真実を欲して | ナノ


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しばらく楽しいタノシイお茶会をしていると彼女が急に席を立った。あまり途中で席を立たないからみんなでそうしたどうしたと心配する。
一部のトモダチは気になったのかその後について行った。

残った私たちは気になりつつもお茶会を再開。
今日は上手く入れれた。けど、彼女には口に合わなかったのだろうか。
でもそんなこと気にする子じゃなかったはず…やはり気になる。
それにもう10分も経っている。いくらなんでも遅すぎやしないか。


もう待てないとばかりに席を立つ。
そして彼女が行った方へと足を運ぶ。
そこで目にしたものは。


『…何をしているのですか』

≪ふふ…。確認…かな≫


白いうさぎ人形を持ち誰かに語りかけていた。
その人形に触れてないと何も見えないため、第三者から見れば人形相手に語りかけてる様。こいつ頭おかしいんじゃないかという目を向けられるであろう。
だが生憎そんな輩は此処にはいない。
いたとしてもみんなトモダチになる。

誰に話しかけているのか気になりはする。けれども覗きをする趣味はない。
この場合多分彼らだろう…と予想はつく。
あれから上に行ってないからキャストの方々は知らない。
ちょっと気になるな。


≪――…どうして?≫

『…?』


不意に彼女が呟いた。
その顔はとても悲しそうで私は一瞬体が動かなかった。
覗きはするつもりはない、相手の顔を見るつもりはない、けれど誰が君にそんな顔をさせるの?
そこから狂ったように同じ言葉を繰り返す。
上で何が起こっているのかと不思議に思う。一体、何をしているの…?

彼女の言葉に耳を傾けながらそっと彼女の隣に座る。
そんな私に気にもしないで彼女は続ける。

今だけ彼女の言葉を聞かなければよかったと後悔するのは数秒後。


≪そうよ…あんな…

自分が何者かも、生まれた理由(わけ)すら知らない子供(ガキ)なんて≫


ドクン…―。


その言葉に少しだけ心臓の脈が速くなる。
そんな私の小さな異変にも気付かない彼女は更に続ける。
聞こえてくる言葉一つ一つに私は酷く反応して胸が苦しくなる。
どうして?次の言葉さえもわかってしまう。


≪貴方に相応しくないわ。なのに貴方を横取りして。あんな“人形”…≫


やめて、その続きは聞きたくない…!


≪「生まれてこなければよかったのに――」!!≫

『…っ!』


そんな私の心の叫びを無視するかのように、彼女が放った冷たい声が頭に響く。
血の気が引くような冷たい声に思わず身体が震える。
すぐに震えを止まるように自身の手に爪を立てる。
少しだけ息が上がってることに気付き意味も解らず小さく笑みが零れる。
本当に今日はなんなのよ…!

漸く落ち着き彼女の顔を見れば絶望してるかのよう。
無意識に左手がうさぎへと伸びていることに気付く。
その手を引っ込めることを忘れもう片方の手を彼女の頬へと触れる。ひんやりとするその頬に次第に落ち着いていく。

小さく深呼吸して寸止めを食らってた左手を動かす。人形の耳部分にそっと触れた途端頭に映像が流れる。
突然な為ビクッと体は跳ねたりしたがなんでもないようにその映像を眺めてる。しかしこれ慣れない。
映像の中にはあの時の彼がいた。
後ろには見えないけど多分“あの子”がいるんだろうな。理由は視界に入ってないから。

人形の顔部分に手を添えられてるようで彼の右手が近くにある。
なんて窓越しに見る彼がゆっくりと口を開く。


「根拠なんてないよ?オレはただ、自分の中の確信に従ってるだけだから――――!」


彼女は表情一つ変えずに聞いている。
私の意識も自然とそちらに集中する。
見ると人形を片手で大事そうに抱えられていた。というか視界が。濃茶色でびっしり。


「…残念だけどどうやらオレは」


なんとなく、彼が動き出したのが分かった。
雰囲気、というのだろうか。


「君とは話が合いそうにない」


言い終えられた直後、ドンッといううるさい音と見えたものはふらふらと地面が近くなりながら視界が真っ赤になっていく景色。
ああ、撃たれたのか。あんな子供が銃を持ってるの?怖いなあ。


「せっかくのお誘いだけど、あいにく今のオレは人形遊びよりも「宝探し」に夢中なんだ」


そう言いながら彼はいい笑顔で言い放った。
「宝探し」か。よく言ったものだ。

どうやら彼はそう簡単に戻っては来てはくれないらしい。
…仕方ないね。


≪あ゛ああ゛アア゛ァあ゛≫


地面が崩れ始めたのと隣から声が聞こえたのはほぼ同時だった。
やっぱりこの空間も彼女が作ってたのね。と場に似合わず苦笑い。

万が一のことも考えて人形を回収しに行く。
なぜか?もし、もしも。あの人形が彼らとともに元の世界に、パンドラの手に渡ったとしたら。
そうなることは避けたい。…めんどうでしょ。


白いうさぎの人形から手を離し、これとほぼ同じそれを回収しに行くためソファから立った。
彼女の持ってた人形を見ると一部が裂けて、中から綿が出てきてしまっている。後で治さなきゃな。そう考えあの異空間に足を踏み入れた。



◇ ◇ ◇



「アリス!」


崩れゆく地面だったものの中でそんな声が聞こえた。
彼はアリスに手を伸ばして、また黒い人も彼を掴まえようと必死だった。
あんな人いたっけ。…いやどこかで見たような。遠いから分からないや。

ふわっと人形を抱えながらそんな彼らを見ている自分がいた。
…今何を思った…?

アリスの手を掴むことに成功した彼とふと目が合った。
すぐに目を逸らしたけどこれは少しヤバくないか。
幻だと思い込ませれるようにすぐに姿を消した。


「気のせい…?」


私の知らぬ所で見事成功したようだけど。




そういえば見られていたな。彼らは誤魔化せれなさそう…。
どうしようかな…。彼らもまた、幻覚だと思いこんでくれてたらいいのに…。





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