その先を目指せ | ナノ


▽ 02


「よーし一年全員揃ったなー?」


放課後。体育館に集められた新入部員たち。
並べられた一年組。前の方に先輩と話す女子生徒を見て、茶髪の一年が隣にいた丸坊主頭の腕を突き話しかけた。


「なぁ、マネージャーって可愛くね?」

「2年だろ?」

「あれでもーちょい色気があれば…」


その時後ろから眼鏡の男子生徒が二人の後頭部を殴った。
突然殴られ二人揃って「いでっ」と声を漏らす。


「だアホ。違うよ」

「〜〜っ!…え?」


痛みに耐えてるとマネージャーらしき女子生徒が前に出た。
そして彼女は言った。


「男子バスケ部“監督”、相田リコです。よろしく!」


一年は驚きの空気に包まれた。
すぐさま茶髪の一年が「あっちは?」と聞き、彼女は「顧問の武田先生」と答えた。
周りからは「うそぉ…」などの声もちらほら。それもそうだ。まさか先輩が、女が監督などと思わないだろう。女監督にしてはたまにいるが。


「さー武田先生の紹介も済んだところでまずはお前たち…シャツを脱げ!」


それに一拍遅れてまた驚きの声が響く。
なんでと驚く中彼女、リコは何か考えがあるらしく得意げにニヒリと笑った。回りの先輩たちもその意図が分かってるようで何も言わない。

言われた通り全員上半身裸になり、横に一列に並ぶ。傍から見ればシュールなこの光景も監督命令となれば仕方ない。
一人一人何かを見ているかのように体を見ていくリコ。


「君、ちょっと瞬発力が弱いね。反復横跳び50回パー20秒くらいでしょ。バスケやるならもーちょいほしいな」

「は、はぁ…」

「君は体硬い。風呂上がりに柔軟ね」


リコは体を見ただけでそれぞれの悪いとこ、改善すべきとこを言って行く。
言われた一年たちは「マジ?」と目を見開いてまで驚いた。この監督には驚かされてばかりだ。
その様子を見た眼鏡の男子生徒、日向はリコについて話し始めた。


「アイツの父親はスポーツトレーナーなんだよ。データを取ってトレーニングメニューを作る。子供も頃から毎日その仕事場で、肉体とデータを見続けてるうちに付いた特技。体格を見ればアイツの目には身体能力が全て数値で見える。
…ま、監督たる所以はそんだけじゃないけどな」


そのように言われてるリコ本人はというと一番端にいた火神をじっと見ていた。
それもありえない、という顔で。


「…なんだよ」


あまりにも見られすぎて声をかけてみるも無視。いやどちらかと言えば聞こえていないのかもしれない。
リコの頭では高1男子の数値ではないと。しかも伸び白が見えない。初めて生で見る“天賦の才能”に思わず見入ってしまった。


「監督!何ボーっとしてんだよ!」


日向に指摘されハッとし手元のボードを見る。次は…と確認するが日向は火神でラストだと言う。


「あ、そう?…んで、黒子くんと白垣くんってこの中にいる?」

「ああ、あの帝光中の…」


後半は一回り大きな声を出して呼んでみた。
“帝光中”。それに反応したほか一年がざわつき始めた。
その声に紛れて名乗り出てくるかとも思ったが黒子らしき人は出てこなかったので今日は休みかな。そう結論付けてさっそく練習しようと手を上げ指示を出した時だった。

目の前に突然人が現れたのと体育館の入り口が開くのはほぼ同時だった。


「あの、すみません」

―バンッ

「黒子はボクです」

「すいませーん遅れました」


突然すぎて悲鳴を出すリコ。その場にいた全員が突然の登場に驚いている。
驚きながらも他二年の人が遅れてやってきたという一年を見て優しく微笑みながらこっちと招き、一年はすいませんと謝りながらそそくさと傍らにやってくる。
前に出てきた一年の黒子らしき人は、遅れてやってきた人物を横目に見ると非常に分かりづらいが小さく目を見開いた。


「うわ!?何!?いつからいたの!?」

「最初からいました」


“黒子”に反応した猫目な先輩こと小金井と日向が二人に寄ってきた。
黒子は自然に先輩2人と向き合う。


「じゃあつまりこいつが“キセキの世代”?まさかレギュラーじゃ…」

「それはねーだろ。ねえ黒子くん?」

「?試合には出てましたけど…」


その問いに変わらず無表情で答える黒子。


「だよなぁ…。…え?」

「えっ?ええ!?」

「「えええぇええええ!?」」

「…くく…っ」

「(…キセキの世代?なんなんだ、アイツは)」


二人は「出てませんけど」と言うと思っていたのに。どうやら違うらしい。反応に面白くて笑う遅れてやってきた一年。
リコはうるさそうに叫ぶ二人を横目に見ながら、小さく笑う一年を見た。


「(そういえば…彼が白垣くん?)」


あ、と思い出したように黒子くんに詰め寄った。


「ちょっ、シャツ脱いで!」

「え…あ、はい」

「シャツ…?」


言われて脱ぐ黒子。黒子の体をじっと見つめるリコ。次第に驚きの顔になる。
その様子をずっと見ている一年が一人。


「あの…?」


ハッとしたリコはいいわよと許した。
今のデータをバインダーに書き込み、もう一人の一年を呼んだ。


「えっと、白垣くん?」

「ああ、はい。遅れてすみません、先生に捕まっちゃって…」

「いいわよ。私は監督の相田リコ、よろしくね。みんなに挨拶しちゃって」

「はい」


言われくるりとリコ側から一年と二年が見えるくらいの向きに向き直る。


「マネージャー志望の一年白垣夏向です。今日はよろしくお願いします」


丁重にお辞儀をし、顔を上げる際にチラッと黒子を見た。
黒子もそれに気付きぺこりと小さくお辞儀をした。


「じゃあこれから練習メニューを言うわね。白垣くん、ボール持ってきてくれる?」

「わかりました。そこの倉庫ですよね」

「ええ。お願いね」


初日という事もあり部活を早めに切り上げ、全員体育館を後にした。


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