買い物
未だアフロの黄瀬君に別の意味で注目を浴び続けながら買い物は始まった。
近くに大きな家具屋があり、そこで足らずを買おうと言うことになった。
『にしてもよくこんな大きいとこ見つけたね。普段通らない道だよ、ここ』
「テツヤが偶然こっちに来る時に見つけたんだ」
「趣味は人間観察です」
『人間じゃなくて建物だけど。キリッと言うな』
「テツペロ☆」
『ものすごい棒読みですね』
「それほどでも」
それなりに盛り上がってる(?)こっちとは別に後ろの大きい組は少し揉めている…のかな?
ぎゃあぎゃあと騒がしい。
…そういえば。
『なんで後ろとの距離あるの』
ぎゃあぎゃあ騒がしいとは言ったが会話まで聞こえない。
それなりに離れててただの雑音くらいだ。
体を180度回転させて後ろの人たちの様子を見る。
後ろの方にいるのは黄瀬君、青峰君、緑間君、紫原君。見事に背の大きい人たちだけ後ろなのだ。どういうことなの。
そして見事に背の小さい組が私の横にいるわけだが…何かしたのだろうか。
そりゃ近くにいたら小さいって思われるけど。
「まず何を買いましょうか」
『私この階で必要なものはないし…。赤司君は?』
「特にないな」
『…あ、お豆腐用の冷蔵庫買いません?』
赤司君を見てなぜか一番上の段にびっしりとある豆腐を思い出した。
正直一番上を案だけ占領してると邪魔だし、ならいっそのこと豆腐専用の冷蔵庫とか作ってみたらどうかな。そんなの聞いたことないけど、小さめのやつを使えば何とかなると思うし。
私の案に賛成してくれる二人。
『というかそろそろ合流しましょうよ』
「仕方ないな…」
「あ、僕行ってきます」
『ではその間に冷蔵庫選びましょうか』
「ああ」
50mは離れてるカラフルな巨人たちの元へ行く黒子君。
黒子君たちが戻ってくるまでにできるだけ選び終わってるか、候補をいくつか出すかを決めようと赤司君に伝える。
二つ返事で冷蔵の売り場をぐるぐる回ってみたり。
「これなんてどうだ?」
後ろを振り向くとそこには家にある冷蔵庫より半分ほどの小さな冷蔵庫があった。
これくらいなら置けるなと、一度中を覗いてからそれに決まった。
横にあるカードを一枚とったところに黒子君含め後ろにいた緑間君たちが合流。
「なに買うの〜?」と紫原君に聞かれ『小さな冷蔵庫です』と答えた。
『ところで必要な物はみんなあるの?』
「特にねーな」
「僕はもう一つ本棚ほしいです」
『本棚は2階だから後で行きましょう。他は?』
「卯月」
『何ですか、緑間君』
「洗濯機は買わなくていいのか?」
『あ、忘れてた』
全くお前は…少しは自分のことも覚えておけなどちょっとしたお説教を背に足を動かしていく。確かこの近くに洗濯機売り場あったはず。あっちは男盧六人だけど私は一人だし、なら小さめでいいやということで、乾燥機能付きの独り暮らしっぽい洗濯機を購入することに。案外すぐに決まりました。
「あと何が必要ッスかね?」
「卯月さんドライヤーとかは…」
『持ってきましたよ。あとそれは多分上』
「お菓子〜」
「それは地下だ、敦」
「あ、ザリガニの餌ねーかな」
「そんなもんないのだよ」
『いやあるけど。確かスルメとかじゃない?』
「というか青峰君、ザリガニは素手でしたよね」
「そーだけど飯ねーと生きてけねーだろ」
「まずザリガニはどうでもいいッス!」
「そうだな」
「だね〜」
「本当ですね」
「涼太にしてはいいこと言うじゃないか」
「え、ちょ、それどういう意味ッスか!?」
『…ふふ』
この階にはもう用はないので次の階へと向かう。お会計に必要なカードも忘れずに。
◇ ◇ ◇
『結構買うね…お金大丈夫?』
「大丈夫だ。予算内に入ってる」
「本当に赤司君が払うんですか?ここはそれぞれ自分の分を出しあった方が…」
「いーじゃんかテツ。赤司が全部買ってくれんだろ?ここは赤司に任せろって」
「…青峰君の場合お金がないからそういうんでしょう…」
みんなそれぞれお目当てのものを持ち、会計はすべて赤司君に任せ、荷物持ちは赤司君と残り、残りは外で待機。私は外で待機組。でもさすがに全部は直接持っては帰れないので一部は宅配に頼むしかない。重いものとか紫原君たち死んじゃう。多すぎて。
まだどちらかと言えば冬の方に入る外の気温。近くにあった自販機で温かいココアを買い冷えた手を温める。
温かいなぁ…。
『あ、そうだ』
「どうしました?」
つい声が出てしまった私に声をかけてくれた黒子君。
早速黒子君に今思い付いたことをこっそり告げてみる。全て言い終えた私は『どうかな?』と黒子君の気持ちが知りたくて顔を覗く。すると黒子君はふわっと笑い「いいですね、それ」と私の手を取り再び店の中へ。
それを見ていた他の待機組が慌てて着いてくるをの後ろで感じながらまだいるであろう赤司君の元へ。
レジは出口の近くにあり、一分足らずで赤司君たちの下についた。
会計が終わった赤司君は私たちを見るなり「どうした?」と少し首を傾げた。
「どうした?買い忘れか?」
「いえ、卯月さんがとても良い案をくれたんです」
チラッと視線を受け、自分から言ってくださいと言われてるみたいな気分。
実際そうなんだろうけど。
『さっき思い付いたんだけど、みんなでそれぞれ自分の色のマグカップを買うってのはどうかな?恋人とかそんなのじゃないけど、そんな感じに』
「なるほど…」
ふむ、と顎に手を当て考える素振りを見せる赤司君。
どうかなどうかなとそわそわしてると後ろから重みが…。
「オレはさんせーッスよ!」
なんか家族みたいで!とニコニコと本当に幸せそうな笑顔で言うものだから釣られて私も笑顔になる。
その様子を一部始終見てた緑間君が赤司君に何か言ってるのを視界の端で捉えながら後ろにいる黄瀬君に笑い掛ける。
『緑間君はどう?』
「いつかラッキーアイテムになるかもしれんから買ってもいいのだよ」
『そうだね』
相変わらずツンデレすぎてどうしようかと考えてるときに漸く赤司君が口を開いた。
「いいんじゃないか」
随分と短い返事だったけど、表情は柔らかく黄瀬君と同じように笑っていた。
じゃあ決まりと再び上の階へ。
荷物持ちは紫原君と青峰君。ずっと持ってるのはさすがに疲れるだろうと緑間君と黄瀬君も荷物持ちに回し、限界がきたら交代しろとの事。
カップはそれぞれ自分の色限定。形はなるべくお揃いにしたい。
そう言うと「それは難しいだろうな。作らせるか?」と携帯を取り出しながら言う赤司君に数人がやめてと首を振る。
ちなみに私も首を振った一人である。
手分けして辺りをうろうろしてせめて6色あるやつないかなと探していると青峰君がドヤ顔で「見つけた!」と言いそちらを指さした。
そこには10色のマグカップが綺麗に並べられていた。
「これでいいか?卯月。ちゃんと形も柄もお揃いだぜ」
『す、すごい…!』
「さすが僕の元・光…!」
「おい元って言うな、元って」
「すいません、冗談です」
「なかなか悪くないのだよ」
「あ、さっちんの色もあるよ」
『え。あ、ほんとだ。一緒に買おうか』
「はい。桃と青と黒は取りましたよ」
「赤と紫と緑も取った」
「黄色取ったッス!ってなんでみんな一緒に持ってるんスか!?」
「黄瀬うるさいのだよ」
「ひどっ!!」
「後は卯月さんだけですよ」
『えっ!?…あ、うん、ちょっと待って』
自分の色って何色だろう…。みんなが話してる中ずっと悩んでた。
自分から言いだしたことなのに私が遅くてどうする…!
悩んでいる色はオレンジか白。それくらいしか思いつかないし、それ以外何がある。
ああでもそういえば…とある人物たちが浮かびチラリと黒子君、緑間君と見る。思い浮かぶのは横に立っていた人たち。
もう一度マグカップに目を移し決めたとマグカップを取る。それを自然と横から取って一緒に持っちゃう黒子君は本当に紳士だと思う。
「優ならもう一つの方でもよかったんじゃないか?」
『うーん、まあね。でもそれは…あの人たちの色だから』
「?」
わからないと首を傾げる赤司君にわからなくていいよと笑う。
またお会計を済ませ、今度こそ家へと帰る。帰り道、少し遠いがまた別のストバスのコートが見え、ここにもあるんだとその場所を記憶する。
『お昼どうしよっか』
「外で食べますか?」
「あまり金を使うようなことはしたくないな」
「さっき思いきり使っただろう」
「マジバー…はなかったな」
「でもこんなに荷物持ってたら結構注目浴びるッスよ」
「卯月ちんのご飯が食べたいー」
『えっ、私の?』
「材料ありましたっけ」
「そこそこ」
「卯月ちんオムライス作れる〜?」
『一応…、食べたいの?』
「うん!」
『じゃあ作るね。みんなもそれでいい?』
「おー」
「卯月っちのオムライスー!」
わいわいと賑やかな帰り道。
中学生に戻ったみたいでなんだかくすぐったい。
「行くよ、優」
手を引かれて歩く道は思ったよりも短かった。
選んだ色は白でした。
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紫原君と緑間君をもっと入れてあげたいです…。
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