「笑わせないで」体育館入り口前に体を預けて立つ彼と、距離もそこそこに離れた場所で立つ私と。あえて考える。腕組む彼って結構様になるのよね。 ひゅうひゅうと入口から冷たい風が入り込む。じわじわと火照った体が冷えていく。 「先に黒子を使って呼び出したこと、不快に思っているなら謝ろう」 『思ってないよ。多分そっちの方がよかった』 きっと君だってわかったら行ってないかもしれない。 なんて言ったら彼は気を悪くするだろうから言わない。言いかけたけどあと一歩という時に止めれた。危ない危ない。 この点に関して、私が怒っていないことが分かると、彼は小さくほっと息を漏らした。その様子に珍しい、と思った。だってこんなことで安心した様子を見せる人ではないから。…それだけ不安だったんだろうか。 「単刀直入に聞く。…なぜ、怒ったんだ。その原因を知りたい」 『原因、か』 私だって分かりません。なんて言えたらどれだけいいだろう。そう言えたらいいのに、可愛くない私は変なプライドが邪魔をして言う事を拒む。けどここで素直に言ったところでどうなるのだろう。言えたところで無事仲直り、なんてできるはずもないだろうけど。 …私ってホント、こういう時可愛くない。 「いくら考えても答えが出ないんだ。もし俺に非があったなら謝る。だから、」 『謝って終わり?直してはくれないの?』 耳の奥でなにかがプチプチと千切れていく音がする。これは、あれだ…怒りが込み上げてくる音に似てる。でも何かが違う気がするのはなんでかな。 彼は小さく目を見開いて、首を僅かに傾げどういうことだと主張してくる。 私だって知りたい。勝手に口が動いたんだから。でももう止められないのは分かってた。彼が黙っていることを良いことに、次々と溢れ出てくる、思ってもないような言葉たち。 『悪いと思ってるなら直してよ。じゃなきゃこれからも同じことを繰り返す』 「……」 『私、もう嫌なの…!』 言い切って俯いた。 何が嫌なの?何が原因で繰り返すの?これから、なんてあるの?君が悪いわけじゃないの、本当は…。 少しずつ、ではあるが"何が原因"か、はっきりしてきた。あの日を思い返したわけじゃない、そう自然と浮かんできた答え。 きっとこれは、醜いやつ。私そういうのに関しては本当に弱くて、駄目だから。どうしていいか分からなかったんだ。 素直になれないのも、きっとそう…。 本当は、私ーー (事の始まりはあなたのせいだったの。だから、私は、) |