その先を目指せ | ナノ


▽ 05


「シェイクもいいけど、俺はポテトかな」

「シェイクが一番です」

「や、それでいいじゃん。俺はポテトなだけで」

「分かってます」

「どーだか」


部活が終わった俺らは昨日の続きもあってマジバに来ていた。俺はポテトと適当な飲み物だけど、黒子はシェイクのみ。毎回思うがそれで腹減らねえの?いつものことだからもう突っ込む気もない。だから体力もないんだよ。


「おら、ポテト1本くらい食え。勝利祝い」

「たった1本ですか」

「ん?これ半分食えんの?」

「無理です」

「そら見ろ」


練習後でもほとんど食わねえのはいただけないな。何か食えそうなもんあったらな。無理矢理にでも食わすのに。逆にきつくて疲れて食わねえよりマシか。そう考えておこう。
そうだ便所いっとこ。


「ちょいトイレ」

「はい」



◇ ◇ ◇



なんでかな。便所に行ってる数分の間に俺の席が取られてる。知らない奴ならどうしようもないが知ってる奴だしな。ちくしょう。しょうがないから近くの開いてる椅子を借りよう。


「ただいまーってカガミくんじゃん。何、黒子と雑談?」

「別に。つかなんでお前までいんだよ」

「黒子と来てたよ。さっきまでトイレ行ってたし」


ふと黒子の手元を見るとバーガーが一つあった。黒子が自分で買いに行ったのかとも思ったがそれはない。カガミくんの前には黒子が持ってるものと同じものがある。カガミくんがあげたのだろうか。バーガーを見るとアイツを思い出すな。でもアイツとは違うものが好みらしい。


「じゃあこのポテトはお前のか」

「そう。少し食う?美味いよー」

「…お…」

「な?」


近くから椅子を拝借し、通行の邪魔にならない場所に置いて椅子に座った。ポテトをつまみながらその山の様なハンバーガーをチラリと見た。よくもまあここまで食えるな。黒子とは大違いだ。もっと食えたら身長も伸びただろうに。
まあ小さい方がある意味いいのか。これ昔も考えたことあるような気がするのは気のせいか。
外を見ると暗い。そろそろ帰るか。


「俺そろそろ帰るわ」

「そうですね」

「んじゃ俺も」


ポテトも持って外に出た。歩き食いですよ歩き食い。良い子はマネしないでね。落としちゃ勿体ないし。かく言う黒子は歩き飲みですけどね。
黒子はともかくカガミくんまで一緒に帰るとは思わなかった。



◇ ◇ ◇



「キセキの世代ってのはどんくらい強いんだ?俺が今やったらどうなる?」


右にカガミくん、左に俺。その間に黒子が入りながらの帰り道。思い出したような口繰りに少し違和感を持った。黒子は気にしてないようで、シェイクのストローから口を離して躊躇いもなく。


「瞬殺されます」

「もっと違う言い方ねえのか!?」


カガミくんは額に青筋を立てながら黒子に突っかかる。俺はそれを横目に見ながら違う言い方を探していた。が、瞬殺しか思い浮かばねえ。むしろ足元にも及ばない、いや地面にすら立ててない。…って言ったら青筋立てるだけじゃ済まなさそうなのでやめといた。
黒子はそれすら気にしてないようでそのまま言葉を続けた。


「ただでさえ天才の5人が今年、それぞれ違う強豪校に進学しました。まず間違いなく、その中のどこかが頂点に立ちます」


横で聞いていて思い出すのは懐かしきアイツ等の顔。元気にしてるだろうか、と考えたが元気じゃない方が逆にすごいので元気だろうなと結論付けた。そーいやアイツからメール来てたな………返信してねえ。殺られるかもしれん。帰ったら急いで返信画面開かねば…と一人違う思考に入っていた時に、カガミくんは不気味に笑い出した。それはもう楽しそうに。何コイツ頭大丈夫?


「いいねえ、火ィ付くぜそういうの」


コイツどうして楽しんでんだ。カガミくんからすれば圧倒的に強いのに。
…いや強いから燃えるのか。そんな感情すら懐かしく思うよ。


「…決めた。そいつら全員ブッ倒して、日本一になってやる!」


相変わらずバニラシェイクを飲みながら無表情でカガミくんを見る黒子は、何か考えている様子だった。まあ勘だけど。でも俺のこういう時の勘ってよく当たるんだよね。
目標を見つけ、いい顔してるカガミくんに黒子が一刀両断。カガミくんのいい顔も崩れる。


「潜在能力だけなら分かりません。でも今の完成度では彼らの足元にも及ばない」


さりげなく青になった信号を渡りながらひっそりを黒子を探る。探ったところで無駄だろうけど。まあなんとなく意図は分からない気もしなくはないよ。


「…一人では無理です」


カガミくんも信号を渡りきると黒子がカガミくんに向き直る。俺はその後ろで事の成り行きを見守る。と言うか書ける言葉すら見当たらない。カガミくんも黒子の次の言葉を待っている様子だった。


「ボクも決めました」


言葉を一旦区切った黒子は、何故かチラリと俺を見るとまたカガミくんに視線を戻し口を開いた。


「ボクは“影”だ。でも影は“光”が強いほど濃くなり“光”の白さを際立たせる。
君と言う光の“影”として、ボクも君を日本一にする」

「…!」


車のライトがカガミくんに当たり、まるでそれは光を表しているような。反して黒子は後ろからの光によって影が出来、光と影をそのまま表したような状態になっている。

――それでも、まだ弱い。


「ハッ、言うねェ。勝手にしろよ」

「頑張ります」


カガミくんの言葉を受けた黒子は、普段崩さない表情をわずかに崩すのであった。
一通り区切りを付けれたところで俺に視線を向けられた。


「…と言う事です」

「見てりゃ分かる。まあ頑張れ。サポートはしてやるよ」


黒子がカガミくんの影になると言うのなら、俺はそれを映し出す地面になろうか。地がなけりゃ影なんて出てくるわけがない。二人纏めてサポートしてやんよ。


「どうやらカガミくんとは長い付き合いになりそうだ」


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