迷って巡る軌跡を辿れば

Step.24 そのココロは 19/28

『やあ黄瀬くん、久しぶり』

「…なまえっち…?!」


もうすぐ試合というのにふらふら歩いていたオレの前に昔付き合っていた彼女が現れた。彼女が着ている服は水色の、洛山のジャージを上に制服のスカートという格好をしていた。恐らく赤司っちと同じ高校に行ったんだろう。いやそれしか考えられない。
しかし、何故今更。何故今現れたのか。


「なんの用スか」

『冷たいわね、せっかく元カノと2年ぶりの再会だというのに』

「勝手に別れを告げて消えたのはそっちッスよ」


そうだ、今なら。あの時突然消えた理由を聞けるかもしれない。
本気で好きだった、初めての恋。理由も聞ける暇なく消えてしまった訳を。


『ふふ、ごめんなさいね。でも、悪いのはそっちだから』

「は…?」


どういうこと、とは聞けなかった。
何も言わせないという威圧感を放つ彼女。それは付き合ってた頃には一度も見たことのない鋭い目つきで赤司っちみたい…と無意識にここにはいない、元主将を思い重ねた。それでも彼が使う目とは少し違う、そんな目をしている。彼と同じ高校でいろいろと教わったらしい。


『そういえば次は灰崎くんとだね』

「そ…スね」


突然の話題転換に反応が少し遅れたが、なんとか答え彼女の反応を待つ。何なんだ突然。
…ここ2年で突飛な行動が多い気がする。いやそれは昔からか…?
少し悩む素振りを見せすぐにオレから見ても怪しいと思う笑みを浮べ、楽しみね、と小さく呟いた。恐らくこれは会話として取らなくていいだろう。聞こえない振りをしてオレ自身ずっと気になってたことを聞く。


「なんでまた突然出てきたんスか」

『あらいけない?』

「そうは言ってないッス。ただどうして今更…」

『会いたくなった、と言ったら?』

「え…」


あまりの予想外の答えに言葉を失い、そのまま会話は途切れた。
いやいやここで終わらせちゃダメだ。もっと聞きたいことがあるだろう…!


「なまえっち、」

『別れた理由?』


なんで分かったんスか!?というと顔に出てるよと指摘された。
くすくす笑う彼女を眺めながら、そういえば前もこんな会話をしたなーと記憶を辿る。


『そうねー…あえて言うなら…今の君かな』


今の、君?
無意識に首を傾げて繰り返すとそのままの意味だからね、と悲しそうに笑った。
そのまま?どういうこと?今?
元々ない頭で必死で答えを探すが見つかるはずもなく、彼女は小さく溜息を吐いた。


『灰崎くんに勝ったらもうちょっと分りやすく教えてあげるよ』


それまで頑張りなよと言うだけ言って踵を返す彼女に何も声が掛けられなかった。
どこか寂しそうで今の“オレ”じゃ声を掛けても止まってくれないことは分かってた、から。




その真意にいつ気付くのか
(知らず知らずのうちに傷つけてる)


(大好き、だから、)


***
修正 4/24
雰囲気好きでピックアップしたんですけど悪くなった気が…する。


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