▼ Retrace:W
『ただいま戻りました』
トンッと片足が地面に着く。
≪おかえりレイ≫
私に気付いた彼女は振り向き綺麗な笑みで出迎えてくれる。
その手には白いうさぎの人形。今きっと誰かと話してたのかな。
ちょうど話し終えてたのか、うさぎを一旦棚に置き私を見てきょろきょろして「彼は?」と目で訴えてくる。
『ごめんなさい、邪魔者が入ったの。うまくこっちに引きずり込めなかった』
≪そう…≫
しょんぼりする彼女を見て少し焦る。
何か言って元気づけなければ。ええっと。
『大丈夫。きっとこっちに引き込むわ。少し時間がかかっちゃいそうだけど。でも必ず』
≪…うん…≫
弱弱しく笑う彼女を見て私は『お茶にしましょうか』と言う。
途端に彼女は満開の笑みになりそれが嬉しくて私も笑顔になる。
彼女の笑顔は好きだ。向日葵の様なその笑顔。守ってあげたい。
だから彼女を泣かせる奴はアヴィスの塵にしてくれる。
≪ねぇレイ≫
『なんでしょう?』
≪大好きよ!≫
『!…私もです』
突然の「好き」に私はこの子のために頑張ろうと思えるのです。
待っててね。必ず連れてくるから。
『まぁ…そう簡単には来てくれなさそうですけど』
prev / next