迷って巡る軌跡を辿れば

Step.15 それって偶然 13/28

幼い頃から相棒のラプラスと一緒に過ごしてきた。たまたま生まれた日にち、時間が一緒で、まるで双子みたいねと笑い合う若い両親の顔を、テレビ越しに見た記憶はまだ新しい。それからずっと一緒にいたラプラスを連れて旅をしている。

ある目的のために。






彼女を初めて見たのはサンヨウシティだった。
初めてのジム戦ということを踏まえ、多少わくわくしていた心は、ジムから出てきた彼女によって後回しにされた。
彼女はバトルに勝利したらしく、バッチを眺めながら出てきた。のにちっとも嬉しそうじゃない。初めてのジム戦のはず、なのにどうしてなのか。それどころかため息すら出てくる始末。その訳も聞きたいが、今はジム戦にチャレンジして、それからにしようとすれ違うように中に入った。

次にあったのはヒウンシティだった。大都会の大通りで彼女は通行人など気にせず、呆然と立ち尽くしているようだった。無意識に俺の足は彼女に向かっていてそこで初めて言葉を交わした。


「ねえ」

『…?』


心底どうでもよさそうに振り向く彼女。俺は普通にどうしたのと聞いたはずなのだが、彼女は突然慌てて北に向かってしまった。残された俺は暫く先程彼女がそうしてたようにその場に立っていた。

漸く会えたと思ったら街でプラズマ団の一人とバトルをしていた。結果は彼女の圧勝で、負けたプラズマ団はそそくさと逃げていった。そんなプラズマ団に待てと言うように手を伸ばすも、その手は空を掴んだ。

彼女は一体何がしたいんだろう。

ジムバッチを手にしても喜びもなかったし、通行人無視して突っ立ってるし、プラズマ団に手を伸ばすし、で。まあ人それぞれ喜び方はあるだろうけど。
俺は今しかないと思い、声を掛けた。


「こんにちは」

『…』

「また会ったね。覚えてる?」


それに一つ頷いてくれた彼女に安堵しながら本題に入った。今度はどうか逃げないでほしい。


「君、何が目的で旅をしてるの?」


あれ、おかしいな。こんなこと言うつもりじゃなかったのに。慌てて訂正を入れようとする前に彼女が口を開いたのが先だった。


『父を、探してるの』

「…父親?」


それにまたこくりと頷いてから続けた。それから俺にとっては衝撃の事実が告げられる。


『私の父は、その…プラズマ団に入ってるらしいの。確証はないけど、昔いなくなる前にプラズマ団がどうこう言ってたらから…それで』

「それで、見つけてどうするの?」

『連れて帰るの。馬鹿らしいでしょ』


にわかに募る怒りに必死に蓋をしているのであろう。強く握られた拳は震えていてまるでそれ以上言葉を我慢しているようだ。俺はその様子を黙ってみて、この子は敵ではないんだなと、あれらとは違うんだ。


『君のこと知ってるよ。行く先先でプラズマ団を懲らしめてるらしいね』

「懲らしめてるって言うか…」


まあ向こうからバトルしかけて、向こうが負けてるだけだけどね。喉まで出かかってた言葉を軽く飲み込んで偶然勝ってるだけだよと言っといた。でもそれも間違ってないかもしれない。


『…君にも手伝ってほしい』

「ん?」

『私の父探しを』

「…いいけど、俺わからないよ」

『私の父はクロバットを持ってる。だからもしクロバット持つプラズマ団がいたら、教えてほしい』

「…うん、わかった。じゃあ見つけたらライブキャスターに…の前に番号交換しよう」

『うん。…ありがとう』


もし私の父がいたらフルボッコにしていいからね。

そう笑顔で言葉を残して次の街に行ってしまった彼女。名前を聞くの忘れたなと頭を掻いてライブキャスターを覗くと見慣れない名前が一覧に入っていた。きっとこれが彼女の名前なんだろう。次会うときは、名前呼んでみようか。



これは必然
(…あ、クロバット色違いだって言うの忘れた)


20140519


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