「勝負あり…ですネ」
『……ちっ』
結果、どうやら彼の方が一歩早かったらしく今回は珍しく負けた。やはり同じ手は食わないか…。コイツなら騙されそうなのにな。まあ仕方ない。
「ではなまえサン、Trick or Treatデス」
『…はぁ』
その場から少し離れて上にある戸棚を開け、そこから高さ5センチくらいある箱を取り出した。元の位置に戻ろうと回れ右をすると、ブレイクはその様子を見ていたらしく目が一瞬だけ合った。…まあだから何だと言うのだけれど。小さな箱を持ってブレイクの前に突きだす。当然だけど彼はよく分かってなく、あざとく小首を傾げた。
「…えっと…?」
『…トリート。うんと甘い、お菓子』
言い終わると長い袖から出てきた細い指が、そっと小さな箱を受け取る。いつもと違う様子に警戒でもしてるのか?失礼な。ちゃんとお菓子ぎっしりですよ。
「今ワタシが警戒してるって思ったでしょう?」
『ぐ…』
「くく…」
片手は口元に寄せいつものような笑いはするが、もう片方の手には小さな箱の姿。これは大切にされてるって思ってもいいのかしら?
「ありがとうございますなまえさん」
『…いいえ。どうしたしまして』
小さな箱は大切に袖口に消え、満足そうにしているブレイク。作った甲斐があったと言うもんだ。
「さて…」
『彼らはいつ入ってくるのかしらね』
「そっとしておきましょうカ」
『あなたはさっさと帰れ』
「エー」
どうせついでだから
(あの二人早くくっつけばいいのに)
『誰がくっつくかよ』
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ハロウィンに書いたものですが過ぎてから書いたもの…だったかな。
修正 9/15