季節の変わり目ということが主な原因で体調を崩す部員が増えた。おかしいな、簡単に崩れるような軟なメニューは組み立てていない。サボってるか、あるいは…。そうは言っても、崩してしまったのならしょうがない。水分補給をもう少し入れるかな…。
今日の部活動はすでに終えており、部室にていろいろ考えていた。部員のこととか、練習メニューだとか。そろそろリレーなんてしてみてもいいかも。そうだな、500メートルくらいいけるかな?
日誌に今日のことを書き込んでいると既に帰ったはずの神崎たちが戻ってきた。と言っても田沼が先導しているから途中で田沼が動いたんだろうが。
「征夜も一緒に寄り道して帰ろー!」
「え、待って田沼。寄り道?どこ?」
「んー?んーコンビニ!」
「ごめん征夜。急にみんなでアイス食べようって、田沼言いだしてさ…」
手元のバインダーから神崎たちの方へ顔をあげる。田沼はコンビニに行きたいそうでうきうきとしている。雨宮がフォローのようなことを言うが、なるほどそんな理由か。神崎は何も言わず黙っているが心なしか目が行きたいと訴えている。
少しだけどうしようか考えるが、特に断る理由もないので二つ返事で答えた。その前に軽くこれを見直しとついさっき考えたことのメモをということで約10分ほど時間をいただいた。
それにしても、部活後だと言うのに田沼はいつも元気だな…。疲れてないみたい。
◇ ◇ ◇
「意外」
帰り道、コンビニに向かいながら雨宮がぽつりと言った。
前には神崎と田沼、後ろに私と雨宮で並んで歩いている。恐らくこれは私に言ったのだろう、前の二人は降り向きもしない。
「何が?」
「征夜が一緒にコンビニに行く事よ。なんか意外すぎて」
「そう?」
「イメージ無い」
そうかと笑っているとお目当てのコンビニが見えてきたようで田沼が走って行ってしまった。まだそんなに元気があるならもう少しメニュー増やそうか。なんて呟いたらさすがにやめて、と神崎が困った顔で言って来たのでやめておこう。
アイス売り場でどれにするか選ぶ。コンビニだけど種類も豊富。どれにしようか迷うが……うん、どれにしようね。
「パピ○でも買っていく?これなら二袋でお手軽だし」
「いいね。それにしよう。私チョココーヒーがいいな」
「私もチョココーヒーにしたいな。田沼と征夜はどれにする?」
「私バニラのフローズンがいい!」
「なら私もそれにしよう」
会計を済ませ、店の前で分けてると視界の隅で暫く会ってない色かちらついた。気のせいかとそちらをよく見ると気のせいではなかったらしい。声を掛けようかと思ったけど向こうも友達といるようだしいいかと、田沼からバニラのフローズンのパ○コを受け取り、開けて食べた。あ、これおいしい。
「赤司…さん?」
横で小さな悲鳴というか驚いた声が上がり、つまり彼かと特に動揺もせず視線をそっちに移す。先程見つけた色が真横にいる。またこっそり抜けてきたな、コイツ。
「黒子、久しぶり」
「お久しぶりです」
神崎たちは突然現れた黒子に驚いて声も出ない様子。ここは無視しておこう。
久しぶりに話したいと思ったがこんなにも早く会えるなんて。ちょっとツいてるね。ところで傍らにいた友人たちはいいのだろうか。
「主将になったと聞きました。おめでとうございます」
「…ありがとう。黒子こそ一軍に上がったそうだね。おめでとう」
「ありがとうございます。話したいことはたくさんありますが、友人を待たせてますので今日はこれで失礼します」
「また話しましょう」、そう最後に言われ黒子が友人の元へと戻っていくのを横目に見送ると固まっていた神崎たちが我に返った。
「びっくりした…」
「一瞬お化けかと思っちゃった!」
「それ失礼よ。征夜の知り合い?」
「一年の頃同じクラスだった子だよ。お化けではないよ」
「そ、そっか」
そういえば黒子のとこの友人たちもえらくカラフルだ。あの中に彼はいないようだったが、今年になってよく見る色なら何人かいた。…そういえば同じバスケ部だったっけ。一緒にしてもおかしくはないね。
「…早く帰ろう、夜道は危険だ」
図書室に行けば大抵黒子はいるだろうけど、一軍に上がってからは楽しそうだ。直接見た訳じゃないけどさっきの黒子の表情は少し明るくも見えた。昼休みもきっと友人と食べてるだろうし、ますます会えないな。本の話は彼がいいんだけど。仕方ない。
殆ど日も落ちているのにこの時間さえ暑くなってきた。