迷って巡る軌跡を辿れば

Step.7 ▼ ふいうち! 5/28

うちの彼氏の自慢をしろ、と言われたら、まず成績優秀、美形、優しい。みたいなテンプレで大抵は返してる。よく「当たり前」とか「いいなー」とか言われる。それは彼氏を知るものも含めて大体そう。
でもたまに「優しいんだ、意外」なんて事も言われた。まああまり喋らない人だから、そう思えるんだろう。
でも本当はもう一つ自慢できるところがある。


「……」

『……』

「…ピカ?」


“可愛い”ということ。これは付き合う前から知ってる事だが。
うちの彼氏はすごく、ううんとてもピカチュウを溺愛している。愛してるじゃない、溺愛。ここテストに出すよ。
もう「私(彼女)2番目じゃね?」ってくらいに溺愛しているのだ。いや多分2番目だろうけどレッドだから許す。
それほどまでにピカチュウを愛している彼、そうレッド。
部屋で一緒にいる時にしか彼の“可愛い”ところは見られない。それが見たいがために、休日のほとんどはお家デートである。


「ピーカ」

「…………」

「ちゃあ」

「……!」


皆さんお分かりでしょうか、ここですここ! 彼氏がすごく可愛いと思える瞬間!ピカチュウと戯れてる時!ああほんと可愛くて仕方ない。鼻血は出さないけど表情は崩さないよう頑張ってます。ここ褒めるとこ。

私はレッドのそういうギャップに惚れたのだ。いつも無口無表情のレッドという友人が、パートナーと遊んでいるところを偶然見てしまったあの時から。きっとこの偶然がなきゃ人生8割損してた。いやいやほんと。

というかピカチュウ溺愛者なのに私という人間と付き合ってるってことが謎だ。今更すぎるけど。そりゃ告白は私からで、ちゃんと言った。レッドのそのギャップに惚れたと。出来れば長く見ていたいので私と、って。okもらった時は嬉しくて何も考えれなかったけど、なんで今も一緒に入れるんだろう。まさか家にも上がらせてもらえるとも思ってもみなかったし。

ちょっと意地悪しちゃおっかなー。でも簡単な問題。


『ねーレッド』

「…ん?」

『私とピカチュウ、どっちが好き?』


よくあるこのセリフの質問。それでレッドに問う。下手すればレッドに引かれかねないが、レッドも、私がどうしてレッドに告白したか分かってるだろうし、この質問の意図も分かるだろうなあ。
だからきっと答えも「ピカチュウ」と返って来るはず。いや返って来なきゃ。言っておくが私は全く傷つかないよ。ピカチュウに焼きもちすら妬かないんだから。むしろピカチュウとレッドかわゆす!ありがとうございます!な状態だからね。でも言いすぎるとそれっぽく聞こえちゃうんだっけ。まあいいや。

質問してニヤけてしまう口元を手で隠しながら、レッドを見つめる。時折ピカチュウの様子も見ればあら可愛いレッドをじっと見上げてた。ピカチュウもレッドの答えが気になるのかな。
レッドは私の顔をじっと見ながらそのまま考えてた。傍から見れば見つめ合ってるみたい。…ってあれ、レッドと目が合うなんてすごく久しぶり――。


「…なまえ」

『ですよね!そう来るとおも…え?』

「だから、なまえ」

『っ!?』


なんということでしょう。予想と真逆の答えに混乱中。れ、レッドが私を選んだだと…!?
未だ混乱する私を他所にレッドはまたピカチュウとじゃれ始めた。ピカチュウも何もなかったかのようにレッドと遊んでいる。ああ可愛い光景のはずなのになんでかな、今全く見れない。てか顔見れない。

漸く理解し、落ち着きを取り戻した私はレッドたちを見ようと顔を上げたのだが、何故か目の前に綺麗な顔が目の前にあって、て近い近い近い!!


「好きじゃなきゃ、家に入れてない」


余りの急な発言に目を開かせていると、ちゅ、と軽いリップ音が聞こえ、飲み物を取ってくるとレッドは部屋を出て行ってしまった。また一瞬頭が真っ白になっていたが私だが今度は比較的早めに戻ってこれたようだ。
俯いた私の目に飛び込んで来たのは、ついさっきまでレッドの膝にいたピカチュウ。私の膝に手を置いて「ピーカ?」と笑って首を傾げてきた。……か、可愛いいいいいいいいい!!
思わず衝動的に抱きしめると腕の中で苦しそうな声が聞こえた。知らない知らない今君で自分の顔を誰にも見られないようにしているんだから!こっちは必死なんだから!



こうかは ばつぐんだ!
(…なまえ、締めすぎ)
(えっレッド!?わ!ピカチュウごめんね!)
(ピ…)


20140731


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -