高尾にチョコを
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※深淵夢主前提。
「お、いい匂いー」
2月14日バレンタイン。今日は休日でそういう日で暇で、たまたまあったチョコを引っ掴み妹ちゃんと一緒に、と言うか妹ちゃんに付き合ってバレンタインチョコを作っていた。決して自分からやろうと思ったわけじゃない。というか料理できない。 妹ちゃんに指示をもらいながら自分の作業をしてると、リビングの扉が開き、奥から和成が顔を出した。すぐさまここまで見たらしく、何もかも分かった上で目をキラキラとしだした。
「何作ってんの?」
「なんだっけ…ブラウニーってやつ」
「ほー!」
和成はカウンター越しに立ちこちらを覗くように見てくる。作ってるところを見てるのがそんなに楽しいだろうか。まあいいやと無視して目の前のことに集中する。後ろにいる妹ちゃんが和成を見て苦笑いした気がした。
◇ ◇ ◇
粗熱を取って…等の手順が少々めんどうだったが、なんとか出来上がったブラウニー。均等に切られたそれがとてもおいしそうで、妹ちゃんマジ天才、と呟いた。 照れ隠しか何かで余分な部分をもらってその場で食べたがとてもおいしかった。やっぱりうちの妹ちゃんすごい。こんな子を妹にもらえて、私は幸せです。
妹ちゃんは学校の子たちに。本命もあるのかと聞いたら曖昧な答えをされ、更に揺さぶってみたら追い出された。…これはいると捉えてもいいのだろうか…。
――手元にぶら下がった袋を落とさないよう持ち直し、自分の部屋……ではなく、隣の和成の部屋へとやってきた。いつの間にかいなくなってたんだよこの人。いついなくなったのって話。 ノックもなしに入るとベッドに寝転がってバスケ雑誌を読んでいた。…うん、よかった。
「ちょ、なまえちゃん、入る時はノックしましょ!?」
「…あげる」
「ん?」
和成が何か言っていたが総無視で小さな袋を前に突き出した。両手が前に出されたのを見てからぱっ、と手を離す。それは重力に逆らえず綺麗に和成の手の中へ落ちた。 用は済んだ。 さっさと踵を返して部屋を出ていく。
「妹ちゃんからだから、よく味わって食べるんだよ」
なんて嘘を吐いて自分の部屋に行った。どこかでふふ、と笑う声がした。
…なんていうか、恥ずかしいじゃん。どんなものであれ。
一人残された彼は小さな袋、ブラウニーの入った袋を顔前にまで持って行きながら照れくさそうに笑う。
「なまえも照れ屋だなー」
それでもなまえの言うように、よく味わっていただきますよ。我が妹様?
家族愛ってやつ? どっちも俺からしたら妹だし分かっちゃうって。
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