一度帰りましょうか

「…………」

「………」

「……お二人とも黙らないでください…」

「ハンジさんもう一回説明お願いできます?」

「…俺も頼む」

「えー。いいよ」

しょうがなさそうで当たり前のように笑顔で答えてくれるハンジさんは、今は何故か可笑しな人に見えた。

エレンくんの実験で当然のように付いてきた私。兵長があれだから仕方ないのだ。それで少し目を離した隙にエレンくんは物陰に隠れてて、どこか恥ずかしそうだった。衣服でも剥ぎ取られた?と冗談で聞いてみたもののエレン君は何も答えてくれない。
兵長はずっと見ていたかと聞いてみれば見てたとのこと。何があったかと聞けばいまいち分からないと言われ、ハンジさんに聞いてみた。すると何とも意味不明な答えが返ってきたのだ。
そしてもう一度、今度こそ聞き入れる為、聞き間違えが無いようしっかりと耳を傾ける。

「だから、実験は成功してエレンにも猫耳と尻尾が生えたんだよ!」

どうやら聞き間違えではないようだ。実験は成功、エレンくんに猫耳と尻尾。ちらり。エレンくんを見る。胸ポケットにいる兵長とは違う色の猫耳と尻尾が、エレンくんの頭と腰辺りから見える。幻覚、ではないわけだ。まあ、なんといいますか…ええと。

「成功ってどういうことですか巨人化について研究してたんじゃないんですかハンジさん」

「落ち着けなまえ。まずは落ち着け」

とりあえず突っ込む部分をほぼノンブレスで言ったらいつの間にか兵長が右肩にいた。い つ の 間 に 。可愛いです兵長おっとなんでもない。
でハンジさん成功ってどういうこと何でしょう。そしてどうやって元に戻すんです?というか何のためにエレンくんまで…。

「まあそう怒らないでよなまえ」

怒ってません。

「これはリヴァイのための実験でもあるんだからさ」

「俺の?」

少しだけ真面目なハンジさんがそうだよ、と頷く。今回の実験は訳すとこうだ。
まずのところ何故兵長があのような姿になってしまったか…その原因が分からないままだった。ただ実験の前準備をしていたらしいが、それから繋がるものは何もない。
そこで今回はエレンくんを別の実験体としてどうしてそうなったのかを実験したそうな。ここまで聞いていればなんとなく察しはつきますね。
あの日の記憶をなんとなくで思い出してあっという間にエレンくんに猫耳と尻尾が付いたという。私あっという間という部分がちょっと気になります。

「つまり兵長の今の姿の原因が分かったんですか?」

「小さくなった原因はまだ分からないままけど、猫の方は分かったよ」

「それは本当か」

「徹夜して3日で治せるようにはするからもう少し我慢しててねリヴァイ」

あと3日もすれば猫耳兵長は消えてしまうのか。少し寂しいな。
…なんて少しでも表に出せば後が怖いので「よかったですね兵長!」と喜んでおく。いや本当はちょっと嬉しいよ。ただすこーし寂しいだけで!別に振り出し状態に戻るわけだし。…あれ、振り出し…。

「結局のところ原因は分からないままんですよね…」

「うん、そうだね」

「記憶を辿って行けばエレンくんも小さくなったはずですよね?」

「うーんそうなんだよね。どこかで間違えたかな」

「……あの、」

少し泣きそうな小さい声が聞こえ、振り向くとエレンくんが若干涙目で物陰から出てきていた。気のせいか、耳がふるふる震えている。

「オレを忘れないでください…」

ぶっちゃけどうして今ここでそれを言うのか分からないが、多分素朴感を感じたんだろう。それがまた可愛くて内心悶えてるなうです。
そんなことはない、全てエレンくんのおかげだよ!と笑いかけると少し表情が晴れた。
あ、兵長が治るんだからエレンくんも治っちゃうのか。それは惜しいや。部屋戻ったら一言言って触らせてもらおう。



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