それは持ってない
今日は桃井さんとお出掛けするという約束の日。せっかくだしお洒落とかしてみたいが私の場合今更って感じがする。お洒落は好きか嫌いかと問われれば普通。得意か苦手かと聞かれたら苦手寄り。あまりする機会なんて無かったし、アメリカじゃ普通にスポーツできるスタイルでいたし、それに今の流行とか、分からない。
『時代遅れとは思われたくないし…うーん』
「あ、これ良いッスね!さっき見つけたこれと…うん、いい!これにしよ!」
『…黄瀬君はさっきから何を?』
「卯月っちがおめかししてるって聞いて、コーディネートしてるんスよ!」
『そ、そう…』
あえて「誰から」と聞かなかったのは偉いと思う。なんか、なんていうか怖い。
適当な服を見つけて鏡を見ながら比べっこして、これは合わないとボツにして一先ずベッドにぽい。そんなことを繰り返していたらそれなりに服は出てきている。軽く10着は最低あると思う。それをたまたまやってきた黄瀬君が見つけて、ずっとあれこれ合わせている。…さすがはモデル、やっぱりセンスもいいみたい。私は黄瀬君みたいに工夫して着るみたいなセンスはないから、黄瀬君が服を選ぶのはとても勉強になる。黄瀬君ありがとう。ついでに私の服も選んで、なんちゃって。とか思ってたら選んでくれてるみたいだ。それっぽい流れだから多分間違いない。
「これアメリカの服ッスよね?」
『そうだよ。それ向こうで初めて買った服で、一目惚れしたの』
「へえ…!」
服選びは勢いが大事だ!って誰かが言っていたような気がする。
元から二枚重ねになってるワンピースみないなのので、太ももの半分ほどの長さ。下は水色で上に行くほど白くなっていく。グラデーション、ってやつ。とても綺麗でビビっときたのを今でも覚えている。ただ、さっきも言ったようにどうアレンジしようかは分からなくて、単品とか、そればっかで片手で数えれる数しか着ていない。
「これ着ないんスか?」
『…んー、多分』
「えーもったいないー」
『だって私これしか着ないし』
「…ちょっとこれ持ってて」
言って渡されたワンピース。はて、何をするのだろうか。言われるがまま持ってると黄瀬君が服や小物を漁り始めた。なんとなく察しはできたのでいいけど、下着とかに近づいたら一声かけよう。
「モデルのコーディネート術、見せてあげるッスよ!」
途中そんなことを楽しそうに言うのでちょっと楽しみにして待ってみることにした。
まだ約束の時間まで余裕はあるし、お茶でも持ってこようかな。のんびりしすぎて遅刻しなきゃいいけど。
今度コーディネート術教えてもらおうかな。
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