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落ち着いた頭で辺りを見渡してみると、ジャージばかりの人たちが目に入った。というかそれしかいないレベルだ。それと少し…また別にカラフルな頭が…。なんじゃあの色って色も見つけた。なにあれ。

それはそうと目の前にリコさんと桃井が座っているが、まだ少し息が荒いようだった。和成も、桜井も少し息が荒いようだった。といってもリコさんたちより軽いけど。運動部の彼らでさえああなのに、短いとはいえ全力疾走で息切れしない方がおかしいか。しなければ精々体力馬鹿、か。…赤司は…きっと人間じゃな…っとなんでもありません!

かく言う私も少し息は上がってる。でもそれもだいぶ落ち着いてきた。中学は運動部だったとはいえ、これくらいで息上がるなんて…体力落ちたかな。しょうがないとはいえちょっと落ち込むわー。

「あれ?真ちゃん!?」

「高尾?」

和成の驚いた声がしたと思えば真ちゃん?らしき人も驚いた声を上げていた。私も驚いたわ。少し反応しちゃったじゃない。
それからがやがやとしだした体育館内に響く一つの声。それほど大きくないのにはっきりと館内に響いた。言わずもがな赤司の声だった。本当に赤司って何者なの。

ぞろぞろと皆そちらに向かう中、立ち上がった私を桃井が腕を引っ張って黒い服装の人たちの元に連れて行く。…あ、ごめんなさい修正します正しくは桐皇のジャージの人たちの元です、はい。ぐいぐい引っ張っていくからすごく遠慮したいです。近くにやってきて眼鏡を掛けた人とさっき探索中に出会った人が気づいて次に桜井も気付いて何か話していた。ガングロは…あ、いました。桃井がすぐに見つけて連れてきました。どこにいたんでしょうね。

流れ的か何かで集まり座って大きな円状になった。左に桐皇高校の人たち、右に秀徳高校の人たち。お分かりいただけただろうか。左に桜井が座っており、右に和成がいることを。桃井はガングロの隣に座っている。結局一緒に座るんかい、全くこれだからリア充は。あー他はいいや、強いて言うなら私のほぼ正面にリコさんたち誠凛?がいることくらい。
黒子も近くにいるし多分そうだろう、と。

赤司の両脇に白いジャージを着た人たちが控え、その右に伊月さん、リコさん、黒子のいる誠凛(仮)がいて、右に青色のジャージを着た人たち…黄瀬がいるから黄瀬の高校だろうか。その隣に和成がいる秀徳。確かジャージもオレンジだったと思うし、うん。そして私も通う桐皇。そして紫のジャージのところ。カラフルな頭もそうだけど、ジャージもカラフルとか笑えない。

そしてちくちく浴びる訝しげな目も無視だ。慣れろ、そして怯えるな。言ったって信じてくれない人は信じてくれない。私だってここに連れてこられた、被害者の一人だ。

「これで全員、だな?早速現状報告をしてもらいたいが…」

赤司はそこで区切ると目だけこっちを見てきた。ああ、はい。言いたいことは分かります。その意を込めて小さく頷いた。…落ち着いて応えたつもりだけど、内心一瞬だけ目が合ってびっくりしたんだけど。

「彼女を知らない者が多いだろうから。自己紹介を頼む」

「高尾鈴、桐皇高校一年です。秀徳の高尾とは兄妹です。…よろしくお願いします…?」

「なんでそこ疑問系wwww」

まるで打ち合わせをしてたかのように軽く自己紹介をすませた。和成の妹、と言えばなるほどと納得する者もいれば、妹いたの?みたいなこと言ってる人もいれば、特に興味なさそうな人も。これだけ大勢いると反応も様々でなんだがおもしろい。性格も様々だったら尚おもしろい。…けどおもしろがってちゃ駄目だよね。場所が場所なんだよね。

ああ、和成?いやもう放置でいいよね。この笑い上戸め。酒飲んでるの?未成年なのに?
じと目で和成を見てたら、急いで笑うのを止めた。…と思ったら肩を震わせてた。…もう何も言うまない。

和成から視線を外すと隣にいた緑の頭の人と目があった。が、すぐに逸らされた。目が合うの、嫌だったんだろうか。だとしてもそんな露骨に逸らさなくても…。
吐き出すかのように小さく溜息を吐いた。

その後赤司の好意で他の人たちの自己紹介を簡単に済ませた。人数多すぎて憶えてるか不安だが…こんな場所にいる時だけでも覚えておかないと。

本題である今この状況の整理に入るなりこちらの状況を簡易に説明した赤司。どれだけ簡易かって作文半分くらいの短さ。赤司ってすごく頭良かったりする?キレる奴?

途中から合流した私たち…うーん、共通点が皆制服ってことだけなので、制服組と勝手に名付けた。
制服組の報告が終わるとここにいた人たち…ジャージ組の報告へと移った。

「お前たち以外全員、気が付いたらここにいたんだ。最初お前たちがいないことに少なからず焦ったが…。いないならその方がいいと結論付けて終わりだ。
次に体育館から出ようとしたが鍵が掛かってて開かなかった。この体育館内の殆どを調べて漸く鍵と、一枚の紙を見つけた」

「紙…」

誰かが紙に反応した。私も少し反応した。そっちにもあったんだ、とか、まだ報告できない紙の裏のこととか。探索した私らの報告する時間とかくれますかね。

喋っていた青いジャージの人…確か笠松さんって言ったっけ。笠松さんの話が終わったらしく、今度は目の細い人…ええと今吉、先輩が付け足すかのように言った。

「それからな、皆して妙な声を聞いたんや」

「声、ですか?」

赤司がそのことに反応する。それを待ってたとばかりに口元の端を上げた今吉先輩は、私たちにとって衝撃の言葉を言った。

「“どうか助けてやって”」

声の主は少年のものやったで。と。

20141005


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