何もない日
no.(09 / 22)  

実のところ最近視線をよく感じる。それは部活中だったり、教室で神崎たちと話している時とか。
自然を装い辺りを見回してみるけど、その時にはそのような視線は消えている。
最初は特に気にしていなかったけど、こうも続くとちょっと気になる。変なのじゃなきゃ…いいんだけど。



◇ ◇ ◇



「入念にストレッチして、終わった者から解散。お疲れ様」

部員全員の前で号令してコーンなどの体育用品を片づける為その場を離れた。2、3個重ねたところで後ろからコーンを取られた。

「…神崎」

「私たちストレッチ終わったからあとはやっとく。征夜ちゃんストレッチしてきなよ」

「もう少し、」

「ぶっちょー!ストレッチしよー!」

「分かった、分かったからそんな大声出さないでうるさい」

私が部長になってからこの子たちは特に気遣ってくれることが多くなった。…頼りになるわ。
残りのコーンは神崎たちに任せ、田沼の元へ行く。どこからあんま声でるんだろう…。

「ぶちょー最近頑張りすぎだよー」

「そう?でも頑張らなくちゃいけないでしょ」

「私らを頼っていいんだよ」

「そうね、今回みたいにまた頼るよ」

背中を押してもらいながらそんな会話をする。田沼はバカだけど、とても器用なやつで実際何度も救われている。
私が頑張る理由は舐められたくないから頑張ってる、のに等しい。
先輩たちは私を主将に任命した。裏で密かに会議していたのだろう、誰も反対はしなかった。二年も含めて。会議中はきっと反対もあった。でもそれを丸めて私を上に立たせた。前は兄さんのせいとか言ったけど、もしかしたらそれだけじゃないのかもしれないと最近思い始めた。ただの現実逃避でもあるが…。
直接聞いたことは何度もあるが秘密と言われてはぐらかされてきた。もうこの件については考えない方がいいかも。

「はい、交代」

「はーいたたたっ!」

「嘘おっしゃい」

「バレた?」

「私に田沼の嘘が通じるとでも?」

「…あっはは…ぶちょー厳しーっす」

「どこがよ」

軽く背中を押しただけだし。
田沼の冗談は見え見えすぎて、すぐにバレる。かなり気は紛れるがこいつわざとか?
まあなんだっていい。

「片付け終わった?」

「終わったよ。着替えて帰ろうか」

「明日はもっと走ろうね!」

「田沼は休むということを覚えたらいいよ」

「なら部室まで全力で走っていけ」

「ちょっとぶ…征夜!余計なこと言わないで!」

「行ってくるー!!」

「まあいいじゃない。あれで早さをキープできてるんだと思うよ」

「…えー…」

彼女たちだけでも、私の側にいてくれたら心強い。

「…田沼は走ってる時が一番幸せそうだ」

「違うよ。私たちと一緒にいる時が一番幸せなんだと思うよ」

「そうなの?」

「雨宮が言うんだから間違いないよ」

ナチュラルに嬉しい事を言ってくれるな。ちょっと照れちゃったじゃないか。
まあ表には出さないけどね。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -