真実を欲して | ナノ


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『…大丈夫?』

「そう思うならこいつらを退けてくれ…」

『えー…あ』


キャッチどころか下敷きになってるギルバートに呆れていると突然空間が崩れる。自分のせいかと思ってる彼だがそれは違う。これは…下から何かが、
ギルバートの後ろに光る目が見えた。


「ギル!!」


彼はギルバートを庇おうと前に。黒い影は彼もろとも狙っていたが横から白い髪の男が蹴りを入れ間一髪セーフ。
それにしてもあれは何。あのシルエット誰かに似てる…。


「っとに…よく足掻く猫だな…!」


…猫?ということはチェシャ?チェシャなの?
ブレイク…と呼ばれた男は見事に着地し、あれをチェシャだと言った。
随分醜い姿になったね。彼女が知ったら怒るわよ、きっと。


「…………恐らくは望んで手に入れた人の姿だっただろうに。それを自ら捨てるとは、それ程にアヴィスの意志が大事なのか――…」


変わり果ててしまったチェシャをじっと見ていた。そして声を聞いた。苦しそうな、悲しそうなその声を。


君を悲しませるもの…、傷つけるもの…、ぜんぶ…ぜんぶチェシャが…!

「レイとチェシャは私の大切な人よ!」

『…え?』


一瞬だけあの子によく似た人影と黒猫が脳裏に浮かんだ。
それと気づかなかったがブレイクとやらの方から強い何かを感じる。必要ともいえるソレが…。分かれば苦労はしない。


「彼は我々をこの空間と道連れにするつもりですヨ!早く一角獣<エクエス>で脱出を!」


そう言って彼はチェシャに向かって飛んだ。何をするのか簡単に予測できる。
確かにチェシャは私には冷たい。なぜか。それでもあの子は彼女の…!


「待って…!」

『チェシャ!』


彼の制止も私の手も間に合わずブレイクによって頭を刺されたチェシャの体にヒビが入っていく。
その間にもこちらの足場が崩れていく。ギルバートと彼の間を引き裂くように地面が崩れ上がる。
私はそれどころではなかった。チェシャが、死んでしまう。


「おい!」

『!』


危うく落ちかけたところをあの子に腕を引っ張られ助かった。一応礼は言っておこう。


アリス…アリス…!
…チェシャの…大切…な…!


「おまえ…?」


視界の隅で黒い影が動いた。振り向くと黒い馬。一角獣…?
一角獣は私たちの周りに影を作り出す。おかしい、命令を聞かないなんて。彼は待てと言っているのに一切無視。なんて考えてる場合ではなさそうだ。
作り出された影の穴に私たちは落とされた。真っ逆さまに落ちていく。来た時とは真逆だなぁ。

私はここに大切な何かを置いてたのかもしれない。チェシャの家なんて初めて来たし、これでも。だから導かれるようにここまで来た。あとチェシャの顔を見に。それで彼女に報告しようと思って…。でも伝えにくいなぁ。また泣いちゃうよ。
…また…?

上を見ると光が見えた。…あれ、私は何を考えてたっけ。


眩しい光に目が眩む。同時にどこかに落ちた。その証拠に体中が痛い。
少ない砂埃が晴れた頃、アレの気配と胸を抑える彼が見えた。


「オズ…?」

「え…オスカー叔父さん!?」


彼の発した声に釣られ、顔を上げると数日前見た叔父様が、貴族らしい服を着て真っ青な顔でこちらを見ていた。まぁ分からなくもないけど…。ここはどこだろう。すごく見覚えがあるんだけど…。


『ちょ…』

「何者だ貴様は!!」


私の声を掻き消すほどの大きな怒声。
パンドラ公務員たちが公爵達の前に行く。さすがね。

今私と彼の後ろには力の封印が解けた黒うさぎ<ビーラビット>がいる。そりゃ警戒もするが、何か少し違う。

これもしかしなくともちょっと、いやかなりヤバい?





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