。私たちが聞いたものは少女の声で、他の人たちは少年の声だと?実は同一人物で声は声変わり的な。そんなこととかはありえませんかね。

驚き黙った赤司たち制服組に今吉先輩は不思議そうな顔して「どないかしたん?」って問いに「僕たちも奇妙な声を聞いたんです。ただそれは少女の声で“みつけた”と…」と赤司が答え、それを境にシンと静まり返る体育館。誰も声を発さない。自分たちは少年のもので助けてとの声に対し、私たちが聞いたのは少女の声でみつけた。きっと様々な思いや考え、疑問がそれぞれの頭に駆け回っているんだろう。

それが数分、続いた頃だっただろうか。

「ここらで俺らの報告でもしますか!」

和成の明るい声がしたのは。
それも大きな声で言うものだから隣にいた私と…緑の髪の緑間と和成にうるさいと一言文句を言ってた。
けれどその明るい声と一言で場の空気が幾らか軽くなったのは感じ取ったのでそれ以上何も言わなかった。むしろよくこのタイミングで報告しようと思えたねと言うと、

「だってすっげー言いてえことあったし」

とのこと。新たな発見と言えば紙の裏の事しかないが、それだけを言いたくてそう言ったんじゃないでしょうね?

「そうですね。では僕から。青峰くんたちと会う前、僕と伊月先輩と高尾くんと鈴さんの4人で保健室に行ってました。監督と鈴さんがそこで目覚めたと言っていましたので――」

先陣を切って黒子が淡々と報告をする。紙を見つけ、鍵が実はあって、それから紙の裏の事。
見つけたのは私だと報告すると数か所から視線をいただきました。やっぱ黒子も私を疑ってんのかな。それはもう諦めに近い。

「赤司くんあの紙の裏を見てもらっても?」

「確認しよう」

赤司は内ポケットに紙を入れていたらしい。取り出した紙を裏返し、あるであろう文字を探すようにじっと見つめ始めた。同時に黒子似の人、黛さん?もポケットに手を突っ込み同じような紙が出てきた。笠松さんが言っていた紙は黛さんが持っていたのか。保健室で見つけた紙は誰が持って…あ、そうだ、和成だ。あぶね、忘れかけてた。

「確かに書いてある。一枚目は「R」。二枚目は「S」と書かれている。これが何の意味を持っていると言うんだ」

「それは…」

「それはまだ分からない。けど意味ないことはないと思…うよ」

言葉詰まる黒子に代わって思わず言ってしまったが、大丈夫だろうか。根拠というかどうしてそう思えるかって聞かれたら迷わずゲーマーの勘と言うだろう。そこに書かれているものが意味なんてない、なんて思えなかったから。謎解きゲームあるあるだし。
ついでとばかりに二枚の紙の内容の報告もしていた。
私もその内容と覚えておきたいが、紙とペンがない…あ、待てよ、制服ならメモ帳持ってなかったっけ。

「千尋、紙の内容と裏の書かれている文字を教えてくれないか」

「ああ。

“遊びにさそわれた。だからいっしょに遊んだだけ。それの何が悪い!”

裏には「K」と書かれている。以上だ」

開き直りかよと思われる内容だったが何か引っかかる。そしてどうしてこうも続きがある様な文ばかりなんだ。気になるじゃないか。
これで今まで見つけたローマ字はR、S、T、K。これだけ見たらなんのことだかさっぱりだが、ある意味目印になるからいいもんだ。
そろそろ、和成の持ってる紙の内容も発表してもらえると助かるんだが。

「高尾くんたちが見つけたのは?」

「裏には「T」と書かれてるんすけど、

“今日もいいお天気でした。新しいことは、お友達が増えたことです。嬉しいな。
 仲良くなれたらいいなってぼくは思います”

だそうです!」

和成が見つけた紙の内容は日記かと思いたくなる書き方だった。そういえば赤司が見つけた二枚目も、日記のような内容だったような気がする。てか二枚目いい子ちゃんか。
これで見つけた紙は四枚。少なくとも、二人の子供があれを書いたと考えていいだろう。あとは筆跡次第で二人以上、もしくは二人だけかも。四人だったらどうしよう、すごく多くなりそう。

「これが何を表すのか…さすがに分からないな」

…逆に分かったらすごいと思いました。まる。なんて絶対に口に出せない。言ったら睨まれる。そこらの化け物よりある意味怖いんじゃないか…。

他に何か報告することはあるかと赤司が周りを一瞥する。
そう言えば何か報告しようと思って忘れてる気がする…何だったっけ。えーと、えーと、あ。

「言い忘れてたことが」

「なんだ?」

控えめに手を上げると視線はすぐこちらに戻ってきた。対応早すぎて割とびびった。けどそれを表に出すまいと必死に平常心を保った顔!褒めるとこな、ここ。

「校長室にあった扉…は見ましたか?」

「ああ、」

「ご存じかもしれませんが、そこの鍵が開いてることが一つ、それと私が保健室で見つけた鍵のこと」

鍵、と言った瞬間赤司から鋭い睨みの利いた目をいただきました、がそんなことは無視だ、スルーだ。隣で和成が「コイツ寝起きだと記憶飛ぶんすよ。大目に見て!」とフォローしてくれた。事実…を言ってくれるのはありがたいが笑いながら言うのはやめろ。只でさえ周りの視線がやばいんだから!いやこれらもスルーですけどね?
スルースキル鍛えといてよかったと心底思ったこの瞬間。

「これが、その鍵です」

ポケットから出した鍵を周りの皆さんにも見えるよう輪の中心に置いた。座ってから初めて動いた。
あ、でも逆に見えないか?うーんどうしよ。
すると今吉先輩が徐にその鍵を拾う。

「どう見てもここらの鍵じゃなさそうやなあ」

「そうなんですか」

「確かに見たことねえ形だな」

「…ま、これは嬢ちゃんがまだ持っとき」

今吉先輩は鍵を持つなり、赤司に投げ、最終的にまた私の元に戻ってきたその鍵。物を投げちゃいけません、って親に言われなかったのか。あんま言わない?ははは、そうかも。

投げられた鍵はうまくキャッチできた。いえい。受け取った鍵は言われた通り、入れてたポケットに再び入れた。ついでとばかりに内ポケットを探る。…あ、メモ帳あった。てことはあれとか、あれもある…のか。完全学校に行くときの装備じゃねえか、木の棒も持っておけばよかったな、なんて。突っ込み不在の恐怖ってこういうことよね。

「彼女の持つ鍵のことは後回しだ。また探索に行くしかない」

今度は誰が行くか、あちこちから声がする。
今度はこれだけいるんだ。メンバー選びも大変じゃないだろうにと思うのに…案外あっさり決めるんですね赤司さん。

「各高校ごとに行ってもらいたい。探索メンバーは…誠凛と海常、それと陽泉。行けますか?」

「ああ」

「何時でも構わねえ」

「ありがとうございます。それと誠凛さん所に高尾鈴を連れて行ってもらいたい」

「は?」

辺りがざわめく。そりゃ私だって驚いてるんですけど。けど誰も否定の言葉を言わない辺り、まあいいんだろう。

「私も?」

「ああ」

「他校生だよ?」

「知っているさ」

誠凛、ということは黒子と伊月さんがいる学校か。まあ、いいけどさ。私に拒否権はないらしく、誠凛さんに了承をもらうなりそちらに移動させられた。どうやらもう行く準備を始めるらしい。

待機組はまあその名の通り待機。輪はなくなり、各学校事にそれぞれ固まり、楽しそうに雑談を始めた。主に秀徳のとこ。

探索組に選ばれた誠凛、海常、陽泉は赤司たちの元に集まり、どこをどういうか話し合っていた。
知らない人たちばかりじゃないところに選んでくれたのは赤司の良心かな。だったら和成の所の方が私はまだ…て考えてもしょうがない。

誠凛にはリコさんがいるが女性と言うことでお留守番。それはもちろん、桃井にも通じる。私も行けるわ、と赤司に申し立てていたが、うまいこと丸められたらしく今は大人しくしている。後で赤司から桃井にもそれは伝えられるそうだ。確かに彼女たちは留守番ていうか、行かない方がいいかもしれない。知らない方がいいこともあるんだよ。
私は、あれだ、ホラーとか悲鳴上げないし的な理由で。嘘です、要は探りを入れられているらしい。

「ちゃんと話に参加しとるんか?」

「…今吉先輩」

今吉先輩いつからいたんですかちょっと吃驚しました。横から突然顔を出すとかどこぞのホラー?効果音があるとするなら「にゅっ」だ。

「参加、というより聞いてるだけです。それより突然どうしたんですか」

「んー?いや可愛い後輩が行くから見送りや、見送り」

…嘘付け。
ここにくるまで今吉先輩たちのことなんて知らなかったし。関わった事なんてなかったし!
桜井と同じバスケかな。知ってる限りじゃバスケ部の人多くない?全員バスケ部とか、言わないよね…?やめてよ?
にしても今吉先輩目って狐みたいでかわ…ああいや、細いから一度開眼してほしいなーなんて。

「そうそう、一つ確認しておきたいんやけど」

「なんですか?」

「他に隠してる事ないか」

「…隠してる事?」

ニヤニヤと口角を上げながら、今日のご飯は何?と聞く様な雰囲気で何を言いだすんだこの人は。隠してる事?ありません。何を隠す必要がありますか。そのまま言えばそうかー、と変わらぬ顔で相変わらずニヤニヤして桐皇のところに戻っていった。何がしたかったんだ、あの人。

隠してる事なんてないのに、まるであるかのように聞いてくるもんだから性質悪い。
別に、彼らに悪い事なんてないし。

仮に言ってないことがあっても、言う必要なんてないし。

「鈴、ちゃんと聞いてる?」

「あ、はい。聞いてますよ」

そろそろ真面目に聞きます。

201401012


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