からっぽの頭に浮かんだのは


彼と話さなくなって1ヵ月は過ぎた。…と思う。あの日から感覚が分からなくなって時間も曜日も曖昧になっている。
授業中は何とかなっている、けれど部活ではダメだ。曜日メニューと言うものを取組んでいるのだが、時々メニューを間違えることがある。もう何度も体験してるので最初にあった恥は捨てたほどである。
人知れず長い長い息を吐いた。息を吐いたせいで体の力も抜けていって、机に伏せているような体制になった。窓の外は相変わらずいい天気だ。そして、顔を横にしていることで日が当たって眩しい。手で日を遮断するよう翳した。

「…どしたのなまえ。もうぐーたらモード?」

『アホ言わないで。力抜けた』

「ええっ!骨抜き!?」

『そこまで言ってない』

上半身を元の体制に起こし、目の前で人の椅子に座るお馴染み友人を睨んだ。友人は睨まれてもへらへらと笑ってかわす。よく見れば顔色があまりよくない。
睨む目をやめ体調悪いかと聞いたらそうでもないと返された。じゃあ、と顔色の事言えばえへ、と可愛く眉を下げて体を丸くさせた。…理解した。

『辛いなら部活休む?』

「いやいける。大丈夫よー。でもちょっと保健室行ってくる」

『いってらっしゃい』

目の前にいた友人も去り、腕を枕にまた机に顔を伏せ、瞼を閉じた。
真っ白な頭で今日の曜日と、メニューと、と思い起こしているとぼんやりと浮かび上がるあかいもの。すぐさま考えていたことも消えてあかだけが頭に残った。そのあかはゆっくりと姿を現して、時期彼へと繋がった。
ーーハッとして勢いよく顔を上げる。

(何考えてんの私)

まるで走馬灯のように流れた彼と過ごした日々。勉強会だったり、デートだったり、ただ何でもない日の出来事だったり。あの出来事の前にも、途中まで一緒に体育館に行っていたのに。
あの日の怒りははっきりと覚えているのに、理由だけ覚えていない。私は何をしていて、彼が何をしていて、周りがどうとか覚えていない。そこから思い出していかないとこの先仲直りなんて先の話なんじゃないの?…メールを無視して、会話もなし。きっと彼怒ってるんだろうな…。
なんだか辛いよ…。

『……何ニヤついてるの』

「んー?なまえの顔見て可愛いなーって思ってさ」

『それ私が変な顔してたって言いたいの?てかいつ戻ってきた』

「さっきだよーん。薬飲んで戻ってきた。それと変な顔ではないかなー」

いつの間にか戻ってきていた友人にも気付かずずっと考えていたらしい。ふと見えた友人の顔がずっとニヤニヤしていて気持ち悪い。思ったまま吐けば「酷い!」と笑うも、未だニヤニヤしぱなっしだ。何故彼女がここまでおかしそうに笑うか不明だが、そろそろ疲れた。手を伸ばし両頬を引っ張って笑いを止めよう作戦に出た。

「っ、いひゃいいひゃい!」

『いい加減にしないと練習量増やすわよ?』

「ごめんにゃひゃい!」

潔く謝った友人に深く息を吐きながらその手を離した。友人は引っ張られてた頬を労わるように優しく撫でてる。
おふざけは大変好きな彼女だが、私にとっては良き相棒。

『私、どんな顔してた』

「カレシさんの事で悩む少女」

下げていた視線をそっと上げると彼女は笑った。まるで、全部見透かしてますって感じ。
視線を逸らすと彼女が笑ったような気がした。

「私たちもできる限りは協力するから、自分なりに頑張れ」

『…ありがと』

心強い友人たちを持ったものだ、私も。



(いつも出てくるのは喧嘩中のアイツばかり)


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