『見て見てはなみゃー!お菓子もらったの!一緒に食べよう!』

「はなみゃー言うんじゃねぇよバァカ!」

体育館内に大きく響いた二つの声に、またかとその場にいた数名は思う。けれども楽しそうにその続きを待っている者もいる。
それを知ってか知らずか、みょうじは手に持つそれを花宮に差し出した。花宮は一度それを見ると訝しげな顔をしたかと思えば、すぐにいつもの顔に戻り説明を求めた。

『なんかいっぱいもらっちゃってね、食べきれないから一緒に食べようと思って!原たちも食べよ!』

「うわマジ?はなみゃーせっかくだし食おうぜ」

「カカオ100%まであるぞ…」

「それお菓子として普通渡すか?!」

『いや私に言われても…』

ぞろぞろと部員が集まる中、花宮は深く溜息を吐いた。横でみょうじが「溜息吐くと幸せ逃げるよ?」なんて言っているが、誰のせいだよと毒を吐きたかった。
今度は比較的小さく溜息を吐いた。

「食って太ってろバァカ」

『!はなみゃーなんてこと言うの!』

「そうだよはなみゃー!なまえはもう太ってっいた!?」

『私は太ってない!原はもっと太れ!チョコ食えバカ!』

「ちょっもが!?」

「飴いただくぞ」

「じゃあ俺もー」

「ミルクチョコ…」

『はなみゃーはカカオでいいでしょ?』

「いい加減はなみゃー言うのやめろ」

とは言いつつも、差し出されたカカオ100%のチョコは受け取る花宮。その様子にみょうじの顔は綻んだ。
各面々がお菓子を食べ始めると、異変はすぐに起きた。

「は、花宮…」

「なんだ?…あ?」

原が花宮の頭を指さして固まる。花宮は自身の頭に触れると、髪じゃない毛の感触。形を確認していくと三角でふさふさで、獣の耳のような手触り。
ハッとして他のメンバーを見る。
皆頭に犬か猫のような耳らしきものがある。

そしてそれを少し離れた場所で、なにやら感動しているみょうじの姿が見えた。…手には携帯と足下には人数分のスポドリの入った籠。

「…なまえ」

『はわわわわ…!』

「おいこら聞け!」

『いいった!?』

「これはなんだ?説明しろ」

喉が渇くだろうからと手っ取り早くスポドリを持って行けば、花宮を始めとする霧崎のスタメンたちの頭に耳のようなものが生えており、冷静に分析した結果、猫の耳だと言うことが一早く分かったみょうじは、早速貴重な猫耳姿たちの彼らをカメラ、動画に納めるべく動いていた。

カメラ操作に夢中な彼女は歩み寄る花宮に気付かなかった。故に頭を思い切り鷲掴みされ、ギリギリと軋むほど握られている。

『説明しろと言われましても私知らない痛い!!』

「フツーに考えたらお菓子のせいじゃね?」

「菓子…」

原の一言により、みょうじは鷲掴みから解放され、一時の休息を得た。
まだ頭痛いよーと原に泣きつくみょうじ。原は片手でよしよしと宥めながらも混乱していた。
いやいやほんと、どうしてこうなった。

「菓子が原因だとすれば、みょうじにあげた奴も気になるな」

「…そうだな。なまえ、どんな奴から貰ったんだよ」

『え?…うーん』

どんな奴、そう聞かれて少し悩んだ。理由としては言ってその人がどうなるかその人のこの後の人生について。もう一つは…お菓子をくれた人物がどんな人だったか7割忘れていたからである。
うんうん唸って漸く思い出した彼女は顔を上げて分かりやすい部分のみを言った。これだけじゃ、その人はきっと特定できないだろうと踏んで。

『関西の人だったみたいだよ!』

そのまま彼女はそっと手を伸ばし、花宮の頭に付いている(生えている)猫耳に触れる。瞬間、ぴくりと耳が動いた。その様子に花宮はみょうじを睨み、みょうじはキラキラと顔を綻ばせてはまだ触ろうとする。

「っ…おい、やめろ」

『いいじゃん!ちょっとだけ!』

あまり抵抗を見せない花宮にぐいぐいと迫るみょうじ。頭を一撫でしたり、耳を揉んだりまた撫でたり。そんなことの繰り返し。触れる度ぴくぴくと震える耳に感動しながら耳を熱心に撫でた。
偽物、というには暖かくまるで本物みたいだと。

花宮は花宮で慣れない感触に苛立ちと戸惑いとくすぐったさにどう対処すればいいのか悩んでいた。
みょうじの制裁を前に原たちの制裁だな、と横目でずっとこちらを見ている原たちを睨んだ。

「その関西弁の奴、眼鏡してたか?」

『え?ああーしてたね』

「目は細かったか?」

『細かったね。…そんな細かく特定できるってことは知り合いなの?』

「…まあな」

知り合いなら、大丈夫かな。
既に撫でていた手は動きを止め、先ほど渡そうと持ってきていたスポドリをそれぞれに配っていた。
もちろん、渡した際に撫でることも忘れずに。

「みょうじくすぐってぇんだけど」

『もっときつくした方がいいの?』

「それ痛そう」

『毛並みは花宮と原と古橋が気持ちいいな…』

「お前何真顔で言ってんの」

『んー?ふふふー』

自分たちを撫でている時、幸せそうな顔で笑うものだからきつく言えないのが彼らの心境。
時折どこから持ってきたのか、彼女の手にはおもちょの猫じゃらしが彼女の気持ちを表すかのようにゆらゆら揺れていた。

『今日は練習せずに私と遊ぼうよ!子猫ちゃんたち!』

「子猫ってほどでもなくね?」

『あ、そう?じゃあ猫ちゃんたち!あいたっ』

「遊ばねーよバァカ!…瀬戸も起きろ!」

「…ん、」

その後証言によると、霧崎スタメンたちが猫耳をつけて練習に励む姿の傍等、カメラを連写しているらしいマネージャーの姿を見たとか見なかったとか。

『はなみゃー可愛いよ!』

「だからはなみゃー言うんじゃねえ!!」





○-○-○ ○-○-○ ○-○-○


「おい今吉、テメェのせいだろ!」

「ん?おお花宮か。はて、なんのことやろなあ」

「とぼけんじゃねえよ!」

「ええやないか。で?喜んどったやろ?」

「………」

この妖怪、全部分かっててやって楽しんでやがる…。


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大変遅くなりました。関西弁の人からもらったお菓子を霧崎に食べさせ、猫耳の生えた彼らを全力で可愛がる、ということでした。如何だったでしょうか。 (ちょっと省略してます。ご了承ください)

他二つより時間がかかってしまい、かなり遅くなってしまいました。申し訳ありません。
今回苦戦したのは霧崎のメンバーですかね…。はなみゃー様は比較的いけました。とりあえず「バァカ」を入れて口悪くすれば似るかなーと。←
…しまった、彼の一番の(?)特徴である「ふはっ」がない。

初☆霧崎。これで大丈夫かなあ…。
一応全員一言は喋ってるつもり、なんですが…。うーん。

芥様、遅くなってしまい申し訳ありませんでした。リクエストありがとうございます。指定多い方が、私の想像(妄想)も捗ります。しかも猫耳(ここ重要)。本当にありがとうございました。二重の意味で。
気に入らなければいつでも書き直しいたしますので仰ってくださいね。




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