「あ、」
次の授業で使う教科書を家に忘れてきた。そのことに気付いたのは休み時間終了5分前。普段はこんなドジなんてしないのに、何故今日に限って忘れてしまうんだ。朝の私に言おう。忘れ物はないか?
しょうがない、と溜息を零し、ダメ元でアイツのとこに行ってみることに。
もう行き慣れた片割れのいるであろう教室へと歩を進めた。また相棒と一緒にいるのかなー。
残り休み時間も少ないので早足で2個先の教室を目指す。
「和成ー?」
「ん、はーい?」
教室を覗くと、やっぱり相棒といた。やってきた片割れに次に必要な教科書は持ってないか聞くと、なんと持ってるとのこと。貸してほしい事を言うと一度自分の机に戻り教科書を持って戻ってきた。
「ありがとうー助かる」
「オレも使うから早めに返してくれるとありがたいかな!」
「お昼でも?」
「十分!ついでだし久々に一緒に食おうぜ」
「うん」
とまあ教科書を確保できた私は、無事授業を終えた。いやいや本当に助かった。あの教師忘れ物した人見るけるとその時間、いやに目を付けてくるから。雑用とかに手伝わされてるクラスメイトをよく見てきた。でも終わったら終わったで褒美くれるらしい…ってどうでもいいんだよ。
お昼休み、母親手作りの愛情弁当(笑)と和成から借りた教科書を持って、再び和成のいる教室に行った。入り口で覗くと珍しく弁当を机に出したっきり談笑していた。近くにいた子に入ってもいいかと許可をもらって和成たちの傍に寄った。…なんで食べようとしないんだろ…?
「和成さーん」
「お!さんきゅー」
「こっちこそさんきゅー。…弁当食べないの?」
教科書を渡し、和成の机と彼の相棒の緑間の机を見比べた。どちらも机には弁当が乗ったままで何一つ手が付けられていない。だから気になって聞いてみたんだけど。
受け取った教科書をしまうと弁当を持ち、席を立つ二人。
「さっきバスケ部の先輩たちから電話あってさ、急遽屋上でミーティングしながら食う事になってなー。てわけで待ってたんよ」
「あ、じゃあ私戻った方がいいね」
どうやらそれは急に決まったらしい。まあしょうがないかな。
来た道を引き返そうと思ったのだが「待つのだよ」、と緑間に止められてしまう。
「なまえも連れてくるよう言われたのだよ」
「え、なんで?」
「さっき連絡もらったときに先約があるんでーってダメ元で断ってみたんだけど、その時になまえのこと言っちゃってさー!」
「…だからなんだってのよ?」
「先輩たちがお前に興味を示したらしいのだよ。だからお前も来い」
「なるほど。和成この野郎」
「ごめんごめんw」
睨む私とへらへら笑う和成。それらを前にしても全く動じない緑間。コイツ…出来る!
理由も分かったところで、こんな事を言うのもなんだが…。
「…知っての通り私部外者だけど?」
「来いって言ってんだから良いんじゃね?」
バスケ部集まりなのに?っていう疑問は捨てた方がいいらしい。そういうことなら…と私は了承するしかなかった。というか言葉ほとんど抜けてたけど伝わったね。やったね!
いや別に喋るのがめんどくさいとかそんなんじゃないんだ。本当だよ?
バスケ部の先輩かー。楽しそうな人たちとしか覚えてないや。何度か和成に用事があって、ちょっとだけなら見たことあると思うけど…ダメだ、この人!ってのが思い出せない。
ああでも待って。物騒、ってイメージが出できたよ。なんでかな?
そんなこんなで和成たちと屋上に行きました。屋上なんて行ったことないよ。行きたいとは思ってたけどまさかこんな形で願いが叶うとは!喜んでもいいのかちょっと分からない。
だって!ある意味和成のおかげとか!ええ!?微妙。
「せんぱーい!連れてきやした!」
「おー。お疲れー」
「…なまえ?」
和成が、こちらに振り向くなり吹いた。よかったな、ご飯まだ食べてなくて。食べてたら米吹っ飛んでたからな。それくらい吹いた。
なぜ彼が吹いたか。それは私の行動を見たからである。
屋上に来るなりそそくさと緑間の後ろに隠れ、イメージ的には警戒心丸出しの猫を演じてみたわけだ。ああ、この行動に特別意味はない。なんてゆーか…ノリ?
「突然すまないな。よかったら一緒に食べないか?」
「あ、はい。お邪魔させていただきます」
猫のマネは総スルーで、ガタいのいい人が優しく迎えてくれた。私はそれに答え、緑間の後ろから出た。先輩さんたちのところに向かい始めると緑間も一緒に来た。隠れている間、ずっとその場にいてくれた緑間優しい。
丸坊主さんの隣が空いていたのでそちらにお邪魔させていただいた。…にしても、先輩さんたちみんな座ってるのに見上げなきゃいけないとか。これ立たれたらどれくらいだろ。
その後軽く自己紹介をして、バスケ部と関係ない私を入れてお昼を取った。
和成は自己紹介が終わった後宮地先輩にチョップされてた。物騒なこと言うわりには可愛いことする先輩だ。そうそう物騒なイメージは90%、宮地先輩のせいでついてたってことが発覚した。
お昼も食べ終え、時間までみんなで談笑して、先輩とも打ち解けてすごく楽しかった。だけど、和成が思い出したように、
「なあなまえ、今日マネの仕事手伝ってくんね?」
と。なぜそれを今ここで言うかな。断りにくいじゃないか。ソレが狙いか、狙ったんだな。
みんなの視線を浴びる中、数秒考えるフリをしてから「いいよ」と答えた。答えるしかなかった。
今私の顔には「後で覚えてろよ」と書かれているはず。和成許さないからね、断る余裕くらいくれよ。
「てことで主将いいっすか?」
「構わない。むしろ頼みたいくらいだ」
「最近他のマネージャーが休みがちで、困ってたんだ」
「頑張れよーなまえ」
「頑張りまーす」
言われた通り放課後、男バスマネとして手伝ったが、まさか次の日からマネの勧誘がくるとか思っても見なかった。
――これはまた別の話。
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深淵夢主が秀徳にいたら、というifでした。如何だったでしょうか。
兄と一緒なので彼女にとったらそれはそれは楽しい学校生活を送っていると思います。桐皇に行かせているのは、色々あったから何です。とこっそり裏設定。
まだ本編で秀徳の方たちとの絡みもないのでちょこっとでしたが…もうちょっと絡めばよかったかな…?
結衣様、リクエストありがとうございました。ニヨニヨしていただけて嬉しいです。ホラーとかグロとか考える私はいつもガクブルしてますw
満足していただけなければ、書き直しはしますのでいつでも仰ってくださいね。
おまけに別バージョン。名前変換は出来ますけど出来てませんので注意です。