真実を欲して | ナノ


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あの日以来ずっと彼らを観察していた。その周りの人たちも。とりあえずはバレてなさそうで。一安心、と言ったところだろうか。それとそろそろあっちにも戻って接触した方がいいだろう。やること多いなー。

それからあって今は屋敷にいる。一応、その“いろいろ”も物陰に隠れてそっと見てきたけど。いろいろありすぎるだろと若干引いた。それが運命なんだろうか…。
次の日。従者と思われる青年が帽子が無いことに気付き、彼に聞いたところ失くしたらしい。確かあの時落してなかったか…手を上げた時に。
まだ寝ている彼らを無理やり連れて行き出て行った。向かった場所までは分からないが、後程聞こう。

今は彼らじゃなくて、周りの人たちの話を聞いてるんだけれども。


「は?街に向かった?こんな朝っぱらから?」

「ええ。なんでもオズ君が鴉の帽子を失くしたとこで…」


そう、これはつまりは盗み聞き。
街か。そうか…面倒だな…。ちょうど今、本当に面倒だ。
確かあの子はまだ首輪をしていなかったはず。
とにかく街へ向かうか。


「…では、ブレイクと一緒に行かれてはいかがですか?」

「私も後程街へ向かう予定なんデスヨ」


…これは早く行った方が良さそうだな。そう判断しその場から離れ、下に向かった。
急ぎ過ぎたか、後の会話なんてこれっぽっちも聞こえてなかった。


「…ただ、いい感じに獲物がエサにかかったものですから…」


一歩、また一歩、近づいてくる見えない足音にも気付けなかった。


「食い逃げされないように見張りに行くんですヨ」






―チリーン…






◇ ◇ ◇



『ねえ、“あの子”は今どこに?』

≪―…のこと?あの子なら家にいるわ≫

『…そう。ありがと』


嫌な予感しかしない。
こういう時当たってしまうから厄介だ。



◇ ◇ ◇




「オ…オレはあの帽子がいいんだー!!」


路地の方から聞こえた声に肩が跳ねる。い、いきなり大きな声出されると吃驚するよ、普通…。
だっ、と路地から黒い服の青年が出てきた。しかもちょうど曲がろうとしてたところから。つまりあそこにいるのか。
青年が見えなくなったところでそこを曲がる。…何度も頭に引っかかる。あの人何処かで見たことある気がする…。誰だっけ?まぁ…そのうち分かるだろ。
さて…行きますか。


『お兄さんたち、帽子探してるの?』

「え、うん。黒くてこんくらいの帽子」


平然と偶然を装って彼に話しかける。黒い服の青年が「あの帽子がいいんだー!!」っての聞いていたし。特におかしくはないだろう。
彼は普通にさっきの青年が言っていた帽子の色と形をジェスチャーで教えてくれた。
この街に来てすぐそんな帽子を見た気がするな。間違ってないといいけど。


『それならさっき見たよ。ただ違う人がかぶってたけど』

「ほんと!?」

『うん』


直後近くからざわざわと人が騒ぎ出した。なんだなんだとその路地から出る。
人の集まる中から先の青年の怒鳴り声が聞こえる。うーん…まさかね…。
人を避けながら集まる中心を覗く。
そこには先ほど言ってた帽子をかぶった男と黒い服の青年が言い合いをしていた。男は弟からもらったそうだが、多分落ちてたから兄ちゃんにあげる、とかそんなんじゃないかなと思う。お兄ちゃん、でいいのかな。


「とにかくその薄汚い頭から早く帽子をどけろ!!」

「あ゛あ!?ケンカ売ってんのかこら!!」


その様子を見てる隣の彼は何かを考えてるようで、男が青年に殴りかかろうとしながら青年が銃に手を付けようとした瞬間に横で一瞬影ができたと思ったら、


「やめなさいギルバート!!」

「ごふっ!!?」

『(ギルバート…?)』


影は勢いよく青年の顎に直撃。そのまま倒れる青年…ギルバート。そしてそれを踏みつけてる彼。
ドゴッて音がしたけど大丈夫だろうか…なんて考えてると、私が来てから一度も喋らなかったその子が私に声を掛けた。


「おいお前」

『なに?』

「お前…アヴィスの者か」

『どうして?』

「そんな臭いがするだけだ」


確かこの子は鼻がよかったっけ。私そんなに臭うだろうか。
でもまだ言わないでおこう。何れバレるだろうけど。今の目的はこれじゃない。


『へぇ…。よくわかんないけど…。あ、あれおいしそう』

「む」


これ以上聞かれてもうまくかわせる自信無いし、なによりこの争いの続きが気になる。
確か肉が好きらしいからちょうどあの子の後ろにあった肉屋を指さす。案の定この子の意識を私から肉屋に移すことに成功。
肉屋の方へ寄って行ったのを見届け、視線を前に戻す。と、なにやらわいわいと見物人がそれぞれ机とイスを用意している模様。…なんで?こそりと彼らに近づく。情報収集ってやつだ。なんとなく勘でこれから何が行われるのか予想してみる。


「力で解決ってオレの趣味じゃないしー?これはこれで楽しそうじゃん?」

「だけどな…!!もし負けたらオレの帽子が…!!」

「あっはっはー平気だよー。オレとギルが勝って2対1。それで終わりだ」

「は…?」


勝つって…何やるんだ。腕相撲でもやるの?




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長いんで切ります。




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