もう一度キミたちを知る | ナノ
寝ぼけてるって

ふと目を開けた。重いやら寒いやら暗いやら静かやらで。
それにしても部屋が暗い。起き上がりたいのだが重くて体が動けず、仕方なしに視線を動かして時計を見ると午後4時半。あれから約2時間経ったらしい。コーヒー効果で起きれたのか、なんて。
そう言えばどうして体が重いのか。左の方にはちらりと赤が見え、首を動かしてみると赤司君が寝ていた。…相変わらず綺麗な顔。中学から見慣れてるけど、あまり変わってないよね。その反対で紫原君が寝ていて、腕をちょうどお腹辺りに置かれていた。重い原因はこれか。赤司君も赤司君でちょうど胸上あたりを押さえられているけど。

気持ち良さそうに眠る二人を起こさぬよう、ゆっくり上半身だけ起き上がる。一息つくとほぼ同時にドアが控えめに開いた。少し開いたドアから顔を覗かせたのは緑間君で、今の状況と二人を見て肩が跳ねていた。おもしろい。
手招きして小声でこの状況から抜け出したいと伝えると、軽々と抜け出せて、あまりの素早さに二人を起こしてしまったんじゃないかと振り返るが、まだ夢の中にいるようだ。ホッと胸をおろし、緑間君に感謝した。

部屋が暗かった理由は緑間君がカーテンを閉めてくれたからだそうで、今回は起こしに来てくれたのだそうだ。
それと黄瀬君は帰ってきているらしいが、青峰君と黒子君はまだ帰って来てないとの事。


『夕飯までに帰ってきてくれるといいんだけど…』

「一応早く帰って来るようメールはしてはいるのだよ」

『ありがとう。これで帰って来るのが遅かったら赤司君怒りそう』


なんせみんなで食べるのが好きらしいからね、彼は。



◇ ◇ ◇



急いで晩の下拵えを、緑間君にもちょっと手伝ってもらいながら行っていた。5時過ぎに青峰君たちは帰ってきて、帰ってきて早々「腹減ったー」なんて。帰ってくる時いつも言ってるんだよ、それ。
黒子君はまだ手の付けられていない食材に一瞬驚きながら「僕も手伝います」と腕まくりをしながら台所に入った。3人いると言うのに特に狭いと思わない程広い。紫原君が来てもまだ大丈夫だと思う。

今日の主なメニューはオニオングラタンスープとハンバーグと湯豆腐。ハンバーガー用のパンもあって、お好みでハンバーガーにもできちゃう。みたいなそんなメニュー。まずはレタス、マヨネーズ…。


『黒子君、レタス洗って千切っといてくれる?』

「わかりました」

『緑間君はそこのある小皿と、マヨネーズと醤油とみりん、あと砂糖を取り出して一通り混ぜといて』

「了解したのだよ。配分はそこの紙に書いてある通りか?」

『うん』


冷蔵庫に貼られているメモ。バーガーを作る時のメモだ。緑間君はそれを見ながら先程お願いしたものを合わせて混ぜている。
その間にハンバーグの種を作りながらついでにたまねぎを切る。スープ用とハンバーグ用、ハンバーガー用と。考えるだけで大変だなあ…。


次の準備に取り掛かりながらふと思った。
なぜあの二人はあそこにいたのかと。でも多分聞いたら「寝たかったから」「自分の部屋に行くのが面倒だったから」というに違いない。赤司君は分かるけど、紫原君はいつ来たんだろう……。一緒に寝るなんて合宿以来だもの。


「これ、お皿に盛りつけときますね」

『あ、ありがとう。助かる』

「いえ、当然のことです」


二人の手伝いもあり、残りは湯豆腐のみとなった。下拵えは終わってるのであとは入れるだけ。そろそろ集まってもらっていた方がいいかな。鍋に予め切った豆腐を約1丁分入れ、自分の部屋に向かう。多分まだいると思うんだけど…寝ていたらね。

部屋に入ると予想通り二人ともいる。けどまだ寝ていて、尚且つ気持ちよさそうに寝ているもんでまあ起こしにくい。このまま寝かせていてもいいんだけど、赤司君が怒るし。
それにしても部屋を出る前とほとんど変わらない状態で寝ている。よっぽど疲れていたんだろうか。…余計起こしにくい。それでも起こさねば。
ベッドの縁へ寄り、紫原君を起こそうと声を掛けてみる。


『紫原君、起きて』

「…んー…」


……。起きない。ですよね。
仕方ない、すぐに起きてくれる赤司君を先に起こそう。


『赤司君、起きて』

「………ん…」


もぞっと動いた後瞼が開いた。でも確か低血圧だった気がする。ぼーっとゆっくり視線を泳がして起き上がった赤司君。まだ寝ぼけてる?


『赤司君、ご飯そろそろできるよ』

「……ああ」


全く動かない赤司君。よし、ちょっと放置で。
もう一回紫原君を起こそうと今度は体を揺さぶってみた。


『紫原君、起きてー』

「…やだー」

『やだじゃない、ここ私のベッド。あとご飯できるよ』


ゆさゆさ揺すりながら声を掛けてくと「ご飯」と言う単語に反応したのか漸く紫原君が起きた。ダルそうにのそのそと部屋を出ていったので、後は赤司君だけですね。


『赤司君起きた?』

「…ああ」

『まだだよね。とりあえず行こう。はい』


手を出して一緒に行くよう催促する。じっと私の手を見てる姿がまるで猫みたいだ、と思ってると突然その手を引っ張られ、一瞬にして赤司君の腕の中へ。同時に赤司君はせっかく起き上がったと言うのにまたベッドに転んだ。ってちょっとこれどういうこと。


『あ、赤司君…?』

「ん…」


あ、まだ寝ぼけてますねこの人!
内心若干焦りつつも、どうしようかとそこらは冷静に判断した結果、湯豆腐作戦だ。


『早く起きないと湯豆腐なくなっちゃうよ!』


反応してくれと願いながら言ってみるとぴくりと手が動いた。これはいけるかもしれない…!そのまま様子を見てると私を抱きしめたまま起き上がった。ふ、腹筋すご…。


「…優?」

『起きた?』

「…どうして僕は優を抱きしめてるんだ?」

『寝ぼけてたんですよ。そろそろ離して…ちょ!?』


寝ぼけてて覚えてない赤司君とかちょっとレアなんじゃないですかね。説明してると手の位置を変え、そのまま横抱きて立ち上がった。所謂お姫様抱っこ。これじゃ身動きが取れなくない。暴れたら落ちる…!
そしてそのまま部屋を出ようとってちょっと待った!


『あ、赤司くん降ろして…っ』

「嫌だ」

『なんで!』

「大人しく僕に抱かれてろ」


その時見た赤司くんの顔が見たことないくらい優しい顔をしてて何も言えなくなってしまう。にしても意外と…。


『赤司君っていい体してるね…』


パッと見じゃ弱く見られがちだけどそんなことない。そういえば黒子君もいい体してたなぁ、赤司君ほどではないが。あ、でもあれから鍛えてるよね?なら中学よりも成長してるかも。


「あー!赤司っちズルいッス!!」

「うるさいぞ涼太」

「オレも卯月っち……ああ、そういうことッスか」

『ん?』


なんで黄瀬君最後まで言わなかったの。というかなんで赤司君を見て呆れたような顔してるの。残念ながらここからじゃ赤司君の顔は見えない。黒子君はくすっと笑うだけで、この状況から助けてはくれないようだ。


『あ、赤司君そろそろ降ろして…』

「…ん、」


今度はというとすんなり降ろしてくれた。さっきそうしてほしかったよ。
逃げるように台所へ行くと緑間君がこっそり耳打ちをしてくれた。


「赤司はまだ寝ぼけているようなのだよ」


相当深く眠ったようだな、とまるで母のような発言をした。みんな赤司君を見てることに気づき、釣られるように赤司君を見た。


『…本当だ』


赤司君はソファに座ってまた軽く眠り着いていた。
みんなは何も言わず温かく見守っていた。




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テーマは「仲良しキセキ」、でした。ちょっと違うね…?




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