10萬打御礼 | ナノ
 #赤司寄り

洛山メンバーと教室の探索中、黒板の横に設置していたロッカーから何の前触れもなく化け物が現れ、そこで行われていた探索は中断、化け物の位置とは反対の扉から急いで逃げ、廊下を走り、追ってきたので走りまくっていたのだが、漸く撒けたと思ったその時にそれまでの足音に引き寄せられたか四つん這いと片腕のない化け物が同時に現れ、そこでUターン、そして再び化け物二体との鬼ごっこが始まったわけだが。

どうしてこうなった。

「…大丈夫かい?」

「ぜ、ぜんぜん…っ」

化け物二体との鬼ごっこになら、勝つには勝った。この通り逃げ切ってやった。が、この状況はどういうことだ…。ちょっと待ってくれ状況を整理したい。

まず最初の化け物との鬼ごっこの時点で少しきつかった。なんせしつこ過ぎて階段を二回程上り下りしたと思う。そして撒いたと一息ついたところで前方から化け物二体登場。まともに休めることなく第二ラウンドの開始。来た道を戻り、さっきまでの教訓を生かし、最短で撒こうと走りながら出た結論だ。この道を曲がる、という時にあの四つん這い野郎はあろうことか飛び掛かってきたのだ。それに一早く気付いた赤司が私を腕を掴んで引っ張り、これを避けた。

うんうん、ここまではいい。

チームは二つに分かれ、間に四つん這い、後ろに片腕なしの化け物。四つん這い野郎はこちらに襲い掛かり、片腕野郎はもう一つの方へ襲い掛かった。…うん、見えたな。
ここで撒けたら体育館に戻れと叫んだ赤司はそのまま私の腕を掴んだまま、四つん這い野郎から逃げた。そして向こうもそれに応え、別々の道へと走って行った。
どうしてこうなったか?もう分かりきってるじゃないか。はあ、何から言おう…。

「ふう…。とりあえず赤司…ごめん、私のせいで別行動になってしまって…」

「高尾さんのせいではない。それより怪我はないか?」

「平気。赤司は?」

「僕も大丈夫だよ」

別行動となってしまった挙句、私は途中から息切れが酷く、見兼ねた赤司が近くの教室に入り、こうして事なきを得た。ぜーぜー言う私と軽く肩を動かすだけの赤司。おかしいな、私去年までは陸上部にいたのに。体力の差が明だ。私体力落ちたな。約一年走ってないとこんな落ちるものなの?うわなんかヘコむ…。そんな、だってさ…いや言い訳を考えるのはやめておこう。
漸く息も整えれたところでお互いの安否と、次の動きを考える。赤司…何から何までゴメン。

「体育館に戻るには戻るが、僕としたことがここがどこの教室なのか確認するのを忘れてしまってね」

赤司でもミスってやるんだ…。意外だ、そう思いながら話を聞く。

「君が確認しに行ってくれるかい?」

「なんで!?」

「冗談だよ」

嘘だ目が冗談じゃなかった。突然なんなんだ…。あれか、心の中でも読んだか…?赤司マジでやめて心臓に悪い。
くすくす笑う赤司を凝視していたら突然机がガタンと揺れた。それは皮肉にも私の視界に入る机で、音の割に倒れるんじゃないかと思うくらい動いたのが見えた。
揺れと動きに肩が跳ねたのが分かったが、どうしよう。音に反応して振り返っていた赤司がこちらをちらりと盗み見る。

「どの机だ」

「左から三番目、前から三番目」

「…そこにいろ」

言うな否や赤司は揺れた机を確認しに行く。怖いもの知らずかな。慎重かつ警戒しながら例の机の元へ行き、どこに持ってたかいつ取ったのか分からない鋏を取り出す。いつゲットしたっけ。
そしてゆっくりと覗く。……ん?

「……」

「…赤司?」

気のせいでなければ今ぐちゅって聞こえた。なんの音だ。そして錯覚でなければ赤司の腕が一瞬動いたような。赤司、お前一体何をした…?
なんでもない、そう言った手前で今度は廊下から物音がする。ごく小さな音だが廊下だから響いて音がここまで届いてきた。お互い顔を見合わせ二人して教室の扉に耳を寄せ音の正体を探る。少ししてまた音が鳴る。音が鳴ってからのこの間はなんだ。二度、三度聞こえてきてもしやと一つの考えが過る。これは、もしや、

「教室を開けてる?」

「恐らくな」

やだ赤司分かってたの?なら私考える必要ないじゃん。声に出しちゃったよ恥ずかしい。

「ならこの間は何?」

「…恐らく、中を見ているんじゃないか」

「え」

そこまで話してガラリ、とここから少し離れた教室が開けられた。そして数秒してまた同じところからピシャリ。どうやら今の音は閉めた音らしい。そしてまたガラリ。なるほど、赤司の推測通り中を見て回っているようだ。律儀にも閉めて回っているらしい。真面目なのかアホなのか。しかしこうも暢気に考えている暇はない。奴はゆっくりと、確実に私たちのいる教室にも近づいてきている。なんて考えていたらとても近いところからガラリと開けられた音が。

「わ、赤司?」

「静かに」

突然引っ張られ驚き声も出てしまったが多分大丈夫。そんなに声はでかくなかった。引っ張られるまま大人しく着いて行くとすぐ近くにあった教卓の下に押し込められ、続いて赤司も入り、私の前に座ったかと思えば両腕を伸ばし、私の体を包み込むように赤司の足の間に押し込まれ…いや直訳すると私を抱きしめる形で落ち着いた。……ん!?

「あ、赤司、これは一体…」

「隠れているんだ、分かるだろう?」

「なんでこの体勢…?いや鍵かけておけばいいんじゃないの?」

「鍵をかけてしまっては余計に僕たちがここにいることが分かってしまう。奴は両方の扉を開けてみて回っているようだからね」

嘘だろ、とは声に出ず、というか出せずにいた。今、なんか聞こえて、


ガラッ


すぐ近く、いや明らかここの教室の後ろの扉が開けられた。揺れなかった肩を誰か褒めてほしい。少し油断していた、この馬鹿。驚いて声が出ないよう、念のため口を手で押さえておく。何かの拍子で声が出てしまってはそこでゲームオーバーだ。
そこで扉は一旦閉められ、まず一回目。もう一度、と身構えていると空いている掌を赤司が確認するように触れてきた。
顔を上げるようとするが、赤司の顔を認識する前に前の扉が開けられる。内心びっくりしたが、大丈夫肩は揺れてない。息を潜め、存在を殺しながら耳を澄ませているとフーフーという聞く限り荒い息遣いが聞こえてきた。

(怒ってるのかな?)

すっ呆けてみるが駄目だ笑えない。何に怒ってるんだよ。なんなんだよ、新しい化け物か?…だとしたら厄介だ。こんなのが徘徊してるんじゃ、碌に教室に隠れることはできないし、しかも中を覗かれるし、最悪だな。
なんて考えていたら抱きしめる腕に力が入る。と同時にピシャリと漸く扉が閉められ一息。ぱた、という音が一回聞こえてから隣の教室を開けた。ただまあ近いからまだここから動けないんだけど。いやこっちも抱きしめられてるから動けないけど。

「赤司、そろそろ出よう」

「…そうだな」

どこか呆れた顔しながらも腕の中から解放され教卓の下から出た。続けて赤司も出てきた。なんでやってきた君がそんな顔するのかな。少しとはいえ固まった体を解すため腕を上に向け伸びているとどこかでぽきっと音がした。うわあ。

「高尾さん、僕が言うのもなんだけど、君はもう少し警戒心を持った方がいい」

「えぇ?警戒ならしてるけど」

「そうじゃない」

「ん?…ああ、さっき?いや意識する余裕もないわ」

一瞬何のことかと思ったよ…。警戒、警戒ねぇ…。そんなの言ってたらこの先探索とかできないし、むしろ何もできなくなるんじゃ…。余裕がなかったのも本当だし。なにより考えたくも、ないかな。
そんな私の思いなのか考えなのか(8割後者だな)が見透かされたのか赤司がくすりと笑う。くっそ笑いやがった。今それどころじゃないしー。

「さて向こうの様子見を兼ねて、ここの探索を少ししていくか」

「…そうだね」

あの化け物が離れるまでの時間潰し。特に何か見つかるという訳でもなく、化け物が遠ざかったというのもあって教室を出た。どうやらここは案外体育館に近い教室だったらしい。

特に何かに遭遇するでもなく無事に体育館に着くと謎のタックルを食らった。あれデジャヴ。誰なのか分かっているので頭を撫でながら周りを見渡すと他の洛山の面々がいた。どうやら先に戻ってきていたらしい。つまり先に私らの近状を報告済みと考えれば彼女がこうなるのも分かる、と一人納得しているとずんずんとこちらに近寄ってくる気配。そちらに目を向けると我らがお兄様、和成が少し怖いお顔になってそこにいた。それに気付いたのかタックルして抱きついていた彼女は振り返り、和成を見るなり苦笑いを残してこの場を去ってしまった。

和成は去って行った彼女を一瞥するなり、すぐさま私の顔を確認するようにじろじろ見てくる。なんだと思って怪訝に見つめていればちょっと痛いくらいに肩を掴まれる。

「ちょ、なに」

「なまえ、赤司と一緒だってって聞いてたけど大丈夫か?怪我は?何もされてないな!?」

「和成落ち着け。大丈夫だし、怪我もないし、何もされては……」

そこであの教室でのことが思い起こされる。教卓の下で赤司に抱きしめられ、視界はネクタイしか見えなくて耳元で聞こえる赤司の息遣いとふわりと匂った赤司の匂い。背中に回された力強い腕と、一度確かめるように触れた手、とか。
待ってこれなんかすごく変態臭い。違う、違うから!

急に黙った私に何を思ったのか慌てて口を開いたころには和成は「赤司ーー!!」と血相を変えて赤司の元へと走って行った。一人残されてしまった私は、この無駄に熱い頬を何とかしようとそっと体育館の隅へと隠れた。



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リクエスト内容「赤司くんメインでラブがあれば」でした。リクエストありがとうございます。大変遅くなり申し訳ありません。

当初の予定としてましては抱きつく、のはありましたがトラウマ思い出して震える妹ちゃんに赤司がおまじないと称してでこちゅーする予定でした。(もちろん間違った知識として頭に入ってます)
しようかと思ってたんですが、そもそもここの赤司くんは間違った知識を入れてるにしてもやってはくれないだろうなと。あとメモの段階が酷かったので破棄に。代わりに出るときにちょっと当たってかなんかででこちゅー?とも思いましたがこちらも却下。フラグはバキバキに折れていきました。

ただ一つ最初の予定通り教卓の下に隠れて過ごすのと、最後何かを察した兄様が「赤司ーー!!」と叫びながら向かっていくところが書けたので満足です。

ありす様、リクエストありがとうございました。いつもありがとうございます。
これからもよろしくお願いします!

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