10萬打御礼 | ナノ
 #恋のテンキヨホウ

「よお。おはよ」

「ひゃ!わ、お、おはよう、宮地くん!」

「ぶっ、どもりすぎだろ」

そんなに驚いたのかよ、と手持ち御無沙汰なのか頭をぽんぽんと二回叩いてくる。やめて、縮む!と叫ぶと縮まねーよと正論を頂きぐうの音も出ない。そうだけど、そうなんだけど…!と内心思いながら同時に近い!と葛藤していた。本当だったら、いや私がもう少し勇気さえあれば、屁理屈と言われようとあの手この手は言いそうなんだけど。それすら出来ないくらい今の私の心拍数はやばいのです。相手に聞こえてたらどうしよう…と思うくらいには酷い。

「ところで数学の課題やってきたか?」

「え?いや、あとちょっと…」

「へえ、よく出来たな。褒美に残りは見せてやろうか?」

「いいの!?…ってちょっと待って、褒美って。褒美って」

「なんだよ見ないのか?」

「いいえ!見せ…てください」

「おう。…ふっ」

「なんで笑うの」

耐えきれないと言った感じで口元から息が零れる宮地くん。今のどこに笑える要素があったのか…解せぬ。と思いながらもじっとその顔を見る。本当に面白そうに笑う、目が合わなければ問題ない。多分。こちらの視線に気付いたのか一瞬だけ目が合うとすぐに逸らされ顔を少し背けて笑う事を続ける宮地くん。そんなに見られるの嫌ですかそうですか。目さえ合わなければもうちょっと見れたはず。けど目が合った瞬間動けなかったからもうそれでいいです。あの時の心臓の動きったら…。

そうこう言うのも私は宮地くんが好きです。いつから好きだとか、どこが好きなの?と聞かれても、すぐに答えられる自信がないのであしからず。気付いたら好きだったとか、誰も納得はできないでしょ。
普段からちょこっと絡む程度の仲。好きの一言が素直に伝えられたらいいのに。でも伝えたらこの仲はどうなるだろう。どうなるか分からなくて、怖くていう勇気もないや。逆を言えば言わなきゃこの関係は崩れないわけだし。だったらこのままでも…。なんて。恋人にならなくてもいいからもう一歩進んでみたいなあ、なんて。

こんな私だけど人を好きになったことは何度もあった。
でもね、宮地くんを好きになって結構経つけど、未だに好きだしこの気持ちは薄れる気もしない。それどころかどんどん膨れ上がって、その内この気持ちが胸から零れて、貴方に知られてしまうんじゃないだろうかと思うの。不安で怖い、けど同時に知ってほしい、気づいてほしいと思う自分もいる。

零れ溢れて、手遅れになる前にこの気持ちを宮地くんに伝えておきたい。でも…唯でさえ本人を目の前にすると緊張と心拍数から頭が真っ白になって何も考えられないし、うまく言葉も言えてるかどうかあやふやで…。そんなんで、この気持ちをちゃんと伝えられるかどうかも分からない。友達に相談しても「言っちゃえー」の一言だし。相談乗る気ないでしょ、もう。

「そういえば来週テストだってさ。お前ちゃんと予習できてんの?」

「えっ!ももももちろん!」

「してねーな」

「あーはは、仰る通りです…」

「しゃーねぇ。今度の土日空いてるか?なんなら勉強見てやるけど」

「本当…!?何か見返りがありそうな気がするけど」

「へえ。みょうじしてはいい読みだな」

「ん!?褒められてる…?」

「褒めてる褒めてる」

笑いながらまたも頭をぽんぽんと撫で…られてるのか微妙なところだが、何れにせよ笑ってるから全部許してしまうのは惚れた弱みか。ただちょっと馬鹿にされてる感じは許せそうにない。…宮地くん、頭ぽんぽんするの好きだよね。そこで私は閃いた。いつもしてやられてばかりだ、ならば!

「宮地くん、ちょっとしゃがんで」

「はぁ?なに」

「たった一言でこの警戒のされよう。私なにかした!?」

「んな怒んなって。ほら」

「怒ってないよ!驚いてる…わ」

しずしずとした動作で少し膝を折り、顔の距離が近く…って顔近!すっごい近くに宮地くんの顔がある!髪のせいもあるけどきらきらしてるのが間近で眩しいけど近くで見るとかっこいいですね!
まさかこんなことになるとは全く考えてなかった。わああどうしよう…!なんて私の動揺なんて宮地くんは気づいてないよね。いいの、そのまま気づかないで、どうか。そうだそうだ、顔が熱くなる前にやってしまわないと…!

「宮地くんいつもありがとう!」

「……で、この手はなんだ」

「褒めてる!っと、じゃあね!!」

「は?おい!逃げるな!」

赤くなる前に自分が耐えきれる訳もなかった。ただちょっと、宮地くんの頭をぽんぽんして褒めてあげようとしただけなのに…。恥ずかしくって、2秒も持たなかった。いつも宮地くんは平気そうにやるから大丈夫なんだろうと思ったけど、そんなことはなかった。なんとも思ってないから出来ちゃうのかな…。あ、少し切なくなってきた。

実はもう帰宅途中でした。夕日に照らされてる宮地くんの髪って朝以上にきらきらしてて…時々眩しい。悪く言うと反射してる。…いつまでもうじうじしてなんかいられない。私決めた。明日、宮地くんに好きって言おう!あのねあのね、宮地くん優しいけどいつだって真剣だし頑張ってるから好きになったんだよって伝える。明日から隣にいれなくてもいいから、せめて気持ちだけでも伝えておきたい。私が後悔する前に。



そう思ったのが昨日の帰宅直後の話です。緊張のせいか全然眠れなかったし、正確には二時間しか寝れなかったけど…!朝の日差しがこんなにも眩しいとは…いいお天気です。

「お、みょうじ」

「ん?わあっ宮地くん…!?」

「よ、おはよーさん」

「お、おおおはよう…!」

「今日もどもりすぎだろ」

昨日の今日でまさかこんなところで会うとは思わなかった。だって昨日この辺りで宮地くんをほ、褒めて、恥ずかしさに耐えきれなくなった私が逃げた場所だもん…!
にしても。こんな場所で宮地くんに会うのは珍しい。いつもは朝練終わりの宮地くんと下駄箱でたまに鉢合わせしたりするくらいだし…そう考えるとここで会うのは本当に珍しい事なのだ。

「宮地くん、朝練は?」

「今日は休み」

「あ、そうですか」

朝練にも休みってあるんだ。そうなんだ、知らなかった。だから遅めに登校して今偶然会えちゃった…?昨日の自分なら「運命!?」ってちょっとふざけれたかもしれないけど今はそのふざける余裕すらない。だってもうこんなにどきどきしてる。今日の私おかしくないよね…?
運命じゃないけどお告げにも思えた。女は度胸、って言うでしょ。

「あの、さ――」

ムードもロマンチックとか全然ないけど言うと決めたら、やると決めたら早い方がいい。だってそうしないときっとこのタイミングを逃しちゃう!明日になったらなんでここで言ったんだろうって呆れて笑うかもしれない。
たったの二文字を伝えるのがこんなにも辛いだなんて思わなかった。答えは気になるけど怖いから聞きたくない。一歩分くらい足をずらした。

「――俺も、好きだ。だからその…泣くな」

顔を上げたと同時に頬に一筋の涙が流れた。あれ、私泣いてた?はは、恥ずかしい…。泣き止もうと試みるが全く止まる気配もなし、それどころか一向に溢れるばかりで、それどころか悲しいとか辛いんじゃなくて嬉しくて泣いていることに気付いた。宮地くんが、好き…?

「すき?」

「…ああ」

「わたしを?」

「おう」

「ほんと?」

「みょうじのくせに疑うのか?」

「…へへっ、嬉しい」

「そーかよ」

この時涙目でよく見えなかったけど、宮地くんが見た事もない顔で私の目元を拭っていてくれたような気がする。優しくて頑張り屋さんで、いつだって真剣な宮地くん。それ見てたら涙なんてどうでもよくなって自然と私も笑っていた。
今日の事は、きっと一生の思い出に残ると思うの!って言ったら何言ってんだ殴るぞと言われた。殴る…?何それ初めて聞いた!とまた笑ってしまった。




「…とまあそれから付き合いだしたんだけど、何か?」

「ちょ!なんで怒ってるんすか!?」

「思い出したら恥ずかしくなってきたのよ察しろ轢くわよ…」

「あ、今ので大体分かりましたリア充爆発しろっす」




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リクエスト内容「whiteeeenさんの曲で恋のテンキヨホウ」でした。リクエストありがとうございます。
大変遅くなったこと申し訳ありませんでした…。中々書かないキャラなので途中書いてて恥ずかしくなりましたがそれを上回るくらい超楽しかったです。ありがとうございます。

ちょこっと裏設定を少し。宮地くん、夢主共に中学生をイメージし、中学生の時に告白、そして高校へと。最後は高3な二人と「馴れ初め教えてくださいよー!」と休憩時間に聞き出す後輩Tくんの図です。Tくんは完全に友情出演です。書いてませんがこの後彼氏さんが来て恐らく制裁を下すかと…。今も仲睦まじいお二人となっております。

長くなってしまいましたが、リクエストありがとうございました。
これからもよろしくお願いします!


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