桜は二度訪れる
no.(015 / 22)  

神崎が久しぶりに屋上でご飯を食べようよ、と朝言ってきたので、その彼女たちが来るまで雨宮と私は自分たちの教室で待っていた。何故待っているかって彼女たちのクラスはまだ授業が長引いているらしい。よくある事だ、特にあの教師の場合は。
今雨宮は席を外している。待っている間は暇で、二人分のお弁当を机に乗せたまま空を眺めていた。雲は多いが晴れ。雨も降ることはないだろうし。

「なあ赤司妹」

どんどんと思考が部活寄りになっていた時、頭上で声がした。振り向くといつかのガングロ…もとい青峰大輝がいた。相変わらず黒い…じゃない背高いな。まさかこのまま話し出すつもりじゃないだろうな。この体制はさすがに首に悪いんだがな。
…そう言えば、黒と言えば…彼がいたな。彼は元気だろうか。他愛もない話でもして息抜きがしたい。

「何かな。ところで座ってくれるとありがたんだけど」

「あ、わり」

と言って前の席に後ろ向きで座った。向き直るなり心なしか申し訳なさそうな表情をしている。何を言おうとしてるのやら…。

「どうしたの?」

「これから俺らと屋上で飯食わね?」

「俺らって…バスケ部と?」

「おう。赤司が前より変になってさ、気になってんだよ」

「ふーん…」

兄さんが…いや、今は正直考えたくない。まだ兄さんの話を聞くと少し動揺してしまう。考えてしまうと混乱してしまうんじゃないだろうか。
それより、屋上にバスケ部たちが集まるのか…なら屋上で食べるという話はなしだな。理由は…まあ何とでも言おう。今日は食堂か、いつものように教室で食べることにしよう。屋上は日を改めて。

「にしても急ね」

「わりーかよ」

「そうね。私はすでに友人と約束しているし、そっち優先かな。気が向いたらまた誘ってよ」

行くかはまた別だけどね。
その言葉は胸の奥へと押し戻した。けど正直行きたくはない。きっといるだろうから。

「…なあ、」

「青峰くん!もーこんなところにいた!赤司くん怒ってるよ!ほら早く行くよ!」

「げっ、さつき…。…急に言って悪かったな、じゃあな」

何か言い掛けてた青峰くんより先に桃色の可愛らしい女子生徒が教室の入り口に現れた。青峰は驚いたような、げんなりしたような顔をしていたがすぐに諦めたような表情をし、挨拶もそこそこに教室を出て行った。出て行く時、丁度入れ替わりのようにに雨宮が帰ってきた。なんてタイミングがいいんだろう。それにしても神崎たち遅いな。もう終わっててもいい頃合いだと思うが…しょうがない、こっちから行くか。

「青峰と話してたの?」

「少しね。遅くなる前に神崎のところに行こうか」

青峰が言ってくれなきゃ危うく兄さんと鉢合わせするところだった。その点に関しては青峰に礼を言おう。
それぞれ弁当を持って神崎たちがいる教室へと向かった。

向かおうと思ったのは、兄さんがいないとさっき桃色の女子生徒が言っていたようなもんだったから。



◇ ◇ ◇



「ねー青峰くん」

「あ?なんだよ」

「さっき話してた子誰なの?」

さつきに呼ばれて屋上に向かって廊下を歩いていたら思い出したかのように聞いてきた。なんだ、視界に入ってないのかと思ったけどちゃんと見てんじゃん。あと妙にわくわくしてね?つかさつき知らなかったっけ、アイツのこと。

「アイツか…、アイツな。うん」

「もったいぶらないで早く教えてよ!」

「あー…別に…。アイツ、赤司の妹だよ」

「…へっ?」

マジで知らなかったのかさつきィ…。お前情報収集得意だったよな…。
さつきは本気で知らなかったかのような顔してる。まあ俺も人のこと言えねえけどな。

「…お前マジで知らなかったの?」

「うん…もしかしてみんな知ってる?」

「いるってのは大体の奴らが知ってるだろ。会ってるかは知らねェけど」

「そっか…」

さつきはそれ以上何も言わなかった。


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