もしもの話をしよう

「例えば俺が普通の中学生で何の取り柄もない、勉強も運動も普通、家事洗濯も人並み、もしくはそれ以下。これといった伸びしろも才能もない奴だとしたら、お前らどうする?」

放課後の、夕日の光をが教室に入り込んだこの部屋で、揃いも揃って集まるよく仲良くしてくれる友人たち。今日は部活が休みだからと珍しくすぐには帰らず、こうして教室に居座って静かな時を過ごした時のこと。
今のこの現状と、もしもの世界と評したただの俺の妄想を、こいつらに向けてぽつりと溢した。日中みたいに賑やかじゃない教室ではないから、俺の独り言くらいの音量でさえこの教室にはよく響く。

一番初めに反応してくれたのは、やはり黒子だった。

「話してみて楽しければいいですよ」

「そうだな。人柄にもよるんじゃないか」

「それにそんな奴ならゴロゴロいるだろう。何もお前だけじゃない」

「俺じゃねぇけど。例えばの話だよ」

緑間は辛辣だけど割と気が利くし何だかんだで優しい。ノリは少し悪いが、それもまたいいところだろう。俺らの中では突込み要因に近い。少なくとも、俺の中では。

赤司は見かけによらず楽しことが大好きだ。よく笑うしノリもいい。俺がふざけた時一番笑ってくれるのは赤司なんじゃないかと思う。

黒子は俺とふざける時に組むよく言う相棒みたいなもん。こいつらの中ではノリも一番。顔に似合わず、ってところか。黒子も面白いことは好きだよな。俺と一緒。

「でもみょうじっちにはなんとなく惹かれるところがあるッスよね!」

「ひかれる?何言ってんだお前」

「俺みょうじちんのこと好きだよ〜?」

「おう。ありがと紫原」

紫原はどっちかって言うと傍観者。あんま笑ってはくれないけど嫌いではないんだろう。現にここにいるし。一緒にいて楽しいって思ってくれるのかな。分かんねぇけど。

青峰はバカだけど、やるときは一緒にやってくれる。けど俺らとのノリが違う。ノリはいいけど、ノリの波長が違うっていうか。でも楽しい、青峰だし。

黄瀬もまたやるときはやってくれる。よく青峰と置いてけぼり食らってるけど、俺にすればそこも面白いから全然いいんだけど。こいつも笑ってくれるもんなぁ。

「というか本当にどうした。何かあったか」

「何かあったなら話してください。水臭いじゃないですか」

「話くらいなら聞いてやらんこともない」

「そッスよ!いつものみょうじっちらしくないッス!」

「なんだよお前悩みあんの?意外だな」

「みょうじちん疲れちゃったならお菓子食べるといーよ」

俺らしくないってなんだよ。とかいつもなら突っ込めるはずなのにそんな気力さえない。確かに自分でも何言っちゃてんだろとは思う。俺だって分かんねーし、自分がどうしちゃったとか、なんかいつもより気分が重いっていうか。
ともかく自分でも分かってないのにこいつらに言えないって。
俺は目を閉じて唸ることにした。これでも考えてんだって。あーいっそのことこの夕日のせいにしてしまおうか。夕日が俺をおかしくしたんだ、そうだきっとそうに違いない。

「夕日のせいだ」

「ちょっと待って何があったんスかほんとに」

「…なるほどな」

「えっ!?」

「そういうことですか」

「黒子っちも!?」

「…帰るか」

机の横に掛けてたバッグに手を掛けると他も何か言いながらも帰る支度を始めてた。肩に引っさげ、教室の出入り口を目指す。廊下にさえ夕日の明かりは少し漏れてて学校が学校に見えなかった。案外夕日のせいって間違ってないのかもしれない。

「ゲーセン寄ってく?」

「いいですね、行きましょう」

「そうだな…ラッキーアイテムもあるかもしれない。付きやってやるのだよ」

「ちょっといいんスか!?みょうじっちのこと、」

「みょうじが夕日のせいだって言ったらそうなんだろ。気にすんなや」

「なんか赤司っちみたい…」

「紫原、菓子落としてたぞ」

「あ、ありがと赤ちん〜」

そうして俺らはゲーセンへ向かった。明日ミニテストあるけど気にしない。








「ところでみょうじ」

「ん?赤司かー。なんだよ」

「本当に夕日のせいか?」

「…えー?今聞くー?」

「それとも俺が真実を言おうか」

「………赤司って実は預言者的なスキル持ってんの?」

「さあな。今なら無償で真実を言ってやってもいい」

「無償かー魅かれるわー。教えてもらっちゃおっかなー」

「ああ、いいぞ。それはな…」

「それは?」

「―――…、だろう」

「あー。なんか納得」

「僕にも教えてください!」

「黒子には駄目だ」

「赤司くんのケチ!」

「けちww」



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実は書くのはとても久しぶりだったり、ね。いつぶりだろうか(書いたのは4/10)
※前回更新が2013.6/22でした。約2年ぶり。


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