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どや。仲のいい兄妹を見せたところで。短くも長くも感じられた休憩時間が終了し、再び真面目モードに。今度はちゃんとソファに座り直しましたよ。…赤司の隣に。来いって言いながら座れるスペースを開けてくれたので、断るわけにもいかず大人しく座りました。そういうわけです。
和成潰しの件は、本人は特に痛そうにも辛そうにもしてなく。平然としている。真正面って表情よく見えるなあ…。

「さてこれから探索に行く組と待機組と分けたいんだが…」

行きたい奴はいるか?とまず言った赤司。こちらから見て桃井、黄瀬の二人はあまり行きたくなさそうな顔してる。化け物を見たせいか…。
和成組全員は化け物を見ているだろうけど、私たち、正確には私以外その化け物を見ていないから平然としていられるんだろう。もし聞いているなら話は別だけど。

「まず何人で行こうと考えてるの?」

「そうだね…3、4人くらいか」

行けそうな奴はいないか?と今度は言い方を変えた。私…は行ける。要は出会っても逃げればいいんじゃないかな。さっき(巻き込まれて)追い掛けられたが逃げ切れたし大丈夫だろう。それならば、と控えめに小さく手を上げた。

「私行ける」

「鈴が行くなら、俺も」

私が言うとなら俺もと和成も言った。私の行くとこ和成あり、みたいになってるぞ。一緒に行くことに特に不満もないので何も言わないでこのまま待つ。黒子たちとも知り合いみたいだし、少しは話さないのかな…というのは気になるかな。私と和成、ずっと一緒にいるんだけど。

「テツヤは行けるか?」

「はい」

「じゃあ俺も行くよ」

「ではお願いします」

多分赤司は誰が行こうといいんだろうな…とか考えてた。のがバレたのか勘付いたのか一瞬こっちを見てきた。うひゃー怖い。というのは冗談だけど。そんな睨まないでくださいって。
ばっと目を逸らした先に和成がいて目が合った。何か言いたそうにしなくもないが、なんだろ。後で聞いてみてもいいかな。覚えてたらの話だけど。

そんなこんなでいつの間にか話し合いが終わっており、携帯のタイマーで30分以内に帰って来いとのこと。タイマー係りに黒子が任命されていた。私と和成と黒子と伊月さんとで、一先ず様子見ということで行ってきす。

校長室の扉前に行くと鋭い視線を感じ、振り向いてみたが誰かが私を見ているような感じはなかった。あ、自意識過剰ではないよ。一瞬赤司かその後ろにいる黄瀬かとも思ったんだが…よく考えてみればなんか違う。いくら黄瀬でもあんな風に見ないだろうし。じゃあ誰だと言う話ではあるが。

「鈴?」

「…あ、ごめん」

名を呼ばれ慌てて前を向いた。黒子と伊月さんは既に廊下に出ていた。化け物はいなかったらしい。私の知らないとこで事が進んでばっかだ。考える時に人の話を聞かないこの癖何とかならないかな。
校長室への扉を閉めたところでどっちに行こうか軽く話し合った。左に行くと私とリコさんが目覚めた保健室があると言ったら、ならそっちの方に行ってみようということに。

自然と二列になり、前に黒子と伊月さん、後ろに和成と私。ほとんど無言のまま何に遭遇する事もなく保健室に着いた。距離が短いということもあるが。
黒子が保健室の扉を開け、皆続けて入り扉を閉めた。ここで何を探そうと言うのか。
何も分からないまま扉横でボーっとしてると、それに気付いた伊月さんがこちらに近づいてくるのが見えた。

「監督と君はここで目が覚めたんだよね?」

「そうです」

「もし俺らと同じなら何かあると思うんだ」

「…と言いますと?」

伊月さんが言うにはこうだ。
何でも自分たちが目覚めた教室の教卓にどこかの鍵とペンがあったそうだ。ただそこにあるのも不自然で一応持ってきてはいるらしい。ペンがあったのに紙はなかったそうだ。なにそれ。
鍵とペンか…あれ、鍵?
ポケットにそれらしきもの入れてなかったっけ。両手を両ポケットに突っ込む私を不思議そうにじっと見る伊月さん。案外すぐに探し物は見つかった。指先に当たった冷たくてひんやりする物。それを確かに手の平で握りしめ、私にも伊月さんにも見えるように前に出した。

「これは…?」

「この部屋で見つけたものです。私も今の今まですっかり忘れていたんですけど…」

申し訳なく言いながらもう一つ、リコさんが懐中電灯を見つけました。と言うと伊月さんは何か考えだした。どうしたのかとその様子を見てると黒髪さんの後ろから「あった!」と元気な声が聞こえ、揃って声をした方へ振り返る。
声の主は和成のもので、見ると和成の手には古びた紙があった。黒子が近くで「高尾くんうるさいです」と叱っていた。いいぞ、もっと叱れ。

「何があったんだ?」

「あの紙みたいっすね。でも最初に見つけたのと字が少し…」

「…和成、ちょっと貸して」

「え?おお」

ちょうど和成が紙に目を通していて、慎重さもあって横から見れないので、ならば裏からと思って覗いてみたら紙の隅っこに透けて見えた文字とは違う文字を見つけた。本当に偶然だった。
和成から紙を受け取り、裏返して隅を見つめ、薄ら書かれたローマ字を見つけた。

「何か見つけた?」

「紙の隅っこに、」

「ん…?」

横から覗く和成に分かりやすく紙を近づけ指を指した。数秒して見つけたのか感嘆の声を上げた。

「やっぱ鈴は目がいいなー!」

「…ありがと…?」

「何を見つけたんですか?見せてください」

にっこりと何処かわざとらしく言う和成に引っかかりながらも、黒子たちにも先程見つけたものを見せた。
私が見つけた一文字のローマ字。そこには「T」と薄く書かれていた。下手すれば紙と同化しそうだ、というくらいには。そんなものを偶然だけど見つけた私。…これ余計怪しく見られちゃうフラグだよね。折りたいけど、折りたいのを我慢して回収します。

「これ和成たちが見つけた紙の裏にも書いてあったりしますか?」

「どうだろうな。裏なんて見てないから分からない。高尾は見たか?」

「残念ながら見てないっす」

紙の裏に意味不明な文字。これ脱出ゲームとホラゲにある展開じゃん。いやそもそも解きあるあるってやつだ。よく調べないと、見落としがあるから、ゴールに行くのは難しい。よく調べる人ならそうでもないんだろうな。……あ、妹ちゃんがよく調べる派だったわ。いつも助かってたっけ。
赤司が見つけた紙にだって、何かあったかも。戻ったら見せてもらおう。
今見つけた子の紙は戻ってから読もうと言うことで、和成が持つことになった。それとさっき伊月さんにも見せた鍵について言うと。

「お前寝起きに調べただろ…」

「…仰る通りです」

とまあ呆れたような和成の注意?を右から左に受け流し。最初に鍵を見つけた和成と伊月さんの二人揃って「こんな鍵見たことない」とのこと。確かに私も見たことないけど。
持ち手部分に小さな輪のような、ホラゲでよく見るような鍵なんて私だって今まで見たことないわ。
黒子も黒子でじっとこちらを見ないでください。顔に穴開くわ。

20140904


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