もう一度キミたちを知る | ナノ
甘い香りに誘われて

「卯月ちーんお菓子ないー?」


明後日提出する課題をやっていたら紫原君が部屋に入ってきた。
ノックもせずに。
ドアの方へ向くといつも持ってるお菓子袋を逆さにして自分はお菓子持っていませんアピール。


『いつものところにはないの?』

「もうなかった」

『昨日買った筈なのになー…』


確かに昨日買い物行ったときに大量に買った筈なんだけど…。あの量なら今日一日持ってもおかしくない。それほどの量を買い込んでたのに。
どうしよう。今から買いに行ってもいいけどそれまで紫原君が持つかどうか。


「卯月ちん、お菓子も作れる?」

『え?』

「お菓子作れる?」

『一応…ちょっとなら』

「なら作ってー」


へらっと笑う紫原君。
作るのはいいが時間かかるよと言うと構わないと言う。買いに行った方が断然早いのに。
その前に材料あったっけ。
台所付近にてざっと探したところ、ケーキやクッキー等は作れことが分かった。私こんなの買ってたっけ。全く覚えてない。なら誰が買ったのだろうか。


『何がいい?』

「ん、ケーキ」

『ケーキか…』


ザッハトルテ、とも考えたけどチョコがないため却下。
頭で考えながらケーキの材料を上に出していく。あと道具も。
それを隣で見てる紫原君。視線がすごい。


『紫原君』

「なーに?」

『なにか言いたそう?』

「別に?」


ならなんだ。
ふーんと返事をしてまた考える。チーズケーキなんてどうかな。食べたくなってきた。
まずは元となる生地から作るか…。
ボールを取りだし卵を入れ、バターも入れ混ぜる。


「何作るのー?」

『チーズケーキでも作ろうかと。私も食べたくて。…あ、嫌だった?』

「ううん!好き!」

『よかった』


話しながら手元を動かしてはいるが、よくよく見ると紫原君の視線が手元に集中してることに気付いた。
これはもしかして?


『やってみる?』

「!やる!」


なるほど、やってみたかったのか。
やり方を教えながら、もし紫原君がケーキやお菓子を作れるようになったら将来は大丈夫なんじゃないかと思う。
覚えも早いし。まぁ好きだから、という理由かもしれないけど。
これでどんどん種類も覚えていけば、自分で作れるようにもなるだろう。

ちゃくちゃくと完成まで近づいて仕上げと取り掛かる。


「ちょっとめんどいけど楽しいねー」

『それで出来上がりがいいなら頑張った甲斐あるよ』

「うーん…それなら頑張る」


頑張れ、と声をかけて出来上がりまでしばらく待つ。
その間課題を少しやろうと一言言ってから自室へと戻った。



◇ ◇ ◇



数時間してオーブンが焼けたと合図する音が聞こえる。ちょうど課題も終わり片付けは後にして下へ降りる。
まず目にしたのがものすごくきらきらしてる紫原君。オーブンを開けてキラキラしてる。…ま、眩しい。


『出来てる?』

「出来てるし!」

『じゃあ熱いからコレ付けて取って』

「うん!」


なんか親と子のクッキングみたい…。私が親で紫原君が子供、的な。

そっと丁重に取り出し、台の上に置かれるケーキ。形はよし。竹串を取り出してぷすり指す。…くっつかないね。
横で見てた紫原君はこの行動の意味が分かってない様子。


『出来たよ』


熱々のまま食べる?それとも冷ましてから食べる?


「みんなで食べる!」


ふふっと笑いながら先に切ってしまおうとナイフを取り出した。


『特別に紫原君のだけみんなより大きめに切るね』

「まじて!?」

『頑張ったご褒美ね。みんなには内緒だよ?』

「うん!」


ここまで来ると本当に親子にしか見えなくなった午後3時過ぎのこと。





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チーズケーキとは言ったけどちょっと作り方わからないや…。

サブタイトルが「お菓子がないなら作ればいいじゃない」でした。




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