記憶に浸る
クスクス、クスクス
あれはいつの日だったか。
両親と兄とで一緒に不思議な絵の美術館に来て、それで…。
「だからね、ここにいてよ」
急に真っ暗になって、兄と一緒にお父さんとお母さんを探して、でもいなくて出ようとしたけど出れなくて…。辺りを彷徨っていたらあるはずもない階段が表れて、好奇心旺盛であった私たちはわくわくと降りていった。…それから、それから…。
「私ね、外に出たいの」
美術品の展示物が動いて私たちを追っかけてるうちに可愛い女の子に出会った。
兄は私たちと同じように迷子?だと思っていたようだけど、私は覚えてる。こんな子、美術館にいなかった。なら、誰?気付けてたら、それを言えてたら少しはこんな結末になっていただろうか。今と、変われただろうか。
気が付いたら兄と女の子は大きな絵のようなところの前にいて、何を言っても振り向いてくれない兄とそれを横で可笑しそうにクスクス笑う女の子。
最後に見たのは悲しそうな兄の顔。
「…ごめんね」
真っ白な光は消えて暗くなり、そこでぷつりと視界が暗くなった。
記憶に浸る
目を開けるともう慣れてしまった天井に子供のような文字がたくさん並んでいる。
“おハよう あそボうよ”
ゆっくり起き上がり、今はすでに用済みとなってしまったそれに、先ほど見た夢を思い出した。
ああやな夢。どうして今更。ゲルテナは私が嫌いなのか。なら呼ぶな。巻き込むな。
はぁっとため息を零してまた横に寝転んだ。
…そういえば、いつもに増して少しざわついている気がする。また誰かを引き込んだのだろうか。私には関係ないけど。でも暇潰しにはなるだろう。あとで覗きにでも行ってみるかな。
「………」
すぐに出られない。だからまた一眠りについた。