大きな試合を終えた選手は皆控室で付かぬ間の休息を取っている。
試合の結果?んなもん聞くもんじゃないよ!
マネージャーである私は、少しの間控室には入られない。けれど一定の時間を過ぎれば入ることは許されている。これ、主将が作ってくれた規則!すごいよね!
時間が過ぎたので我が校の控室前に来た。深呼吸も心の余裕もした。…よし!
あくまでもいつも通りに。扉が壊れるんじゃないかっていうくらい勢いよく開けた。
『お疲れ様でーす!』
バンッと音が鳴ってしまったが気にしない。ごめんなさい。
中にいた部員はびくりと肩を揺らし、私に目線を向けている。その中で遅れて主将が私を見たが、目が合った瞬間逸らされた。…めげないぞ。
いつものように部屋の中央に行き、さり気なく彼の前に行って大丈夫かの意を込めて肩に手を添えた。彼はチラリと見たがまたすぐ逸らされた。大丈夫と取っていいんでしょうか。
『そろそろホテルに戻りましょう。監督は先にバスを取りに行ってますから、集合と同じ場所で待機とのことです』
お手伝いしまーすと元気よく声を掛ける前に皆それぞれ支度を始める。おっと皆さん無視ですか?無視なんですね?めげませんよ!!
とか思ってたら皆一気に居なくなってしまった。あれ!?いつの間に!
誰も居ない、私ともう一人を抜いて。そう思ったところに腰に温もりを感じる。
誰かなんて見なくたって分かるよ。
『無理はしないでね』
タオル越しに頭に手を置く。そのまま撫でてたら急に腰に回された腕に力が入り、引っ張られたかと思うといつの間にか彼の膝の間に膝で立ってた。
あれーと疑問に思う暇もなく私のお腹あたりにに顔を埋める赤司くん。珍しく甘えたな赤司くんに悟られないように笑いながら手を首辺りにまで移動させる。
『どうしたの?』
「…ん」
言いながら頭を抱きしめる。苦しくないかな。でも苦しかったら引きはがすよね。試合終わって少し経つけどそれでもまだ暖かい。冬の今はとても暖かい。
暖かいなーと軽く目を閉じていたらお腹に指の感触がする。…んん?
「冷たいな」
『んっ、ちょ、待った』
いつの間にか服の隙間から指が入ってきてくすぐったい。手から逃れようと身を捩るが、がっちり掴まってるので逃げるに逃げれない。その間にも赤司くんの手は腰やら横っ腹などなぞる様に滑らしていく。だああくすぐったい!!
『赤司く、ん、ちょ、やめ…っふ、』
「もう少し慰めてはくれないのか?」
『これは、なんかちが…ひゃはは!!』
もう途中からくすぐる動きになり思わず声が出た。うえ、赤司くんの楽しそうな目が視界に入った。
数分、彼のくすぐり攻撃の餌食になりやっと収まった頃には生理的な涙で前が見えない状態となっていた。敢てそのままにぼうっと赤司くんを見下げるとぼやけた視界でも分かるほど、彼の目がとても楽しそうな目をしていた。さっきとは違う意味で。
されっぱなしは癪だったので、両手を赤司くんの肩に置いて見下げたまま、
『いー眺めね』
と言ってぺろりと舌なめずりをしてやった。さあ驚け!
しかし彼はふっと笑い頭が高いぞ、と以前聞いた時とは全く違う雰囲気を出しながら私の額を軽くデコピンしただけだった。
ここで彼が立たなかったのはきっと向こうも同じ考えだったから。
もう彼の気持ちもさっきよりは落ち着いただろう。帰ろうと催促するとああ、と返事し支度をし始めた。私は特にすることもないので彼のジャージでも握りしめていよう。…ふふっ。
支度で来た彼は「行こうか」と手を差し出してきた。ジャージは持っててもいいのかな。と疑問に思いながらもその手を取って控室を後にした。
さてこの後はバスに乗ってホテルに行って一泊して明日の早朝帰る予定のはず――。
「なまえ、後で部屋に来てくれるか」
『もちろんそのつもり』
まだ慰めなきゃいけない様で、と軽く笑うと叱りついでに食われる様なキスをされ、この話はここで終わり。
しょうがないですね
(初の敗北だしたっぷり甘えさせてあげましょう)
(ていうか征十郎がっつきすぎ)
(誘うお前が悪い)
(人のせいにしないで!?)
***
修正 5/18