少しずつ、少しずつ

私   っていうの。

絶対一緒に出ようね!

…ふふ…。

だからね?なまえが変わってよ?

それじゃあ、“さよなら”。一生『絵』の中にいなよ。




「置いて行かないでっ!!」

汗が首元を伝った嫌な感触で目が覚めた。ああ、気持ち悪い。どうやら夢だったらしい、今日は本当なんて日だ。嫌な夢ばかり見せて…私をどうしたいの。いつの間にか寝ていたらしいが、寝た覚えなんてこれっぽっちも…。

「…イヴたちは…」

今どこだ。
本棚の向こうに鏡がある。その鏡を覗けば今この美術館の状況が分かる。なんというか便利。イヴたちは今私の知らない女の子と一緒に『嫉妬深き花』の前いて…あら、花が咲いた、つまり、そういうことだよね?
石で出来た茎がイヴとギャリーを引き裂く。イヴは見知らぬ女の子と、ギャリーは一人になってしまった。

「……」

イヴたちは鍵を使って奥の部屋へと進む。多分あの女の子が壊せる道具があるかもしれない、と言って。

「………」

「待っててね、何か探してくる!」

「じゃあちょっと探してくるよ」

あの時と全く同じだ…。
ギャリーは一人、二人が帰って来るのを待っていた。しかし戻ってくるわけがない。何故か戻れなくなっているのだから。

ギャリーは私だ。大人なギャリーのことだからすぐに動くと思う。問題はこの先…。イヴたちも心配だけどギャリーの方が心配だ。だって私がそっちだったから。
ギャリーには同じ思い、それ以上の悲しいことは起こって欲しくない。だから。

「私が…」

助けなきゃ。
いつもより重い扉を強く押した。



繰り返させたくない悲劇


この開けた扉がどこに続いてるかなんてわからない。もしかしたらあの子たちが入ってきた道に続いているかもしれない。それでもいい、道があれば。久しぶりに床に足を付けたせいで走り方なんて忘れたけど、それでも走る。走って走って。美術品を壊しちゃいけないことくらい知ってる。だから丁重にお願いしてどいてもらう。間に合ってほしい。邪魔はしないで。



ド コ ニ イ ク ノ ?

私が行く先々に散らばる赤い文字に、構う暇なんてない。



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