友人Kの独り言
no.(012 / 22)  

※第三者視点。




赤司征夜とは一年の頃からの付き合いだ。新入生代表挨拶の時前に出ていた赤司征十郎の双子の妹らしく、当時兄の方と同じクラスだった私はどうしても兄の方のイメージが強かった。どこか浮世離れしてる感じ。不思議と誰も寄せ付けないと言うか、多分その時は中々誰も近づけなかっただけってこともあると思うけど。
偶然と同じ部になった時は驚いた。噂では兄の方はバスケ部に入ったと聞いていたから、てっきり妹も女バスに入ると思ってた。だからすごく意外だった。と同時に可笑しくも思えた。すごい思い込みだなって。

「…?私の顔に何かついてるか?」

「え、あっ、ううんなんでもないよ」

意外すぎて凝視してしまったほどだ。そしてこれが彼女と初のコンタクト。

同じ部を通して分かったことは兄よりも雰囲気は柔らかい事。女独特っていうのかな、そんな感じ。
二つ、話しやすい事。雰囲気に釣られてつい話しかけてしまったのが始まりだけどとても話しやすかった。棘々してるとか怖いとかそういうイメージもないし気が楽というか…よくわからないや。
彼女の周りには数人の人がいつもいるようになった。対して兄はそんなにいない、と思いきやいたわ。双子だから、似てるとこも沢山ある。まぁそれは置いといて。

話は変わって、何度か彼女が呼び出しを食らってるとこを見たことがある。一度だけたまたま居合わせたこともあった。その時は兄の事についてだったが、聞いていて本当めんどくさい話だった。
確か男バスの先輩方で兄について苛立っていたからそれを妹である彼女にぶつけようとしていたんだっけ。

「だからーちょっと付き合ってくれるだけでいいの、ね?」

「お断りします」

後で一緒になった時、彼女は酷く疲れた様子だったのはまだよく覚えている。
あの話は30分程度で終わったが、酷い時は休み時間を過ぎても続くらしい。出来てる兄を持つと妹も大変なんだなと思った。他人事みたいだけ他人だし。
大体はいつも平気な顔して頑張ってるらしいが、傍に居ないとその頑張りも分からないと言うものだ。今はもうどれだけ彼女が頑張っているかなんて一目瞭然だけど。

そんな彼女の様子がおかしくなったのは去年の冬頃だった。
部活中なのに溜め息付いたり、彼女にしては珍しく、どこかぼーっと上の空だったり。…いやそういうことなら秋頃だったかな。風邪?とも思ったこともあって額に手を付けてみたりもしたが至って平熱。彼女も特に辛くはなさそうだった。
けどどこか確実におかしかった。

そして先日の部長会議のあった日から、彼女の記録は可笑しいくらいに下がった。これは何かあったに違いない。それは誰もが思ってる事。一部の人間はこそこそとバカにしてるけど彼女を甘く見ちゃダメだよ。ここから絶対元に戻るんだ、彼女は。もしくはそれ以上の記録を出すだろう。分かってるから、知ってるから敢て何も言わないけど。

「もう一度基礎からやり直すよ」

そう言った彼女は副部長に後を任せ、自分は校内を走りに行った。

仲間同士で何があったのか予想を話し合うけど結局一つも結論が出てこない。本人に聞いても「何もない」の一点張りで。いやあったらしい。仲間の一人が言ってた。けど自分で解決すると譲らないらなかったらしい。


その後約1週間で記録を戻し、むしろ私の予想通り元の記録を超えたけど、相変わらずおかしい。
なんて言うのかな、寂しいような恋しいような、そういう表情を時々見せる。
ぼーっと眺めてる方を見ても何もないから多分考え事だろうけど。

何を言っても聞かないから私らは願う。一日も早く、いつもの征夜に戻って欲しいと。何が征夜を揺るがしているのか気になる、今もまだ不安定。
けど周りには私たちがいるからね。何かあったら言ってくれていいんだよ。

もっと頼って。もっと周りを見て。
私たちが貴方を信頼してるように。
一年からの付き合いでしょ?


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