迷って巡る軌跡を辿れば

Step.16 いつしかの君を 14/28

変わらない“未来”なんてあるのだろうか。
きっと答えは“ノー”だろう。
いつだって君が隣にいない。いつだって君はあの子の隣にいた。いや、あの子が隣にいたんだ。私の居場所なんてなかった。

私はあの子が嫌いだった。いつも君の隣にいたから。
それに君は「違う」と言うけど違わないよ。どちらにせよ君はあの子の隣にいたんだ。

私が毎日話しかけにいっても、あの子の友達になって一緒に話しかけてみても、どんなに勉強しても、何度チャレンジしてみても、私の隣に君は来てくれなかった。いつだってあの子が死んでしまう。

一度だって君は私を見たことはない。
一度だって私の名前を呼んでくれたことはない。
一度だって私を覚えていた日はない。

何度繰り返しても君は私に笑ってくれたことはない。
何度繰り返してもあの子が死んで君が泣く姿の未来しかない。

どうしても未来が変えられない。私が何度もつまらない日々を繰り返させても尚、君はあの子一筋。

別に、それすらよくも思えてくる。





私はあの子が大好きだった。笑ってる顔が何もかも吹き飛ばしてくれる。
私と彼女は幼馴染みだった。クラスはいつも違ったけど、それでも私達の仲は昔と変わらずずっと仲良しだった。

“目”にした未来が信じられなくて、否定して、一人にしたくなくて――なりたくなくて――追いかけた。

「それは駄目だよ」とあなたは言った。私はそれすら無視してあの場所に立った。これでいいと自分に言い聞かせて。飛び込んだ白い世界。目の前に一人ポツンと立つ魔法使い。あの人がくれた選択肢。


「選べ。“今”をとるか、このまま戻るか」


そんな贅沢な選択。私は迷いなく言った。


「戻る」


魔法使いはそれだけ聞くとどこかへ消えてしまった。
私の世界は真っ暗になった。



目を覚ます。どうやら自分の部屋のようだ。夢を見ていた気がする。
でも気付いてしまった。あなたがいる、この世界を。

やり直す。それが私の選んだ道。何度も失敗するかもしれない。その度にまた落ちてしまうかもしれない。
でも、それでも。

けれど何度やったってあなたは死んでしまうの。その度に原因は何と考えて、もしかすると君にあるんじゃないかって思ったの。好きな人の悲しむ顔はこれ以上見たくない。彼のことは初めて会った時から好きだった。つまりは私の一目惚れ。お恥ずかしい。

不本意だけど君をどうにかしようと結論付けた。君の心さえ手に入れば、あの子は死なないんじゃないかって。ずっと笑ってくれるんじゃないかって、そう思ったいたのに。

私はどこで何を間違えてしまったんだろう。
わざと嫌いになってみたり、偶然を装ってみたり、…そう、一度だけ死んでみたりもした。
どんなことをしても君の、君と彼女の未来は変わらない。

目の能力だって手に入れたのに。
この何百回、何千、何万と繰り返してきた日常は、いつ違った未来をくれるのか。





ねえシンタロー、アヤノ?
私は君達がずっと笑ってくれる未来を作り出しては駄目なの?それとも全て私が悪いのかな…?
少し疲れちゃった。





「でも世界はさ、案外怯えなくていいんだよ」


暗い世界の夢の中。赤い彼女がそっと笑ってくれた気がした。





(追いかけて、追いかけて)

(それを陽炎がひっそり嗤う)


20140519
雰囲気です(震え声)


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