迷って巡る軌跡を辿れば

Step.20 この世界の人じゃない 2/3

ここ、帝光中学校はすごい。何がって色々すごい。

絶対染めてそうな髪色なのに地毛だというし、運動部、特にバスケ部が異常なほど強い。なにそれどこの漫画ですか。そういえばスラム○ンクとか黒子の○スケとかバスケ漫画だったよなあ…友人がきゃーきゃー言って教えてくれた。けど私ドラマ派なんで漫画に興味はない。読めと言われたら読むけど。
スラムダ○クにこんな学校、というかまずユニフォームからして違うから黒子○バスケ…かなあ?えーマジでー?

なんて一時期考えてたが一瞬にして辞めた。二度目の中学生だよ、楽しまなきゃ。ただ精神年齢2○歳の私には結構きついんだけど。



出会いって突然。それは幸か不幸か。
今の彼氏と出会ったのは委員会の集まり。昔の死んでしまった彼と出会ったのは会社の会議。とても似ている。
ふと視界に入った赤が、彼の雰囲気が、どこかあの人と似ていて、視界に入った瞬間持っていたものを落としてしまうほど衝撃だった。焦って床に落ちてしまったものを取るフリして必死で涙が出ないよう下唇を噛んでた。

いつからか、目を付けられていたみたいがそんなことなど知らず自然と私は彼を避けていた。もうあんな思いしたくないから。
でもそんなある日。


「こんにちは、みょうじさん」


どういうわけか、向こうから来てしまった。夕日がきれいに教室を照らす放課後。
「ちょっといいかな」なんて聞かれて何も答えれないまま彼は近くの机に軽く腰掛けた。軽く腰掛けてるのに絵になる人だと、そう思った。っていうか人の机……。
今は向き合っているものの、どうしても顔は見れない。目を合わせたら本当に泣いてしまう。それも人の顔見て泣くなんて失礼にもほどがあるし。


「どうして俺の顔を見ないの?」

『イケメンに耐性がないだけです。お気になさらず』


あはは、なんて乾いた笑いが出る。まさかそんなこと聞かれるなんて思ってなくて咄嗟の嘘で誤魔化した。彼は時に気にした様子もなくただ「ふぅん」と頷いた様子?だった。我ながらすごい…のかな。騙しちゃったけど。
けどすぐにふっと笑って(そんな雰囲気)「じゃあ、」と言ってこちらに歩み寄ってきた。


「どうしてそんなに泣きそうな顔をする」


その言葉に全神経が心臓になったんじゃないかってくらいに跳ねた。泣きそうなの?私。


『そんな、』

「もう一つ。どうして俺を避ける?」

『!』


気づかれてた。そんな、自然にしてたはずなのに。彼は少し鋭いのかもしれない。やってしまった、やってしまった。
でも今考えてみれば不自然だったかもしれない。ああどうしよ。
ていうかなんで私こんなに慌てる必要がある?昔の彼に似てるから?
とにかく弁解しよう。思っても声が出ない。


「…すまない、少しからかいすぎたな」

『え?』

「よくあるだろ?好きな子ほどいじめたいと」

『え?うん…………え?』


え、なに、この人今なんて言った?待って話の流れが見えない。
軽く混乱する私がおかしいのか口に手を当てくすりと笑うこの人は美形なだけあってやっぱ絵にな…あ、目が合った。


「ごめんね、君が好きだよ」


好きだよ、そういう割には少し泣きそうな顔をするこの人。どうしてあなたまで泣きそうな顔をするのかな。どうしてごめんねなんて言うのかな。
私もう知らないからね、泣いたって、君のせいだから。
目が合ったと向こうが理解すると泣きそうな顔のままふにゃっと笑う。


「やっと見てくれた」


普段大人っぽい雰囲気を出すこの人からは想像もできないまだ幼さがある笑顔。一瞬、ほんの一瞬だけあの人が出てきた。
なんだろ、なんだろう。この人といると、酷く安心する。
なによりいつの間にか抱きしめられている驚きよりも、懐かしくって温かくて泣いてしまったことしか覚えていない。



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