その先番外編 | ナノ


▽ 強くなる絆、伝わる気持ち


「よっ」

「…白垣くん?」


部活が終わってすぐ教師に呼び出され、何故か教師の手伝いに繰り出されていた。それもやっと終わり、帰り支度をしていざ帰ろうって時、体育館の中でボールの跳ねる音が聞こえ、なんとなく覗いてみたらよく知った顔がコートの真ん中にいた。声を掛けたらすぐに彼はこちらに振り向き、ほんの一瞬驚きにも近い顔をしたが、すぐにいつもの顔に戻った。

黒子は常にポーカーフェイスだ。だから一瞬でも崩せるとなんか楽しい。ちょっとは驚かせたかなーと内心ほくそ笑みながら体育館を覗く様な形でいる。俺も頑張った方だけど、こいつも頑張ってんな。


「こんな時間まで自主練?精が出るなー」

「え?…あ」

「…おいおいマジかよ」


現在時刻7時。最初黒子は何の事だか分からない様子だったが、時計を見て理解できたようだ。というか反応からするに全く気付かずにやってたって事か?どんだけ夢中でやってんだよ、すげえな。
半分呆れた俺を他所に慌てて片付けを始める黒子。俺も手伝おうと靴を脱いでバックを放って、散らばったボールを一つ一つ手に取っていく。一人より二人の方が早いし。

いやー俺もある意味頑張った方だよ。部活終了直後だっていうのに荷物運びさせられたり、代わりに書類提出させられたりパシられたり。
疲れた後に甘いもんって最高だよな。あ、そうだ、


「ついでだし、途中まで一緒に帰るか。頑張ってた褒美にシェイク奢る」

「!行きます」


途端目をキラキラと輝かせて、即答で答えるもんだか笑いをグッと堪えるのが大変だった。ホント、シェイク好きだよな。美味しいのは分かるけど。
それから黒子の動きが早くなったのにも笑いを耐えた。なんともまあ、変なところで分かりやすいやつだ。



◇ ◇ ◇



「そういえば君、なんでまだいたんですか」

「ん?先生の手伝い」

「こんな時間まで?」

「そ。こんな時間まで」


二人揃ってシェイクを啜りながら、すっかり暗くなってしまった道を歩く。なんで歩きながら飲んでるかって?時間が時間だし、店で飲んでたら余計遅くなって親に心配掛けんだろー。俺はともかく、黒子のとこはどうだろうな。

夜独特のひんやりとした空気が頬を撫でる。昼間は太陽というまだ温みの恵みがあるが、夜はそんなもの存在しない。あるのは冷たい光を浴びせる月のみだ。…たまーにいないけど。
は、と吐く息は白くやんわりと消えていく。こんだけ寒いのに冷たいシェイク飲んでる俺らって傍から見れば馬鹿だと思われそう。店員さんも驚いてたしな。
ズズッと鈍い音が手元からして、もうシェイクがなくなったことを告げる。運よく近場にあったゴミ捨てに放った。黒子も飲み終わったのか俺の後に着いてくる。

ふと一風変わった小さな店が視界に入った。


「な、黒子」

「はい?」

「少し寄り道していかね?」

「はあ、いいですけど」


了承もらったところですぐさま黒子の腕を引っ張り、早足でその店に一直線で進む。突然のことに驚きながら少し抵抗を見せる黒子だったが、俺の行く先が分かると抵抗をやめた。正直進みにくいったらありゃしない。何も言わない俺も悪いんだけど。


「…君、暖房求めて入ったでしょう」

「当たりー」


店の中に入ると俺の読み通り、店内は温かかった。そう、俺がなぜこの店に入ったかと言うと暖房が欲しかったからだ。黒子はあと5分も歩けば家に着くだろうけど、俺は後10分くらい掛かる。ざっとだから正確な時間は分からん。でも俺としてはあと10分もこの寒い中を歩いて帰るのはキツイ。ので一旦休憩に入ろうと。
この際どの店も暖かいとか言うな。辺りは殆ど飲食系ばっかだったんだから仕方ないじゃないか。


「せっかくだし少し見ていこうぜ」


俺がそう言うと仕方なさそうに頷かれた。
どうやらここは雑貨店らしく、色々な小物とかが見て取れた。女子はこういうのが好きそう。その証拠にちらほらと女性客が見えた。
面白いもんはないかなーと眺めてると面白いものを、発見した。


「…ふむ」


俺はそれを手に取り、黒子に一言言ってレジに向かう。会計を済ませ、大分暖も取ったしと黒子と店を出た。店を出た途端冷たい風が全身を襲った。うわ寒い。早く帰るか。


「何かめぼしい物でも見つかりましたか?」

「ああうん。はい」

「え?」


レジで受け取った小さな袋を黒子に突き出すと、頭上に疑問符を浮かべながらも素直に受け取る黒子。横目でそれを見ながら無意識に口角が上がっていく。あーそろそろ分かり道が近いや。
受け取ったまま目で「これは?」と訴えてくる黒子に開ける様催促する。言われた通り開けていく黒子、隣でがさがさと袋が擦れる音がする。


「キーホルダー、ですか?」

「おう、黒子にやる」

「えっ」

「まあもらっとけ。頑張ってた褒美ということで」


俺が渡したのはバスケットボールの形をしたキーホルダー、しかも七色。レインボーっすよ。それを見つけた時、黒子と、アイツらが浮かんだ俺は相当ヤバいと思う。なので今回は黒子だけにプレゼント。
…実は今日黒子の誕生日だったことすっかり忘れてて、さっきこの色見て思い出したけどさ。今更誕生日祝いに、って渡すのもなんかアレだから。いつも調子で渡さしていただいた。勘付かれてないといいけど。


「…ありがとうございます」


キーホルダーを握りしめ、ほんのりと笑みを浮かべた黒子にほっと息を吐いた。



(ついでだからアイツらにも渡していこうかなー…)

thanks:反転コンタクト

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去年くらいに(急いで)書いた黒子誕の話を今更ですが修正して再アップ。大分読むにあたってマシになったかな…!
実は中学生時代の話。…なんだけど高校生でも行けそうだ。

確か去年の今頃は移転途中だったかな?
仮閉鎖中にトップに小説のリンクだけ貼ってた記憶がある…!

黒子くん誕生日おめでとうございました…!

(20140131)
(修正 20150202)

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