※ちょっと下品。
私があの赤司征十郎の妹ということは新一年を含め、全学年に知れ渡っているらしい。
容姿端麗、成績優秀、しかも二年で主将、なのに学年テストでは常に一位。…ここまでくれば誰も注目しないわけにはいかない。当然、身内である私にも目を向けられる。
容姿は一卵性だから兄と殆ど同じ顔。唯一違うとすれば髪の長さくらい。成績は兄に負けじと努力はしてる。一応。先生からはさすがと言われているから上の方だとは思う。テストの結果は見ない派なのでそこは分からない。私も部長という面目があるが、決して自分からなりたいと思ってなったわけじゃない。自然となってしまった、というか決められてしまった立場であって私は何もしていない。大体兄のせいだけど、別に彼を責めてはいないよ。
とにかく、何かと目立つ方なわけ。良い方で目立つのなら、当然悪い意味でも目立つ、わけ。そのせいか時々…いや部長になってから初めてちょっとヤバそうなことになっている。呼び出し、とか色々とあるけどこの手の者は…片手で数えれるほど。
「アンタが赤司の妹?」
「へー、普通に可愛いじゃん」
「なんかもったいねーな」
現在、三人の男に囲まれている。背丈と態度…それと制服の色合いからして恐らく3年生。同級生にこんなやつらはいない。と思う。いても、アレだし。…察して。
「御託はいい。何か御用ですか」
「あんさァ、俺らバスケ部だったんだけど、」
…出たよこれ。兄さんが主将になる前からこういう絡みはよくあった。本人は知らないでしょうけど。
大抵気に食わないだの、態度がどうのこうのだから一言言ってやってくれとか。自分で言えよアンタの方が年上なんだからさ、と何度も内心思ったのは言うまでもない。
口ではああ言うも内心兄さんに怯えてると丸分かりだ。怖いから、私のとこに来た。
「君のおにーさんがさ、俺らを強制退部にしたわけよ。妹ちゃんおにーさんに何か言ってやってくんね?」
「俺ら超頑張ってたわけよ。なのに急にやめさせられてさー」
「先輩なめんじゃねーよ、ってな」
私は女だからさして怖くないと思ったんだろう。そんなことない、私も怖いと以前知り合いが言っていた。
女だからって、甘く見ていると痛い目見る。ちょうどいいかもしれない。これは私が徹底的に教えないと。だって私は兄さんの…片割れだから。躾はしっかりしなくちゃ。
「そればかりは私からは何も」
「頼むよ妹ちゃぁーん!」
「無理です」
「お願い!」
「自分で言ってください」
見た目思ったよりしつこい連中だな…。
隙を見て逃げるかと狙ったとこで一人の男が一歩前に出た。
「本当はこんなことしたくなかったんだけど」
「?っい!」
突然両手首を掴まれ元々背後にあった壁に強く背中を打ちつけられる。
痛みで顔を歪めると目の前の男はにやりと笑う。
「俺らの言うこと聞かないとぉー…どうなるか、賢い君なら解るよね?」
話しながらも器用に手首を一纏めにされ頭上に固定される。ずいっと顔を近づけニヤニヤと怪しく男は笑う。その間に腰には手が回り、ぐっと男に引き寄せる。近い、気持ち悪い。
傍から見たらナニコレ状態である。
「これ以上抵抗するンなら犯しちゃうよ?俺もうその気だからね」
犯す?コイツが?私を?笑わせてくれる。こんなパターンは初めてだけど、ふむ。やれるもんならやってみろ。返り討ちにしてくれる。
「おいおいそれ言っちゃダメだって。妹ちゃん怖くて喋れねえって」
「妹ちゃんごめんねー?でも君が素直に頷いてくれたらそれでいいだけから」
頷くだけで何もしなかったらどうなるんだろう、とか冷静に考えるが、そろそろ腕が辛いかな。ずっと上にあるんだもん。
というか、止める気は全くなし。計画してたりするのかな?
さて、もういいだろう。
小さく溜め息の混じった息を吐き出すと、目の前の男がピクリと反応した。まるでその反応、やっと聞いてくれたかと言う感じだ。
けれどそれは違う。そっとばれない様足を動かし、
「頭が高いぞ」
勢いよく男の急所を蹴り上げた。
見事ヒットさせれば、突然の動きに怯む二人も同じく急所を蹴る。別に足癖悪いとかじゃないよ?鍛えてあるから使ってるだけで。
なんで急所を蹴ってるかって追い掛けられたくないし、トラウマ植え付けとけばもう来ないと考えたから。私に話しかければ痛い目見るよ。みたいな。
蹴られた急所を抑え、痛そうに悶える一人の肩をグッと踏むとソイツは顔を上げ、悔しそうに顔を歪めてる。今度は私がにやりと笑う番だ。
「女だからって甘く見ないでくださいね」
休み時間ギリギリに教室へと戻ってきた私の前に雨宮がやってきて、また?と首を傾げた。肯定の意を表すように苦笑いを零したが、彼女はそれだけで分かってくれたようだ。それほど長くいる、つもりだ。
「あそこまでやったのは今回が初めてだよ」
思わず零れた一言を見事に拾った彼女は、どういう意味だと目を丸くさせてるが、聞かなかったことにしてと言って自分の席へと座った。
やりすぎたとは言わないけど、次からどうしよう…。