もう一度キミたちを知る | ナノ
始まりへ

メールで通知をもらった数日後。私は再び日本に来た。メールの結果は知ってるがやはり見たいじゃないか。

というわけで目的の学校前。それなりに立派な門を潜り、校内へ足を踏み入れる。
入り口前からでも見えた大きな掲示板。あそこに合格者の番号だけが載っている。それとその前にたくさんの人の集まり。受験生はあるかないか探して喜んでいる者もいればがっくり肩を落としてる者も。
その中に一瞬だけカラフルな集団が見えた気がしたが、すぐに人の群れの中へ。…気のせいかな?目を凝らしてもそれが姿を現すことはなかった。
気のせいと判断し、私も大きな掲示板のほうに近づく。まだ10mはあると言うのに既に見上げなくてはならない。
まだ少し遠いけど一応数字は見れるのでその場で見ることに。自分の番号は何処かと探すこと早数分。なんとか見つけることに成功。
懐から携帯を取り出し記念に一枚。

さて用も済んだし帰るかと足を動かした時だった。


「卯月さん…?」


後ろの合格者たちの群れの中から私を呼ぶ声が聞こえた。
振り向くとそこには懐かしい水色の少年。


『黒子君?』

「やっぱり卯月さんだったんですね。お久しぶりです」


中学以来となる友の姿に少なからず興奮する。それは相手も同じ様で少し嬉しそうにも見える。これは長年の勘だ。
久しぶりと返しながら黒子君に近寄り、辺りを軽く回す。他はいない、のかな?
黒子君に対して最初に思った素朴な疑問を聞いてみた。


『黒子君もここに?』

「はい。なんとか合格しました」

『わあおめでとー!』


まさか黒子君と同じ学校になるなんて、ちょっと嬉しい。誰もここにはしないと思っていたから余計に。まあ彼ならありえないこともないが、まさか黒子君だなんて…。
嬉しさのあまり手を握ってしまったようで、慌てて手を離し謝った。…なんでそんなにがっかりするの黒子君?


「…その様子だとまだ知らないみたいですね」

『え?何が?』


いきなりぽつりと呟く彼を見る。知らない、とは何がだろうか。じっと黒子君を見てると携帯を取り出し誰かに電話を掛けた。聞いちゃ悪いなと重い離れようとするがその前に手首を捕まれ動けなくなってしまった。何故に。電話終盤にて、私もよく知る人物の名前を口にする。…え、嘘でしょ?
通話を終えた黒子君は「行きましょうか」と促す。もしかしなくても今からその人に会いに行くんですか。

歩いていくにつれ自然と段々足が重くなってくる。少しずつ黒子君との距離ができると私の手を引っぱって先に進む。あの、ちょっと早い。
そして遠くからでも分かるほど、一定の場所にカラフルな色がちらほら見えて来た。


『ねえ黒子君』

「はい、なんですか」

『あそこにカラフルな集団がいるんだけど』

「そうですね。卯月さんも十分カラフルだと思いますよ」

『それなら黒子君もでしょ』


待って待っての意を込めて手をぐいぐいと引っ張るが全く効果がない。口で言っても聞いてくれないだろうなと思いながら、彼らとの距離はどんどん近づいていく。
すると向こうも漸く私たちに気付いたらしく、集団の中から特に目立つ黄色いきらきらした人が私に向かって走ってくるのが分かった。それもすごい勢いで。これは避けないと後ろに倒れてしまいそう。


「卯月っちーー!!」

『わっ…と』

「っ酷いッス!なんで避けるんスか!?」

『身の危険を感じたんです』


そうです、飛びかかって来たのは黄瀬君。見えない尻尾を振りながら走ってくるところを見ると、まるでしばらく留守番をしてた犬がやっと飼い主が帰ってきたような、そんな風な。犬なんて飼ったことないからあんまりよく分からないけど。多分、こんな感じだろう。
未だに「卯月っちー!」というわんこに黒子君が「黄瀬君、うるさいです」「ヒドッ!!」と終止符を打った。…変わらないなぁ。


「よぉ卯月」


くぅーん、と泣く黄瀬君の頭をよしよしと撫でてると私の頭に重みと共に名前を呼ばれた。重くなった頭を頑張って上に動かすと日本人かと疑うほどの肌の黒さの彼。


『青峰君久しぶり。…青峰君もここに?』

「おう。合格もしたぜ」

『え、嘘…』

「嘘じゃねーよ」


まさかと思って聞いたら、予想通りの答えが返って来て信じられない…という目で見てると今にも飛び掛かって来そうな勢いでこちらを睨む青峰君。ちょっと怖くてこそりと黒子君の後ろに避難した。ついでに黒子君もなんか言ってやってよ。

まずここの大学はそれなりに出来ないと入れない、謂わばレベルの高い学校である。言ってしまえば悪いが、青峰君たちの様な学力では到底無理で…。ならどうやって合格したのだろうか。一つ、考えはあるけど…いやまさかそんな。
他にどうやって合格できたものかと考えてると後ろから私の考えを見抜いたような声が聞こえた。


「常に人事を尽くす。それが俺のやり方だ」

『…やっぱり緑間君“たち”が頑張ったんだ…』


頑張ったねと視線を緑間君に向けてると、青峰君が後ろから遠ざかる気配がした。どうしたのかと振り向くとこの場にいない二人が来ていたようだ。
そのうちの一人は悪戯を仕掛けて成功した子供の様に笑っていた。この笑顔はいい意味で嫌な予感をさせる笑みだ。
恐らくここにいるみんなはこの学校に合格したものたちだろう。彼と、残り二名はいけると思う。黒子君は可もなく不可もなく、あとの二人…青峰君と黄瀬君が合格するのは本来あり得ない。だって中学では赤点ぎりぎりだったし…高校で良くなったのかもしれないけど特に変わった様子はない。


「やあ優。久しぶりだな」

『久しぶり。…で、これは』

「そうだね…優にパンフレットが届いただろ」

『…うん、来た』


数ヶ月前に来たアレを思い出す。改めて考えると何で来たんだろ。というかどうしてパンフレットが来てる事も知ってるんだろう。だって誰にも住所は教えていないし……。
ここまで来て感づかない訳ではない。


「あれは僕が出したものだよ」

『…よく、向こうの住所が分かったね…』

「僕を誰だと思ってるんだ?」


赤司様、ですね。相変わらずで何よりです。そんな意味も含めて軽く苦笑してしまう。
赤司君がやってしまうと当然なんだよ錯覚してしまう。事実、そうなのかもしれない。住所を教えてないのもあれだけど、探し出すのもすごい。
そんな二つもあってこの事に関しては何も思ってない。おかげで悩まずにあっさりと決めることが出来たのだから。

話してて気付かなかったが、いつの間にか青峰君と黄瀬君と黒子君と緑間君たちがいない。その辺にいるのか周りを探してもそれらしい人物は見つからず、それに気付いた紫原君が「飲み物買いに言ったよ」と教えてくれた。紫原君は残ったらしい。まさかの4人のミスディレクションに驚きは隠せなかった。
そんな時に今思い出したように赤司君が口を開く。


「そうだ優。みんなで一緒に住もうと準備してるから、君も準備をしてくれ」

『………え?』


ちょっと待って、どういうことなの。え、決定事項?もう決定事項ですか?
準備してくれって私も?みんなでって誰と。準備?いつ?

混乱する私を他所に赤司君は帰ってきた四人を含めみんなを集めていた。まだよく分かってないがただ一つ分かったことは、全ては赤司君の手の平の上だったと言う事ですか。
もしかして黄瀬君と青峰君をここに合格させたのは、全員が同じ大学に入るため。まぁそこまでして何がしたいのかは分からないけど。
漸く落ち着いてきた私はまず、決定事項だなのか確認した。二つ返事返されてしまった。


『みんなっていうのはこの場にいる…』

「ああそうだよ。詳しいことは後程伝えよう」


と言ってパソコンのアドレスが書かれた紙を渡された。いつもながら準備いいね赤司君。
この場にいるみんな…つまりキセキと住む、のか。まあ知らない誰かよりはいい。それに家を探すのも省けたし。
なんだかんだ、流されている。まあいいかな、って。


『ねぇ、桃井さんは?』

「彼女も同じ大学だよ。ただ一緒に住むのは遠慮されたけどね」

『そ、そうなんだ…』


彼女はこの後用事があるらしく、先に帰ったらしい。今日会えなかったのは残念だけど、近いうちに会えるかな?これだけキセキが揃ってるんだ。会えそう。
桃井さんと言えば黒子君に好意を寄せてたんだっけ。それはまだ続いてるのかな。それとも通じ合ったのかな?…なんか、いいなぁ。
そうだ、そろそろ戻らなければ。今日中に帰れない。みんなに一言言い、空港に向かった。



急だったけどみんなと住む、は置いといて一緒にまた過ごせることになるとは…今からでも十分楽しみだ。それがまるでこの3年間の開いた溝を埋める様だと思えたから。
だが楽しみという思いばかりで気が付かなかった。一緒に住むということはそれなりに危ないということ。

男6人の中に女1人、一つ屋根の下で暮らすのだから…。




「念のため言っておくがみんな合格だ」

『わ、逆にすごい』



でもみんなそんなことしないよ。


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…ほのぼのですよ?

犬についてはうちの子を元に。他のわんこちゃんもそうですかね?




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