09


「鈴、無理はすんなよ」

「大丈夫、平気」

伊月さんの言葉の次に和成からも心配の声を頂きました。それに頷いて話の続きを聞くことにした。本当に大丈夫だって。ただの自業自得の行為だから。
あまり納得のしていない顔のまま、和成は口を開いた。

「再開してからだな。1-Bの教卓の上にこの紙切れが置いてあって、拾って読んでたらさっき追いかけてきた化け物がまたやってきて、こっちまで逃げてきたってわけ」

言って制服のポケットから、一枚の手のひらサイズくらいの紙切れを取り出し赤司に手渡した。見たところ少し古い紙のようだ。
中身を確認した赤司が読み上げた。

“  がないなんて気持ち悪いやつ。
 化け物みたいだから、みんなでやっつけちゃおう。”

読み終わり、赤司が顔を上げた。

「…子供の字だな」

「多分、そのクラスの子だと俺は思うんだよねー」

赤司は眉を寄せて何とも言えない顔をして、和成は困ったような顔して言った。クラスの子、ということは1年生ということだよね。子供、ということは小学生だろうか。となるとここは小学校…なのか。小学校の割に意外と大きいのね。

「見たところ続きがありそうだが…他にはなかったのか?」

「一年生のクラス全部見たけどなかったよ。まだ見れてない教室もあるけど…」

「そうか」

桃井が答えると赤司は一度解散、と言い放つと、黒子や桃井、黄瀬の順にそれぞれ離れていった。赤司は傍にあった3、4人掛けソファーの真ん中に座ると何やら考え始めた。リコさんと伊月さんも少し離れ、部活らしき話をしていた。バスケはそんなに詳しくないし、ましてや練習内容とか、分からないから部活らしき話になるけど。筋トレがーとか練習がーとか少し聞こえるから部活関連の話で合ってるだろう。うん。

解散って要は休憩ってことなんだろうなーと適当なこと考えて、私も移動しようと立ち上がった。隣にいたままだった和成がこちらを見上げ、移動すんの?と聞かれたので、すると答えた。

「どこ行くの?」

「そこの扉の前」

見上げる和成の頭上で指さすと和成もそちらを見る。見ている隙に歩き出すと後ろで急いで立ったような音が聞こえ、足音はすぐ後ろに着いて来た。

和成は、きっと気を遣ってくれているんだと思う。周りは私の知らない人ばかりで、まだコミュ力発揮できないし(ちょっと訳アリで)、ごく一部から疑いの目は向けられるし。確かに知らない人間が数人だったらまだなんとかなったよ。でもいきなり増えるしさすがの私も無理かな。そのうちいつもの本調子になるとは思うけど。今でも大分戻ってきているけど!
さっきだって、黒子が和成を一瞬見たけど和成はそれにへらって笑って…私がその視線とその笑顔の意味に気づかないわけないじゃん。これが勘違いとか、自意識過剰で済めばそれはそれでいいんだけどね。そうだったらいいのに。

「向こうは何の部屋だろ?」

「間違ってなければ職員室でいいと思う」

「なんで?」

「廊下から見たとき隣だったし」

「なるほど」

校長室と職員室が繋がってる(仮)なんて珍しいよね。小中は合体してたし、高校は隣同士だけど繋がるような扉はなかったし。逆にこっちが当たり前、なんてことはないよね…?
試しにドアノブを回してみた。…………うん。

「開いた…」

「え、マジ?」

鍵しとけよ!いややっぱい…いややっぱしとこうよ不用心だなおい!重要な書類がある部屋とかじゃないの?ここには置いてないから鍵開いてんの?教員誰でもここは要り放題じゃんやったね!和成危ないからまだ中を覗かないで!?
…これってやっぱ赤司とか他の誰かに報告すべき、だよね。


と考えたところでタイミングよく赤司から収集がかかったので再び集まる事に。ただ少し違うのが、赤司がソファーの辺からあまり動いていない。ていうか全く動いてなくない?あれ気のせいなの?皆も動かない赤司に何か言うこととかないの!?私は、特にないけど。
さっきとまた別の位置に皆座っていく。自由且つ自然!
と密かに一人突っ込みしてたら座れる場所がほとんどない。というかない。仕方なしに和成の隣…ソファーの肘掛け部分に横向で座った。体は捻らなきゃいけないけど、前に座るよりはよっぽどいい。ここだけの話、肘掛け部分で横向きに座るのが好きだったりする。めったに出来ないからねー。大抵お母さんに怒られるし…。
お母さん今どうしてるかな…心配とかしてるかな…。て、そんな事考えてる場合じゃないよね。

肘掛け部分に座る私の向き、左から私、和成、黄瀬、リコさん、桃井。向かいのソファーに左から黒子、伊月さん、赤司の順に座っている。真正面がほぼ赤司だからすごく見られてる。なにかおかしなことでも?

「鈴、行儀悪いからこっちにおいで」

「こっちの方が安心できるからいい。…ありがとう」

赤司は真面目くんか。マジか。
隣を叩いてまでで申し訳ないが、正直赤司の隣で話聞けるほどの余裕はまだないよ。あとほら、黄色がちょっと。
気を遣ってくれたんだろうし、おかしいと思われるかもしれないが一応礼は言っておいた。
というかね、隣座れるほどのスペース空けてないでしょうが。
スペース開けてから言いなさい。

20140820


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