迷って巡る軌跡を辿れば

Step.38 君は 1/2

今日の天気は雨。じめじめとした湿気と、雷でも降りそうな雨の量の雨粒が衣服を濡らしていく。おかげでもう体は充分にびっしょりと濡れて、衣服がべったりと肌にまとわりつく。誰に触れることなく地面へと落ちた雨粒が足に跳ねるのもお構いなしに私は見下ろしていた。
見下ろす先にいる人物は、今しがた最後に残っていたぬくもりとおさらばしたところだ。今はもう十分に冷めきっていて二度と目覚めない。涙すら分からない水が頬に伝う。もしかしたら雨かも知れない。

私は人を殺した。
別に強い殺意があったわけじゃない。むしろ好意を抱いていた。そんな相手からの頼み事…最初は強く断った、けど何度も、何度も何度も強くお願いされ、私は折れてしまった。折れちゃいけない、のに。

ギルバートは大粒の涙を流しながら放心状態、
アリスは何が起こっているのか分からず、こちらも放心状態、
シャロンは隣に支えながら声を殺し泣いて、
ブレイクはシャロンを支えながらも静かにこちらを見ている。


なんで私は今泣けないのかと空を見上げた。相変わらず、薄暗くて不気味だ。
みんなが泣いている理由、それはオズが死んでいるから。私が殺した人。私に強く頼み込んで「ありがとう」の一言を残して死んでいったオズ。右手に持つ刀はオズの血がべっとりついている。幸い雨に流されずほぼその時のまま残っている。まあ当たりにくい、ってのもあるでしょうけど。
今私はどんな表情してるだろう。…ああきっと“笑って”いるんだろうな。


『泣くのはやめて“みんな”で屋敷に戻ろう?』


いつまでもこの雨の下にいる訳にはいかないよ。

私の言葉に全員が振り向き頷くとニヤリと笑った。



なんかもう、どうだっていいや。


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