友人Tの他言
no.(013 / 22)  

※第三者視点。




赤司征夜は陸上部の部長である。彼女はまだ同じ二年だと言うのに弱音も泣き言も一切言わず、しっかりと部長をやっててすごいなぁといつも思うのだ。自分も大変なはずなのに部員のことを一番に優先し、一切切り捨てない。
普通ここは使えないものは切り捨てるところなのだ。お前には素質が無いと、夢を切り捨てられる。他部員はまだついて行ける方だから切り捨てられずここに立てている。けど彼女はそんなことはせず、相手がもう無理だと辞めるまでとことん付き合う。それに部に関係ない、例の赤司征十郎目当てで入ってきた一年にも他一年と同様に接してまるで「何も知りません」というフリ。
そして勉強も出来る。テスト一週間前は図書室で勉強してるもの知ってる、彼女は努力家なのだと一年の頃から知ってる。私が分からないところも優しく教えてくれるし、基本優しい。

長くなっちゃったしごちゃごちゃしてるけど、要は一切弱みを見せない人なのだ。それが言いたかったこと。ほんのごく一部の人には心を許してると思う。多分。
そんな彼女の弱ってる姿というか普段からは想像できないような姿を一度だけ見たことある。あれは確か…部長会議のあった日だったかな。

部室に忘れ物しちゃって、部長が来る前に取っておこうと思って部室に行ったの。そしたら向こうから部長が走ってきてて呼ぼうかなって思ったんだけど、すぐに部室に飛び込んでガタンッと扉からしたから扉に凭れ掛かってるんだろうなと推測。
飛び込む前に見た彼女の顔は必至な顔だった。顔もちょっと赤かったし、それを見た瞬間何かあったんだなって思った。
我が部長に誰が何をしたのか気になって、悪いとは思いつつもこっそり扉の近くに言って聞き耳を立てた。
小さすぎてなんて言ったのか分からなかったけど、すごく泣きそうな、辛そうな声が聞こえた。その後扉から離れたみたいだけど。

このまま入っちゃおうか迷いつつ、とりあえず部室から入って急いできたと言うのを演じようかな!という結論に至った。
足音を立てないように慎重に離れて、ダッシュで部室の扉を開ける。

「わっ」

「えっ」

着替えてたようで突然扉が開いたことに本当に驚いてた。私も驚いた。そして私は見てしまったのだ。
ほんのりと上気した頬、ほんの少し潤んだ瞳。ただ事じゃあない。だってね?胸揉まれても冷静に対応する彼女が、あんな表情するなんて。まあそりゃあ遊びだったけど。
何も見なかったことにして、私はいつもの調子で部長に話して一足先に戻った。

彼女に何があったか知らないけど、彼女を泣かすヤツは何が何でも徹底的に潰す。それが兄だったとしても、だ。でもあの人基本優しいからそんなことしないと思うが、例えだから。

征夜に万が一のことがあったら心配するし困ってしまう。こんな素敵な人たちに出会えたんだもん。大事にする。
征夜のことは私が守るから、征夜は普段通りにしていてよ。


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