迷って巡る軌跡を辿れば

Step.3 まぶしい人 1/28

庭には小さいが綺麗な池がある。深さは足首程度と低いが、そのおかげか水はとても綺麗。そのせいもあって池が綺麗だと評したのだが。
その池に珍しく真っ白な鶴が水浴びをしているのを偶然にも目撃し、今もこうして鶴の水浴びを眺めている。結構大きな鶴だが、あの深さの池じゃあ満足しないと思うんだよね。気候はいじれるけど庭の細かいところはいじれないもんか。
っていうか鶴って夏の間いないんじゃ…。冬にいるってそんなイメージ。だから夏は苦手なはず。うちの、というかこの鶴は大丈夫だろうか。

「ねえ鶴丸」

「おおっ!?きみか、驚かされたぜ…」

「暑い?」

「ん?そうだなあ…少し蒸れるな」

突然話しかけたせいか、或いはここにいたのに気付かれてなかったか、鶴丸は一瞬動揺したもののすぐいつもの調子に戻った。驚かされる側が、意図せずではあったが脅かす側になるのも中々面白い。
そんな気持ちは表に出さず、ただ淡々と質問すると少し悩む素振りを見せてから鶴丸は答えた。

現在の気候は夏、に近い恐らく初夏くらいの暑さ。それでもこの鶴は暑いと思うか、そうか…。
鶴丸は内番服の腕と足の裾を捲り池に入っている。かくいう自分は審神者正装服でもなく、普通に現代の服。Tシャツに短パン、という如何にも夏っぽい恰好。確かにちょっと暑いがここまで薄着にする必要もなかったと後々思う。自分の今の服装と鶴丸の格好を見て、鶴丸に現代の服を与えてみようかと考えるが、いきなり服をどうこう言うのもちょっとなぁ。もう少し暑くなったらこの話を持ってきてもいいかもしれない。

未だバシャバシャと足を動かし続ける鶴丸を縁側で見ていた。不思議と見飽きないのが逆に不思議なくらいだった。不意に足を大きく振り上げたことによって水しぶきが宙を舞う。それが腰くらいの高さまで来て鶴丸が「おお」と声を洩らした。何が面白かったのかその後も足を大きく振り上げ、水が高く飛ぶさまを見ている。そんなことしたら周りが水浸し…いやそれよりもバランスを崩してしまうかもしれないぞ。滑ってばっしゃーんなぞ…怪我でもしたらどうする!

「鶴丸ー足元に気を付けてー」

「大丈夫だ!それより主、見てみろ!」

注意したものの殆ど聞いちゃくれない。それよりってお前…人が心配してるのに…。だが目は正直だ。見ろと言われて素直に見ているのだから。
片足を上げもう片足でバランスを取り、池の水が宙へ飛ぶ、その様を見ていた。今までより一番高く飛び、それはもう鶴丸の背も越え、日差しが反射しきらきらと輝いて見えた。その奥でにやりと笑う鶴丸が見える。その姿もきらきらしているように見えて、熱くもないのにくらくらする。ここは陰になる場所だ、熱中症になんて早々なるはずもないのに。

「どうだ、高く飛ばして見せたぞ!」

「…それなんて遊び」

「きみもするかい?意外と楽しいぞ」

「見てるだけでいいや」

楽しそうに笑う鶴丸を見ながら滑っても知らないぞと内心毒づいた。悪戯付きで人生には驚きが〜とかいうサプライズじじいだが、こういった子供みたいなこともするんだな。未だ池で遊ぶ鶴丸を眺める。
服は所々濡れてるみたいだが気にしてる様子はないらしい。それほど夢中なのか、それすらも気持ちいいのか。ぐるぐる回ってみたり、止まってみたり、また水飛ばしてみたり。…そろそろ池の水が無くなるんじゃないだろうか。

また一層水しぶきが上がる。先程と同様日の反射できらきらしてる。
ああ、ほんと、どこまでも眩しい人だ。




だから目が離せない

「池の深さ調整とか出来ないかなぁ」

「出来るぜ?」

「マジか」


20150527
水しぶきがきらきら、鶴丸きらきら。それが書きたかっただけ。しぶにも同じもの載っけてみました。名前変換ないし、大丈夫かなって!名前は違うけど、同じ人ですよ!


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