迷って巡る軌跡を辿れば

Step.9 空に埋もれる夢を見た 7/28

久しぶりに夢を、見たの。
ちょっと成長したであろう私たちは、久しぶりに家に集まってる話している様子。だけどどうしてか一人、足りない。
トイレかな、と思ってじっと見てるけど誰も出てこないし、むしろ誰かが入って出てくる。やっぱり一人いない、足りない。
叔母さんは困った顔して笑ってその様子を見ている。
誰がいないのか、少し大きくなってる自分たちを見上げる。見渡して、誰がいないのか。あの色が足りない。
どうして、いないの。ねえ、――――





目が覚めた。そこには見慣れた天井があって、この時間には珍しい話し声がする。もそもそと布団から起き上がって、声の元を辿り、見慣れた当たり前の色が2色分、そこに見つけた。ほっと息を吐いてると黒が私に気付いた。


「あ、おはよ」

「おっ、はよ!ぐっすりだったな…ておい?」


釣られて振り向いた茶色はにこり笑ってたかと思うとすぐ眉を寄せた。その様子に頭が追い付けないまま、じっと見てる間に2色、二人はすぐ目の前に来ていた。
茶色ことグリーンは私の顔を覗き込む。え、ちか、


「お前どうした?何で泣いてる?」

『…え?』


確認するように頬に手をやると濡れていた。はて、私はいつ泣いていたんだろうか。ぐいっと袖で涙を拭うと黒ことレッドがその腕を掴む。何するのの意を込めて軽く睨むがレッド知らんふりしてもう片方の手で私の頬に触れた。ひやりとした手が冷たくて気持ちいい。


「怖い夢でも見たか?」

「どんな夢だ?」


怖い夢前提で話すグリーンに苦笑しつつ、さっき見た夢を思い出してみた。確か夢の内容を口に出すと正夢にならなくなると言う話があったはず。怖い夢、違うな。あれは寂しい夢だった、と思う。怖くもあったが、それ以前に寂しかった。でもそんなこと私が分かるはずがなく否定もせずに流れのようにぽつり話し出す。


『あのね、私たちが大きくなってるんだけど』

「うん」

『大きくなっても、この先もみんな一緒にいるって言ったのに』

「…うん」

『レッドだけ、いないの』


グリーンと私らしき人物はいた。けどレッドだけはいなくて。その事実がとても恐ろしくなった。
どうしていないのかな、旅に出るのは少し前から準備してる。旅をして、レッドの身に何かあったんじゃないだろうか。そう考えるのも恐ろしくて。また、視界がぼやけてきた。


「大丈夫、僕はここにいるよ」


ぼやける視界でも、レッドがこちらを見て笑ってるのだけ確認できて。やっと視界が晴れたと思ったら頬に暖かいものが伝った。それさえ拭うのを忘れてレッドに本当?と何度も聞く。


『絶対に?』

「うん。絶対」

『またみんなで遊ぶんだからね?』

「ポケモン強くして、この町でやるんだよね」

「その約束のためにもレッドがいなくなるわけねーだろ!」

『…そうだね!』


グリーンがレッドの肩を寄せてばしばし背中を叩きながらにかりと笑う。レッドは痛そうにグリーンを見てたけど、思い出したように私の涙を拭ってくれた。いなくならないようになのかは分からないけど自然と、レッドは私の涙拭いてくれるもんねと笑うと二人はポカンとしたかと思えば、レッドは苦笑しつつそうだねと、グリーンはからかい気味にそうだなと三人で笑い合った。







目が覚めた。視界には白い天井がいっぱい広がって、辺りはシンと静かだ。起き上がって、なんとなしに手を目元に寄せてみた。あの日の様にそこは確かに濡れていて無性に懐かしくなった。


『はは…』


どうして今なんだろう、どうして今更なんだろう。

旅に出る1週間前。私の我儘でレッドとグリーンと私の家でお泊まり会をした。夜遅くまで沢山お喋りして…とても楽しかったなあ。その翌日、レッドがいない夢を見て、泣いてしまった私を二人は慰めてくれて。


“大丈夫”

“僕はここにいるよ”


嘘吐きね。君はいないじゃないか。
旅に出て1年も経たない内に、彼は突然姿を消した。
それからもう3年、経ってしまった。今何処に居るか分からない君はどこで何をしているのやら。


『結局正夢じゃないか』


言いようもない虚無感に、逃げるようにまた夢の世界へ。



空に埋もれるを見た
(目が覚めたら、みんながいてみんな笑ってほしい)


thanks:カカリア


20140619


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