単独行動

※ギャリーしかいない。




『心壊』

『あまりに 精神が疲弊すると
 そのうち 幻覚が見え始め……』
『最後は 壊れてしまうだろう』
『そして 厄介なことに………』
『自身が “壊れて”いるのを
 自覚する事は できない』

「…そういうことね」

つまり、心壊のせいでイヴたちには別の物が見えたということになる。だってこんな不気味なもの、可愛いわけないじゃない。……となると何が見えたのかしら。
他に何かないかと右側の本棚を調べると動かせるようでここから出られそう。さっきは全く気付かなかったけど。なんでかしら?
出た先々にも何かとあった。けど、今は青い人形が付いてきている。曲がり角が見えた時点で最後の言葉は、

“えいえんに ここにいろ”

それすら無視して扉の前に来たのに。

「……一体どこまでついてくんのよ。もういい加減にして!アンタの相手をしてるヒマなんでていのよ!!」

見えた扉の前に行かせないかのように座る人形についカッとなってしまう。
蹴ろうかとも迷ったがふとイヴが言っていたことを思い出した。

「何があっても絶対に壊しちゃダメだよ」

「…そうね、そうよね…」

アタシはどれだけイヴに迷惑をかけてるんだろ。そっと足を戻し、邪魔だからと扉の前から人形をどかした。

「こういうのには関わらないのが一番だわ」

退けたことだし次の部屋へとドアノブに手を掛けるが開かない。手を掛けたと同時に横でべしゃっと音がして小さく肩が跳ねた。今度は何と壁を見るとまた文字が…。

“ つ れ て い け ”

「絶対に嫌よ」

読み終えるとガチャっと音がしたので多分鍵が開いたのね、よかった。
入るとすぐ右手の方に扉が見えた。入ってみようと手を掛けるがドアノブが異常に冷たく、思わず手を離してしまう程。とても気味が悪い。戻って真っ直ぐ行くとまた青い人形がいる。

“ずっと あなたに ついてくね
 わたしの おうち すぐそこなの”

「来なくていいわ、ホント…」

すぐ横にあった扉に入ると7つの台座のようなものと奥に張り紙があった。

『七つの色彩……絵の具玉を 集めよ
 さすれば 部屋は色づき
 そなたの 架け橋となるだろう』

「絵の具玉……?そんなものどこにあるのかしら」

探しがてら隣の部屋に行こうにも鍵が掛かっていて開かなかった。鍵穴はない、なら謎解きかと思いきや、扉の上に芽のようなものがある。どういうこと?
ここは後回しにして後ろにもまだ通路があってそちらに行ってみることにした。
左手に茶色の扉が見え手を掛けてみるがやはり開いてない。扉の隣に『釣り針』の絵が飾ってある。

「…………?」

釣り針の割には何もない、海の水みたいな色しかない。
後ろにも道があって壁にそって歩くと二つの絵と向かいにある扉。ってこれ細い壁だったのね。壁には『心配』と『ジャグリング』の絵が飾ってある。
『ジャグリング』の前に行くと絵の中から声がする…。

『我 誕生 いつだ』

「誕生…?」

知らないわよそんなの。…でも確かパンフレットに書いていたような。パンフレットを取り出して中を見ると『6223年』と書いてある。

「6223年?」

『せ い か い だ』

横でゴトッと音がし、下を見ると青い玉。

「なにかしらこれ……柔らかいけど握ったら割れそう。もしかしてこれが絵の具玉?」

青い絵の具玉を手に入れると消えてしまった。
横にある『心配』という絵…は害はなさそうね。時々瞬きするみたいだけど…。
向かいにあった扉の前に行くと扉の下の隙間から何か出ている赤い…何か。何があるのかと恐る恐る開けると赤い煙が充満している部屋。
つんとした匂いに身体に激痛が走る。長居はできなさそう、けど少し奥に絵の具玉がある。

「取らない訳にはいかないわね」

一歩踏み出しただけでも痛みが回り、取って部屋を出る頃には花弁は4枚となっていた。
そういえば出る直前、扉から左側に何かあった。何かの役に立つかもしれないし取っておこう。でもその前に花瓶に薔薇を活けなくては。来た道を戻り、使っても減らない花瓶に薔薇を活けながら、そういえばあの部屋の奥にも花瓶はあったがどう見ても空っぽだったなと考えていた。何に使うのかしらね。というかあそこにある意味って何だろう。
回復もしたことだし、もう一度あの部屋に向かう。激痛はもう嫌だけど仕方ない。
部屋に入り傘を取る。赤い、傘。…イヴの色ね。
イヴたち、大丈夫かしら。
もう一度花瓶にお世話になりながらふと、先程見た時は鍵の掛かっていた扉が今は木になっている。ますますどういうこと?とりあえず入ってみることにした。



ねえ気付いてる?

入ると目の前に張り紙があり読んでみると『書物の持ち出し 禁止』と書かれていた。別に持ち出したりなんてしないわよ…。パッと見、右側は本棚が邪魔して行けないので、まず開いてる左側から読んでいこう。
手前から、奥へ。四つ並んでいる本棚の真ん中に『悟り』という絵があったのにはちょっと驚いたけど。
一番左の本棚の本を手に取る。

『恐怖』
『一人でいると 恐ろしい
 二人でいると 安心できる
 三人でいると ……』

この先は破れていて読めない…。

「……イヴたち大丈夫かしら。まぁ2人でいるからまだ良かったわ………」

真ん中の方は何もなく、最後に一番右の本を手に取った。
『色彩の極意』という本でその名の通り色彩の極意が書かれていた。

「ん?」

コトりと何かが落ちた。見ると絵の具玉緑。手に取るとやはり消えてしまった。
もうこっちは何もなさそうだ。次は道が塞がれている右側に行こう。三つある本棚は通さないと言うように道を塞いでいる。動かせそうなのに動かせない。仕方ないと本を漁っていく。すると“この世の定理”と書かれた本があった。

“存在を 交換することにより
 空想が現実に 成り得る”

「意味わかんないわ……」

存在を交換、ね…。

「私もこの美術館に来たから、と言っておきましょう」

「……?」

なんでなまえを思い出したのかしら。変ね…。
ここの奥が気になるけど後回しね。絵の具玉のことも気になるし確認も兼て出ようと扉へと向かう。
が、視線と寒気がして後ろを振り向いた。一瞬、何かいたような気がした。




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