10萬打御礼 | ナノ
 #秀徳と!

「あの、桃井さん?そんなに引っ付かれると暖かいんですが動きずらいです」

「……」

「(ダメだ激おこ)」

桃井が引っ付き虫の如く腕に絡みつき、一向に離れようとしないのには理由がある。確証はないけど心当たりならある。
先程桐皇さんと探索に行った時化け物に出くわしてしまい、色々あって私一人だけになってしまって、遠回りしながらも体育館に戻って来た。私が戻って来た時には桐皇さんは既に戻って来ていて、これから第二を出そうとしていたらしく秀徳さんが扉手前にいた。まあ私の足があればあの程度の化け物、逃げ切れます!と冗談交じりに言ったら桃井にタックルされたのだ。解せぬ。更に受けきれなくて尻もちついてお尻が痛かった。

それからというもの、腕に絡みついたまま報告し、今は解散し休憩を挟んで陽泉さんと海常さんが探索に行ってる。一応桐皇さんが何故私が一人になったかっていう理由は、報告の場できちんと説明してくれたんだけど、尚もこの状態でちょっと困ってる。暖かいけど。
止むを得なかった、あの状況は(遠い目)

「桃井さーん…」

「…怖かった」

「え?」

「なまえちゃんが一人になったって聞いて、いなくなっちゃうじゃないかって思うと怖かった。せっかくお話しできたのに。ちゃんと状況は理解してるつもり。でも…もっと他に化け物を退ける方法はあったんじゃないかって思うの。
だからなまえちゃんが戻って来てくれてすごく安心した…」

そう語る桃井に私は何も言えなかった。きっとごめんねとか、ありがとうとか言えばいいと思うし、それが正解なんだろけど、今の私には言えなかった。強いて言うなら桃井がそんな優しいこと言ってくれて感動してる。それだけだ。言えない代わりに抱きしめるという選択をした。この子本当にいい子。ここから帰れたら仲良くしたい、かもしれない。出来るかの不安がちょっとあるけど。

ふわふわでさらさらの髪を撫でてると「本当は戻ってきたら文句言おうと思ってたんだけどなー…」と小さく呟く桃井の声が聞こえた。やだ文句って、何言われそうになったんだろ。聞いてみたいけど怖いので、この呟きは聞かなかったことにした。そうするしかなかったのだ…。

「お二人さん、良い雰囲気のところ申し訳ないんだけどいい?」

「あ、高尾くん?良い雰囲気って、そ、そんなんじゃないよ」

「可愛い女の子抱きしめてる私が羨ましいか?羨ましいでしょ?ふふん」

「なまえちゃん…!!」

「はいはい、桃井さんちょっとごめんねーなまえ借りるわー」

「え、なに?」

いつの間にか傍らまで来ていた和成はゆるーく腕の拘束、て言い方はあれだけど桃井の腕を解きそのまま腕を引かれどこかに連行されてった。桃井も桃井で解かれた腕そのままに何も言ってこなかった。…あれ?和成が解いてくれればいつまでも捕まってることなかったんじゃね?と私は密かに思った。あっさっきの軽くあしらわれたんですけど…!酷いよ!そこは乗ってよ!
ていうかどこに連れて行かれてるんです?ある程度予測はしてますけど。

「連れてきました!」

「来たか。まあ座れ」

「あ、はい。どもです」

なんと!予想通りだ!秀徳のところに来てしまった!皆さん先程ぶりです!ていうかなんで連れて来られたんだ。はっ!まさか桃井同様何か言われるのか…!?少し身構えながら腰を下ろした。傍から見たらびくびくしてたかもしれない。ぷっ、と誰かが噴いた。

「んな身構えんなって。別にさっきのことでとやかく言うつもりじゃねーから」

「あれは他を逃がすためにやったんだろう?立派な行動力だと俺は思うぞ」

「ちょっと危険だがよく戻って来た。偉いぞー」

「…あ、ありがとうございます」

思ってたのと全然違った…。拍子抜けっていうか、あれ?っていうか…あ、今絶対顔間抜けだ。やばいやばい。何か言われたけどまさか褒められるとは…しかも頭ぽんぽんもされたんですけど…!ひえぇ…!なんかすっげー久しぶりにされた気がする…!やだ照れる。

「まだ妹の方が可愛げはあるな」

「え!ちょ宮地さん!それ俺の前で言っちゃいます!?俺だって可愛い後輩じゃないっすか!ね、真ちゃん!」

「俺に振るな」

照れていられる暇なんてなかった。なんだろうこの秀徳漫才感。秀徳はコントでもやってるのか…というくらいにいい連携だ。褒めてる。このやりとりで普段和成がどのような動きしてるかなんとなく把握した。まあ和成らしいよね、通常運転だね!みたいな。
叱られるのかと思ったけどそうじゃないと。みんな仕方ないだのああ…って言ってくれてたから裏でこっそり危険だとうるさい先輩みたく言われるのかと思った。何か言うつもりじゃないならなんで呼ばれたんだろ。もしかして知らないとこで何かやらかしてた?ないか。それならだったら和成だろ。

「お前失礼なこと考えてない?」

「いーえ」

「ちなみにお前を呼んだのは、一回話してみたいって真ちゃんが!」

「俺じゃないのだよ!デタラメを言うな!」

「またまたー」

「高尾!!」

普段から一緒にいることが多いらしい緑間とはこうもふざけ合えるほどに仲が良いようだ。一見堅物そうなのに全力で否定してる。和成に対しては苦労人と見た。でも迷惑そうでないあたりほっとする。和成だってそこはちゃんとわかってると思うから行けるんだろうね。
とりあえず秀徳さんが私と話したいというのは分かった。和成というキャラがあるから色々と気になるんだろうな、多分。…自惚れじゃないことを祈る。

そして、横にいる目が語る。悪ノリしろ、と。私も目で応える。アンタねぇ…仮にも相棒だろうが。ふざけるのも大概にしろ。だがしかしおもしろいじゃない。合点承知!その期待に応えましょう!

「私も緑間と話してみたかったんだよ」

「!?」

「でも緑間はそうじゃなかったか…」

「な!?いや、そ、そんなこと、は……ない、のだよ」

なまえ の 明らかな落ち込み!
こうか は ばつぐんだ!

最後の方小さくなっちゃってほとんど聞こえてないけど、緑間とは隣でしたからばっちり聞こえました。ここで切り上げるかすっ呆けるか悩む。にやける心配はないので和成みたいに分かってるのににやにやする心配はない。ただでさえ彼の中で私の印象は悪いはずなのにこれ以上悪くするのもどうかと思う。
…本音としては印象悪くていいからもっと悪ノリしたい。緑間楽しい。とても真面目で、真っ直ぐなんだろう。じゃなきゃこんなどもらないかとwww和成が楽しそうにからかう理由が少し分かったかもしれないこの瞬間。

最終的にはこれ以上はさすがにやめておこうという結論に辿り着いた。ツンデレさんの貴重なデレを無駄にしたくない。ちなみに続けようと思ったら「え、何?聞こえない、もう一回」って言うつもりだった。もう一回聞きたくなるよそりゃ。この下りには「よかった」と言って終わらせようか。

「話を戻しますけど、私と話しても何もないですよ?」

和成ほどコミュ力なんてないし。

「そんなことはない。君には兄とは違う魅力があるだろ」

「みりょく」

大坪さん何言ってるんですか。木村さんも無言で頷かないでくださいそれただの口説き文句ですやめてください。そういう意味ではないのは分かってますけど…!ちょっとときめいちゃったぜ。なんでこの人さらっととんでもないことが言えるんだ。…おい隣笑い堪えてんのバレバレだからな。え、なに?顔が少し赤い?アンタの目が赤いだけじゃないかな。

「ところで、君のことは名前で呼んでもいいか?高尾だと被るからな」

「でしたら高尾妹呼びとか、妹の方なんてどうですか。中学の時、和成の周りではそう呼ばれてましたので」

「高尾妹…いやそれならなまえの方が呼びやすくね?」

「慣れてますので」

「慣れるな」

「ぶふっ!やっぱ先輩もそう思いますよね!っくwww」

「…笑うか喋るかどっちかにしたら?」

半分何言ってるか分からないよ…。それで君は結局笑う方を取るんですよね。それがいいと思うよ、一時的だけど黙ってくれるだろうし。また余計なこと言われたら困るんでね。
あとさり気なく名前で呼ぶとか…!宮地さんきっとモテる人だ。そうに違いない。…と、いうか、基本家族以外に名前呼びされるのは慣れてなくてちょっとこそばゆい…。たったあの一回だけでだよ?これは相当だって…。

「なまえ」

「え、はい」

「これからこう呼ぶからちゃんと返事しろよ」

「うぇ、はい。頑張って応えます」

「先輩!俺のことも和成って呼んでくださいよー!」

「はぁ?なんで」

「なんでって…――!」

あ、改めて呼ばれると慣れてない呼び方だから惑うわ、変な単語出るわで…和成の先輩さんにこれは失礼なんじゃないか?友好関係にヒビいったりしない?大丈夫?名前で呼ばれるって緊張するんだね…初めて知った。でもなんだかちょっと嬉しい。
宮地さんと和成の言い合いの傍らで、大坪さんと木村さんが苦笑いしてるのを横目に、緑間の方を見た。なんでってなんとなく。強いて言うなら全く会話に参加して来ないからやっぱどうでもいいんだろうなー。
普段どんな顔してこれ見てるの?な意味で。けど彼はばっちり見ていたようで、目が合った瞬間すぐさま逸らされた。こういうの前にもあったような…今回のはちょっと、あの、くると言いますか、テンション下がったといいますか…。あ、そうだ。

「緑間はさぁ」

「なんだ」

「和成の事どう思ってる?」

言っちゃった!聞いちゃった!ほぼ毎日のように和成から変わった友人、されど良き相棒として聞かされてたからいつか聞こうと思ってた。さすがに名前までは知らなかったけど、特徴と変わってるとこと、和成が大体傍にいれば分かった。覚えてはなかったけど、昔中学の時それっぽい名前も聞いた事あったしねー。
同じクラス、席も前と後ろ。四六時中ほぼ行動を共にしてるらしいからプレーに関して意思疎通は問題ないだろう。でも緑間個人、いつも一緒でうっとおしいとか思ってたりしないのかな。妹ちゃんはちょっと心配なんです。

「別に、問題はない」

「意味は通じてる?」

「無論だ。…確かに今は最初程うっとおしいとは思ってないのだよ。だが、近くにいることで相手の思考を読み取り、確実なパスが出来る。うっとおしい奴だが賢い奴なのだよ」

結局どっちだよ。
こうは言ってるけど、纏めると認めてはいるって事でいいのだろうか。和成のような翻訳機じゃないので緑間の言いたいことはあんまり分かんないけど。決して私が馬鹿というわけでもないが。…そっか。嫌ってはいないんだ、よかった。

「これからも良きパートナーとして扱き使ってやってね」

「…無論だ。高尾は下僕だからな」

「げ、下僕…っ」

「…お?珍しいな、二人が話してるとか。何話てんの?」

まさかの下僕扱いに吹きそうにもなるも、そのご本人が話に入ってきたことでマナーモードが発動した。さすがにこの状況で笑うのもおかしいなって思っての行動。結果腹筋が鍛えれたような気がした。和成にはなんでもないを貫き通したが、まさか本人に「君の話をしてたんだよ」とか絶対に言えない。言えるわけがない。悪いが本当に秘密ということでこの話は終わり。

「それで名前呼びはしてもらえそう?」

「完全拒否だってよ。ちぇー」

「ふっどんまい」



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リクエスト内容「夢主と、秀徳スタメンバーの番外編」でした。リクエストありがとうございます。
友情出演で桃井ちゃんにも最初の方だけ出てもらいました。

探索か待機中のするか迷いましたが待機中ということにしました。イメージ的にわちゃわちゃ……出来てますかね、微妙でしょうか。彼らが楽しければそれでいいような気もします。
大坪さんと木村さんいるにはいるんですけど台詞少ないからいないようにも見え…ますね。いい保護者風にしてみました。というか秀徳全体的に暖かいイメージあります。

これからもよろしくお願いします!

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